.Tooトップへ
デジタルメディアシステム部 03-6757-3145 お問い合わせ

neta

Autodesk Creative Design Awards グランプリ受賞作品が見せてくれる未来

2017.04.03
 

「The Future of Making Things ~創造の未来~」がテーマとなった『Autodesk Creative Design Awards 2016』。未来の生活を便利にしてくれる工業デザイン/プロダクトが対象の〝ものづくり部門〟では、水野諒大氏の『SWELL』がグランプリを獲得した。受賞作品の制作過程について、水野氏に聞いた。

水野氏が応募プロダクトとして選んだのは〝スプーンやマドラーを使わなくても、その形状だけで撹拌できるコップ〟だった。このアイデアはコップでインスタントの飲料を作った時、スプーンを入れたままだと飲みにくいと感じたことで思いついたものだ。

水野氏は、飲料とコップを注意深く観察してみた。すると、スプーンは取り出してソーサーなどの上に置くとそれを汚してしまう、そもそもスプーンが無いオフィスもある、などいろいろと問題を起こしていることがわかった。そこで、スプーンがなくてもココアなどの粉末を溶かせるようにできないか、構想を練り始めた。

九州大学芸術工学部工業設計学科でプロダクトデザインを学んできた水野氏。卒業研究のテーマは、「3Dプリンターの特徴を生かしたプロダクトの研究」だった。コップは、金型を使った従来の製造方法には無い、3Dプリンターの強みを生かす方向でデザインを進めていった。
デザインに使ったソフトは『Autodesk Fusion 360』。大学の授業でも別のCADソフトを使っていたが2015年秋、Fusion 360エバンジェリストによる講習会へ参加したことがきっかけで、勉強を始めていた。

水野氏は、以前のソフトではスカルプトモードでのポリゴンモデリングができず、有機的な三次元曲面を作る際に苦労していた。スタッフをしているファブラボ太宰府で多くの人に薦められたこともあって、乗り換えを決めたという。

受賞作品SWELLは、コップの内側にある多数の隆起が特徴。これがスプーン代わりとなる。海の波が持っている、緩やかな曲線にヒントを得たデザインだ。

水野氏はまず構造モデルとして、幾つかの凹凸パターンを持つコップを3Dプリンターで作った。そのプロトタイプに水とココアを入れ、コップを回して混ざるかテストした。初めはちゃんと機能するものになるか確信が持てなかったので、実用化できるよう機能面に絞ってデザインを進めたのだ。

SWELLの側面内側の凹凸は、粉末がより溶けやすいよう隣り合うものの高さを変えている。実験を繰り返し最適な高さを導き出したため、〝ココアならわずか20秒で溶かしきる〟コップとなっている。撹拌時に遠心力で溢れないよう、上部には〝返し〟を配置。さらに、粉末が溶け残らないよう底部に流体の回転方向に対して垂直な放射状凸部を造形する工夫も加えられている。

プロトタイプ製作には、ファブラボ太宰府や大学の3Dプリンターを使用した。主に熱溶解積層法の3Dプリンターを使ったが、透明な感じを出すため光造形の3Dプリンターでもいくつか作っている。出力中、同僚やお客さんから「とってを付けたほうがいいかもしれない」「混ぜるときもっとこぼれにくく」といった議論が生まれ、大いに助けになったという。

3カ月後に完成したデザインは、Fusion 360のレンダリング機能で画像化された。
実用化の際、どのような材質にするかは決まっていない。水野氏の頭の中には、特徴的な内側の構造が外からも見えるよう透明な、耐熱ガラスのような素材で作るという構想もあるようだ。

現在、九州大学大学院芸術工学府でデザインストラテジーを専攻している水野氏。大学院のコースでは実際のデザインだけでなく、コンセプトの決定から企画、生産、知的財産化、流通、販売までの教育も行なわれている。
デザイナーは技術職に近い部分もあるが、そこから一歩進んでデザインを戦略的に活用できるようになりたい。そんな水野氏の夢が実現する日も遠くないのではないか、と感じるインタビューだった。