【後編】第一線で活躍するコンセプトアーティストが集った第4回『デジタルアーティスト Meetup!』

トリを務めたのは、イラストレーター/コンセプトアーティストの緒賀岳志氏。緒賀氏は『独自の世界観を創造するためにグラビティデイズのコンセプトアート作成でこころがけた3つの“逆説的”なこと』を語った。

緒賀氏は木版画家→ゲーム会社→フリーという経歴の持ち主。ゲームでは『SIREN』シリーズや『GRAVITY DAZE』シリーズ、『ファイナルファンタジー』のオンラインタイトルなどを手がけている。

緒賀氏によると、世界を創造するためのコンセプトアートには求められるパターンは2つある。

①どんな世界にするかはすでに大体決まっている、または、無難なものが作りたい。あまり冒険したくない。

②ユニークな世界が作りたい。

まずは①。コンセプトアーティストとしての仕事では、意外と保守的なクライアントが多いという。

「ユニークな世界を作りたいわけでもないし、尖ったものになりすぎるとよくないという話になる」そうで、既存のタイトルのコンセプトアートが資料として用意され、こんな感じで、と言われることもよくあるという。

一方②は、①のようなものはつまらないという立場。『GRAVITY DAZE』シリーズはそういうタイトルで、ユニークな世界を作るためには“逆説的”なアプローチは必要だ、というのが今回のテーマである。

あえてモデリングしにくい形を描く

『SIREN』シリーズでモデラーも務めた緒賀氏は、ゲームのモデラーが作りやすい形、プログラマーが喜ぶモデルが分かる。それは極端に言えば京都や銀座のような、90度や碁盤の目で構成されたマップだ。しかし、そこで逆にモデラーが嫌がるものをあえて描く。これはゲームにありがちな絵になることを避けるためだ。

「こんなもの作れないだろう」「でも作れたらすごい、面白い景色になる」と思いながら描き、絵を見せる。そこで「これは作れないよ」という反応が来たら成功というわけだ。

資料を探さずに描く

ウスダ氏の基本を抑えた手法とは、〝逆説的〟であるため反対となる。

あえて資料を探さず、「頭の中にある自分の知っているものと自分のリズムだけで書く」ということだ。そうすることによって、独特なものが出来上がる。

ここで緒賀氏が例に挙げたのは、噴水だ。噴水描いてくれと言われてGoogleで噴水を検索してしまうと、無数に噴水が出てくる。こういったお手本を見つけてしまった時点で、そう面白いものにはならないそうだ。

そこで資料を探さずに、カメの上にカエルを載せ、その上に小便小僧を載せてみた。緒賀氏はこういった発想を大事にして「知っているもので勝負」したという。

時には注文された絵と違う絵を描く

コンセプトアーティストはしばしばプランナーから注文されて絵を描く。緒賀氏は「方舟をデザインしてほしい」と言われたが、方舟どころか船すら描かなかった。

緒賀氏は「今のフリーランスの立場でこれができるかは分からない」と前置きしたうえで、この頃は会社員だったため好きなようにやるという、賭けに出たことを明かした。

続いて例示されたのは、「機械を描いてほしい」という注文で描いた花。『GRAVITY DAZE』の1でエリアの敵を全滅させたら道を示す、そういう機械を描いてほしいと言われたが「機械じゃないものを描きたい、機械はよくある」ということで花を描いてみた。

これには、もうひとつの理由も。プランナーになぜ機械でなければならないか聞きにいくと、確固とした意味付けはなかったという。

緒賀氏「道を示すものだったら植物でもいい、それを思いつけるのがコンセプトアーティスト」

『GRAVITY DAZE 2』で「続編での新しい花のデザインを」と言われたが、緒賀氏は「と言われたら、もう花は描きたくない」わけで、今度は手を描いた。ちなみに、この手は任天堂の社長を務めた故・岩田聡氏のポーズから発想したものだそうだ。

『GRAVITY DAZE 2』の宝箱も、注文は「普通の宝箱、よくある宝箱」だった。緒賀氏はまず、注文通りの宝箱を描いた。これで仕事は終わりだが、「普通じゃないほうがいいのでは」と思い3つ描き足したところ、結局リンゴ型の宝箱が採用されたという。

一番左が注文通りの宝箱、右3つが追加したものだ。

緒賀氏は「独自の世界観を考えてくれと言われるようなチャンスはあまりないと思う。しかしそういうチャンスがあるなら、普段の仕事とは逆に、いつものセオリーとは逆に、思い切ってやってみてもいいのでは」という、逆説的アプローチのススメでLightning Talksを締めくくった。

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