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【3ds Max 2018 & Pencil+4 ローンチイベント】レポート4

2017.08.23
 

漫画制作におけるデジタルツール活用の未来を見る

次に登壇したのは、『ソラニン』『おやすみプンプン』『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』といったヒット作を持つ漫画家の浅野いにお氏。「3ds Max ×漫画制作におけるCG活用の可能性」と題したセッションがスタートした。

単行本を発売するようになってから15年ほど経過しているが、デビュー当時からアナログの一般的な漫画の描き方と、デジタルで処理して仕上げるという方法をとっていたという浅野氏。ただその当時はまだデジタルツールを利用して漫画を描く作家はほとんどいない状態だったので、手探り状態だったという。

「10年くらい前までは基本的には背景の処理にデジタルツールを使用していました。デジタルカメラで撮影した画像をPhotoshop上で加工し、それにスタッフがアナログで線画を描き足してスキャンし、最終的にPhotoshop上で合成して完成原稿にするという流れです。僕が求めていたのは写実性だったので、写真のデータと手描きを組み合わせることで、どれだけフォトリアルに近づけられるかを試行錯誤しながらおこなっていきました」

浅野氏がデジタルツールを使うようになった理由は、漫画業界の構造的な問題だという。絵の描けるアシスタントは貴重であり、学生や若いアシスタントのスタッフにまっさらな状態から絵を描き起こしてもらうと使い物にならない状態で絵が上がってしまうことが多い。その中で特に目立つのはパースが取れないこと。そのため、パース自体は漫画家が決めてあげないと、いつまで経っても絵が完成しない。そこで写真を用意しておけばパースはなぞるだけで良くなる。そういう意味で、描けないスタッフの絵のクオリティを底上げするという意図があった。それに加えて、時間が削減できるので少人数で漫画制作ができるようになる。このような理由からデジタルツールを積極的に使い始めたという。

「ただこのような作業をおこなっていくうち、漫画原稿は結局、白黒の世界なので限界があり、線画を使って写実的なものを表現しないといけないということに限界を感じていました。またデジタルカメラの画素数が高くなってきて、これ以上、緻密にしても誌面の印刷に耐えられないということも生じてきました。そこで今連載している『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』では、あえて手描きの斜線を加えることでアナログっぽさを出すという手法に移行してきています。ただ背景に写真を使うという手法自体は変えていません」

なお、浅野氏の現在の制作環境としては、4名という少人数体制。しかも、現在事務所でCGを使えるのは浅野氏ともう一人だけ。しかも二人とも3DGGソフトを使うようになってまだ1年ぐらいしか経っていないという。

「3DCGを使うことによるメリットは、デジタルツールを使うようになった理由にすべて含まれています。その正確性であるとかディティールの共有であるとかには大変有用なのではないでしょうか。また、漫画を描く順番は最初にストーリーを考えて、その後になにが必要なのか 3DCGを使うなら何の素材が必要なのかという流れが一般的かと思いますが、それを逆にして3DCGならこういう機能がある たとえば、『パーティクルを使えばこういう表現ができる』とか、そういうことを知っていればストーリー上、こういう演出ができるという発想ができるようになると思います。3DCGの知識があるからこそできる漫画の表現や、逆算の発想で話を作ることができるようになってきたというのは僕にとっては大きなメリットに感じています。

ただ現状では3DCGを使うことで時間がかかってしまうような部分もたくさんあるため、そこは考えどころという。

「しかし、3DCGモデルを増やしていけばデータのストックになっていきます。それが後々になって使い回しが効いて楽になっていくのではということも考えました。漫画の絵は基本的に一回描き切り。同じものでも毎回描かなければならないので、そういう不毛なことを排除したい、そしてスタッフの仕事が資産となるようにしないと永遠に自転車操業になってしまうのでそこから逃れたい、ということも考えたわけです」

現状はこのような状態で手一杯ではあるが、今後の指針としてもっと3DCGの割合を高めていくだとか、手描きの線を加えなくても漫画として成立しているようなものができたらと将来ビジョンを語る浅野氏。

「漫画という狭いジャンルでも今後の可能性は色々とあって、たとえば、一度小規模な架空の街を3DCGで作成して、その中でこの街でどういうキャラクターがなにかをするという発想でストーリーを作成していくという順番もありなのかなと。それが実現化すれば、写真を撮るために外に出かける必要がなくなるほか、順次必要なものを追加していくという方法で拡張していけば3DCGで作成した街が舞台となって漫画のコンセプトやキャラクターも広がっていくと思います」

また、3DCGを使う上で漫画家自身がキャラクターのモデル自体を作成できるようになるのであれば、映像化したときに3Dモデルをそのまま流用してもらうといったこともできるようになるという。

「若い人が漫画を描きたいと考えたとき、3DCGという方法も選択肢の一つとして“あり”だと思ってもらえるようになる。僕がそういうケースの足がかりになれたらいいですね」