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内視鏡手術を可視化と可触化で革新: 医療と教育のイノベーション(後編)

2017.02.28
 

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3D プリンター元年と呼ばれた 2012 年以降は、臓器モデルの実体化にも積極的に取り組んできた。生体臓器の外部・内部構造を抽出し、3D で再構築することで、内部構造までもが再現された臓器模型を作成可能となったのだ。「例えば、癌の大きさはどれくらいで、どこで切るかということのために、情報として形とか位置が欲しいんですよね。しかも自分の手と大きさを比べて感覚を掴みたいので、三次元である必要があるし、自分で動かしてみてインタラクションが得られることが重要です」。

そして、この一連の可触化でブレークスルーとなったのが「3D プリンターで、水を含んだ本物そっくりの臓器を作れるようになった」ことだ。自身も開発に携わった Bio-Texture Modeling® (生体質感造形®) は、生体臓器特有の形状だけでなく、その質感までも同じ感触で立体再現する特許技術。「3D プリンターでは主に硬いものが造形されています。水を含むものは理論上難しいと言われていたんですが、水を含むことのできる樹脂を使って臓器の再現ができた。そこに水 (や、ほかの素材) を何 % 含ませるかを計算して作ると、まるで生きているような臓器モデルができるようになりました」と、杉本氏。

「なぜ水があると生きているように感じるかというと、炭素を含んでいると有機物と言われるのと同じように、生物は水のあるところにしかいないので、流動体には生命を感じるんです。切ったら血が出る、伸ばしたら液体が滲み出るというのは、生きている感じにすごく近いですね」。患者はもちろんのこと、外科医以外は内科の医師すらも臓器に触れる機会は少ないが、この模型は人間の崇高さや命の尊さに触れる機会を提供することにもなるという。

可触化を実現し、内部構造までもが再現された臓器は、患者別の手術支援を実現し、手技習熟のトレーニングや教育にも有用だ。それを最初に証明したのは、競技スキーのレーサーだった氏が、事故による脊椎損傷で生死を彷徨ったときだったという。「担当した整形外科医は、術部と模型を左右それぞれの手で触ることで感覚を得て、安全で確実な手術をすることができました。それまではレントゲンや立体画像を見ながら手術をしていたわけですが、目を閉じて、その感覚を得ることに集中したのです」。

患者としての体験、そして医師としての臨床経験から、患者が医療に求めるものは安全性である、と氏は語る。やり直しのできない手術を執刀する機会の多い外科医にとっては、本物同様の臓器模型で術法の検討や手技のトレーニングを行えることが、安心して医療を行うことにつながるのだ。また、米国への留学経験から病院や国の違いによるダイバーシティを理解し、医療施設の規模や国を問わず、より多くの人に優れた医療を提供したいという想いに至る。さらに医工連携による開発を経験したことで、将来的には“医工学”部を実現したいと考えている。

「医療現場で、入手しやすく一般に普及しているテクノロジーを使うメリットは、若手医師や発展途上国の病院でも簡単に真似し、導入できることです」と語る杉本氏は、さまざまな教育活動にも力を入れてきた。「ものを作っても、人を作らないとダメです。人を作らないと、ものは作れない。しかも、人ではなくて人々を作らないと。新しい医者を作るのは、医学教育を作ることだと思います。そのためには、汎用性の高いプラットフォームやソフトウェアが必要です」。

「テクノロジーは一歩一歩積み上げられて進歩するけど、人間はテクノロジーによって進化を獲得する」と、杉本氏は続ける。「僕が取り入れているテクノロジーは、人間を進化させているものだと思います。それは一人がやってもだめで、皆ができることで底上げになるので、さらに簡単にして世の中に出したい。医者にはプロでありたいという人が多いけど、僕は一般の人が扱えるように垣根を下げたいんです」。

国内の医療現場では、研修医制度の変化や医療訴訟のリスク、激務などさまざまな理由により外科医の減少が続いてきた。だが外科分野で 3D プリンターや VR など最新テクノロジーの活用した教育やトレーニングが推し進められることで、新たな外科医の創出にも大きな影響を与えることが期待できる。

杉本真樹氏は 2016年 9 月 8 日にザ・プリンスパークタワー東京で開催される「Autodesk University Japan 2016」の特別講演「Life reverse engineering for augmented Human – 人間の能力を拡張するリバースエンジニアリング」に登壇されます。

Redshift 日本版エディターを務める、オートデスクのコンテントマーケティング マネージャー。
本記事は「創造の未来」をテーマとするオートデスクのサイト「Redshift ⽇本版」の記事を、許可を得て転載したものです。