
株式会社ショクリュー様は、「水産物といえばショクリュー」という業界大手の食品専門商社です。エビの取扱高は全国トップクラスで、食品のプロフェッショナルとして卸売事業を展開し、海外産地と国内消費を結びつけています。「食」の安心・安全を守る品質管理室では、食品表示ミスの発生を防ぐために、食品表示ラベルの確認作業にパッケージデザイン向け文字検版支援ソフトウェア「フォルトファインダープロ」を導入されました。デジタル検版を導入された背景やその活用について、お話を伺いました。
本来の業務ではない校正作業で負荷が大きくなっていた
菅氏:
海外から食品を輸入販売するときは、輸入業者である我々が国内での表示責任者となります。弊社では、食品表示ラベルを品質管理室が最終確認しています。ただ品質管理室の本来の業務は、食品工場の監査に加え、「使用されている添加物は日本の基準に合っているか」などをチェックし、商品の規格書をもとに食品表示ラベルの原案をつくることです。校正専門のチームではないのですが、その役割も担っており校正作業での負荷が大きくなっていました。
現在、品質管理室で食品表示を確認できるメンバーは4名です。工場の監査や検査のために出張が多い職場です。品質保証のためにダブルチェックをしたいのに、社内に人がいなくて作業が進められないこともありました。海外輸入食品では、簡体字の「骨(3画目が左寄り)」と「骨」など、似ているけれど違う漢字が紛れ込むことがあります。紛らわしい漢字と認識していれば良いですが、人の目の確認では見落としがちで、一文字違うだけで何回も手戻りを繰り返し、すべての確認をやり直すという状況でした。

野﨑氏:
精度を上げるために読み合わせする案もありましたが、出張が多くメンバーのスケジュールを調整するのも大変です。ヒューマンエラーを減らす対策なども勉強しましたが、ヒューマンエラーは決してゼロにはなりません。さらに知識のある人間同士だと、見落としやすいポイントも被ります。事故になる一歩手前で気付いた事例もあり、何か良い検査システムはないかと探しているときに、デジタル校正の話を耳にしました。
人材育成を考えて、デジタル校正を導入
野﨑氏:
現在は、2015年に施行された食品表示法に対応した表示ラベルへの切り替えを進めています。フォルトファインダープロ導入前に、どれだけ校正作業があるのか件数を調べたところ、集中する時期では月に300件以上に上ることがわかりました。商品ごとに原案と比較して違いがないか、グラム数の規格違いなどが適切に反映されているかなど、似たようなデータを目視でチェックしていました。
若手メンバーにチェックさせようという話もありましたが、右と左が同じかどうかを確認する作業よりも、品質管理のスキル向上に時間を充ててほしいと、時間と人のコストを考えてデジタル校正のツールを導入するべきだと説得しました。
ワークフローの再構築で、抜本的な効率化を目指す
野﨑氏:
フォルトファインダープロを運用するにあたって、現在は使い方を確認しながら、ワークフローを構築するためのルールを整理している段階です。検証では外箱のデザインデータが大きすぎ、照合に時間がかかるという問題がありましたが、これはデータをいくつかに区分して照合することで解決できました。
また、いざ実際に比較しようとすると、比較元のデータは手書きで修正指示の書かれた校正紙しかありません。他にもPDFやJPEGなど、バラバラなファイル形式でやりとりしていることがわかりました。対応フォントがなくても表示されるように、海外とのやりとりでアウトライン化されるなど、それぞれに理由があります。まずは社内のワークフローを紐解いて、各部署でどんな形式でやりとりしているかを把握するところからのスタートでした。
菅氏:
基本的にはExcelデータで表示案を作成していますが、表示の変更指示は手書きも含めてケース毎にまちまちです。最終的に食品表示ラベルの内容は、専用のデータベースに保存されています。今後は製品を開発するチームと協力しながら、デジタル校正を組み込んだワークフローを構築しようとしています。データ管理のルールを各段階で決めることで、最初は手間が増えるように感じるかもしれませんが、データも探しやすくなり、結果的に効率化されるはずです。関連メンバーには、Tooからソフトウェアの使い方をレクチャーしてもらう予定です。
見落とし削減、現場でプレッシャー軽減に期待
野﨑氏:
品質管理の効果として、見落としが減ることを一番期待しています。弊社は元々、卸問屋からスタートした会社で、長く市場外で流通を担ってきました。その背景もあって、開発から市場投入までタイトなスケジュールで動いています。急ぎではない確認作業はなかったほどです。過去には手戻りがあったときに、指摘した修正箇所以外が変わってしまった事例もありました。間違いを指摘した箇所の付近は確認するのですが、そうではない箇所はやはり見逃しがちです。原案との差異を明確にし、ヒューマンエラーを無くしたいと考えています。
菅氏:
現場では様々な業務の合間に、効率よく確認することが求められています。チェックの手間も増え、ミスがあってはいけない校正のプレッシャーがありました。無理に量をこなせば、その分ミスする可能性も上がるので、一日あたりの作業量をセーブするなど工夫をしていますが、それでも年に何回か細かなミスが発生します。市場に出回る前に、手作業でシールを貼る修正を、現地工場のスタッフに依頼したこともありました。デジタル校正のツールによって日々のプレッシャーが軽減されることを期待しています。
今後の展望
菅氏:
BtoB商品を得意とする弊社ですが、PB製品の展開も拡大しています。その中で扱うパッケージ数も増え、デザインの種類も豊富になっています。一方で、冷凍エビひとつをとっても添加物の基準など、品質管理として気をつけるべきポイントは70項目以上あります。正しい食品表示を守りながら、知識のいらない部分はツールで負担を軽減して、本来の業務に注力していきたいです。
野﨑氏:
従来のやり方で成り立っているので、新しいソフトウェアの運用までには、多少時間がかかると思います。メンバーから「見落としを保証してくれるのでしょうか?」という質問があったように、自分の目で確認しなくてはいけない感覚も依然として強いです。私としては「道具として使う感覚を持ってください。」という話をしています。便利さを実感してもらえれば、自然と使うようになり、これがないと仕事にならなくなると思います。

※記載の内容は2019年1月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。