2017年11月10日(金)に開催された、「これから始めるAI(人工知能)の基礎」のセミナーレポートです。
AIやIoTなど、新しいテクノロジーが生活にどんどん入ってくるデジタル変革の時代。「AIって何ができるんだろう?」「AI はどう活用するんだろう?」という方向けに、Tooの梅田有希がプログラミング等の技術トレーニングではなく、AIの基礎知識をご紹介しました。ここではその内容をお伝えします。

「何がわからないのかすら、わからない」からの脱出

AI導入を進める上での課題が何かを把握

AI(人工知能)という言葉だけが先行し、実態はよくわからないという方は多いです。また「社内でAIを活用して業務改善して」と言われ、担当者がどうして良いかわからずに困っている企業も多いのではないでしょうか。
とある調査結果では、会社でのAI導入が進まない要因として「自社のIT環境」「予算不足」「AIに関するスキルがない」といったことが挙げられました。ですが、それらを上回って「わからない」との回答が多く、これらが示すのは「何がわからないのかすら、わからない」現状です。本セミナーでは、「AI導入を進める上での課題の把握」をゴールとしました。

AI(人工知能)とは自ら学ぶ(機械学習する)コンピューターのこと

技術進歩により、特化型AIが活用可能に

AIは大きく2つ、「汎用型AI」と「特化型AI」に分けられます。汎用型AIとは、人間と同等以上の知能を備えた何でもできるAIのことで現在では実現困難です。いま世の中を賑やかしているのは「特化型AI」。これは特定の領域を遂行することが可能なAIです。
AI研究の歴史は長く、1956年以前から研究がなされています。ではなぜ、近年になりAIが騒がれるようになったのでしょうか。
理由は3つあります。1つ目はデータ流入量の増加。2つ目はハードウェアの発達。技術進歩によりスマートフォンサイズの機器であっても、30年前のスーパーコンピューターを凌ぐほどの高性能、難しい演算処理が可能になりました。これらの要因により、機械が自動で学習する「ディープラーニング」の技術が使えるようになったことが理由の3つ目です。理論上可能と思われながらも、過去には演算が終わらずに実用化できなかったものです。

機械学習には、繰り返されるデータが重要

ディープラーニングとは機械学習の手法の1つです。よく例に挙がるチェスと囲碁の場合を見てみましょう。チェスの場合は指手の全パターンを人間が入力し、膨大なパターンの中から最適な手を選択します。これに対し、機械学習を用いた囲碁では、ルールを教えずに「試合に勝つ」という結果だけを指定し、何度も試行させることで勝利パターンを機械自らが学習しています。つまり、AIができることは「繰り返されるデータから学習すること」です。
また現在ある事例は、音声認識、画像認識、自然言語処理を用いた「識別・分類」と、数値予測マッチングによる「予測」の2つに大別できます。そのうち「識別・分類」の事例として翻訳アプリや自動着色アプリが紹介されました。

機械学習には、正解ラベルの有無によって「教師あり学習」と「教師なし学習」の大きく2種類があります。「教師あり学習」では多数のデータ(ex.バナナの写真)に正解ラベル(ex.「バナナ」というラベル)を組み合わせて学習させるのに対して、「教師なし学習」では正解ラベルを与えずに、多数のデータのみ(ex.様々な果物の写真)で学習させます。特徴の類似するもの(ex.黄色いもの、細長いもの)が関係性が近いものとして学習されるので、後から人間が意味付けをします。正解ラベルの有無にかかわらず繰り返される学習データが必要です。

学習は特徴抽出と重み付け、ディープラーニングではこれを繰り返す

続いて、ディープラーニングの仕組み(図参照)に関して簡単に解説しました。
学習とは特徴の抽出(要素)と、その特徴の重み付け(重要度)をすること。結果はその掛け合わせによって、確信度が特定の数値を超えたとき、YESとの結果を出力します。

以前は人間が、要素や重要度を手作業で入力調整していました。これを機械が自動で行い、また誤判定をしたときには機械が自ら要因を探してフィードバック調整をします。回数は学習させた目的や求める精度によって異なりますが、フィードバックは一度でなく、100回、1000回と繰り返すことが可能です。
これまで学習のフローが一層であってもある程度の成果が得られましたが、フローを複数重ねることで、さらに学習の精度を上げたのがディープラーニング(深層学習)です。

AIと人間、作業切り分けの事例を紹介

AIは何が得意なのか?

セミナーでは、定型的な作業をAIにさせることによって効率化した事例、AIをアシスタントとして使うことで人間がよりクリエイティブな作業に集中できる事例を紹介しました。

事例1)お買い物アプリ「Operator」

定型作業をAIで処理、人間はその先の部分を担当

「Operator」は海外の小売で使用されているサービス。お客様はチャットボットの質問に応じて製品情報を入力します。チャットボットとのやりとりを元に、お客様と専門知識をもった店員を繋げてくれるので、お客様は商品に詳しい店員さんと相談しながら買い物をすることが可能。商品購入が確定したら再びAIに引き継がれ、決済方法や商品の配送方法といった定型的なやりとりがAIによってなされます。

事例2)アドビ社のソフトウェアに使用されるAI「Adobe Sensei」

画像加工の手順を大幅に短縮、人間はクリエイティブに集中

画像編集ソフトウェアPhotoshopの「塗りつぶし...コンテンツに応じる」は、写真の中に不要なものがあった場合に、簡単に消すことができる機能です。画像の不要な部分を選択すると、画像中の類似している部分を解析し自動的に自然な感じで塗りつぶしてくれます。この機能が実装される前は、様々なツールやノウハウを駆使して複数の手順を行う必要がありました。この技術は、今後同社のストックフォトサービスAdobe Stockにも活用される予定です。例えば風景写真の手前にある芝生を海辺にしたいといった場合、1億点を超える画像から、自然にうまく合成できるような素材を探し出して提案してくれます。まだ実装はされていませんが、すでに技術的には可能なことが発表されています。

「繰り返される作業」「大量のデータから探し出す作業」といった、AIが得意とする作業はAIに任せ、人間はクリエイティブな作業に集中しませんかと提案されました。

業務に活かすAIをつくるには?

まず、AIに学習させるデータは何かを見い出す

まず何から取り組んだら良いかわからないという方も多いでしょう。株式会社Tooでは、AIを業務に活かすために2つのアプローチをしています。「素材からのアプローチ」と「課題からのアプローチ」です。

何が学習データとなり得るのかを見い出す

素材からのアプローチでは、業務のなかで何が学習データとなり得るのかを見い出すことからスタートします。データを見える化、データベース化することも必要となります。 例として弊社の得意分野である「色」に着目した例を紹介しました。「色の組み合わせ」を教師データとした、インテリアシミュレーションアプリ「Coloroom」を自社で開発しています。色のみならずデザインや形のデータを蓄積することで、ビジネスに活かすことができるのでないかと考えています。

最初から100%完璧のものを作るよりも、プロトタイプで試してみることが大切

課題からのアプローチについては、まず素早くプロトタイプをつくることが大切です。最初から完璧な精度のプログラムを作る必要はなく、AIを使う勘どころを掴んでいただくことが大切です。それをTooが手助けさせていただきます。
AIを現実の業務に活かすためにはオープンソースを含む様々なソフトウェアやハードウェアなどの要素を組み合わせ、そこに自社の強みとなるデータを活用することが大切です。「何が繰り返されるデータとして活用できるか、ご自分の業務のなかでぜひ考えてみてください」と締めくくられました。

Tooでは今後もAIに関する情報発信を始め、活用のご相談を承ります。「まずはどうしたらいい?」からでも結構です。お気軽にご相談ください。

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