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「3D&バーチャル リアリティ展」基調講演レポート『日産の新しいデザインの方向性と、現場での3D・VR技術の活用事例』

2018.07.03
 

去る2018年6月20日~22日、「東京ビッグサイト」にて、世界最大級となる“ものづくり”のための総合イベント『日本ものづくりワールド』(http://www.japan-mfg.jp/)内で「3D&バーチャル リアリティ展」という専門展が開催された。このイベントは最先端の3D技術や超高精細の映像技術が一堂に出展し、その場で体験ができる専門技術展となっており、製造業、アミューズメント業をはじめ、放送局や映像製作会社、コンテンツ制作会社、通信事業者、官公庁、大学・研究機関など幅広い分野の人たちが出展企業と商談を行う場となっていた。本稿では、この「3D&バーチャル リアリティ展」内のセミナー会場にておこなわれた、アルフォンソ E アルバイサ氏ほか2名による基調講演を紹介したい。

 

カーデザインはVRの活用へ。そして、その先へ

トップバッターとして登壇したのは、日産自動車株式会社の専務執行役員グローバルデザイン担当であるアルフォンソ E アルバイサ氏。「日産の新しいデザインの方向性と、現場での3D・VR技術の活用事例」と題して、日産独自のDNAを継承・深化させながら新しいデザイン価値を創造する手法や、開発現場でのデジタルやVR技術の活用について語った。

 

アルフォンソ E アルバイサ氏

1930年頃から1980年頃まで、カーデザインの世界におけるプロセスには大きな変化はなかった。しかし1980年代から変化は見え始める。初期のAdobe Photoshopを使用してデザインをおこなうようになったのがその先駆けだという。

「撮影した車体写真をAdobe Photoshopに取り込んでボディの色を変えてみることを試みる程度でしたが、それは非常に大きな改革だったと思います」

 

その頃からみて、現在のカーデザインの世界はさらに大きくデジタル化してきている。今でもAdobe Photoshopを使ってはいるが、その使用方法としてはただ単にボディの色を変えるだけでなく、Adobe Illustratorも同時に使い色々な素材を作成することでリアルのクレイモデルを作成しなくともよくなっている。

「私がカリフォルニアにある北米日産のデザインスタジオに入社した1988年には、フルスピードで働いても1年間で2つのエクステリア、1つのインテリアのデザインしかできませんでした。しかし2012年には、37のエクステリア、27のインテリアを1年間で成し遂げられるようになったのです。テクノロジーの進化によって私たちの仕事は大きく変革したわけです」

 

レーザースキャニングもカーデザインに大きな変革をもたらしている。そして、カーデザイナーがアニメーションや動画を制作することで、エンジニアや製品開発、マーケティングの各チームとのコミュニケーションが円滑に取れるようになっている。そして最近ではVRをカーデザインの世界に取り入れているという。

「エグゼクティブに対するニューモデルのプレゼンテーション動画として、リアルな環境の中にデジタルで制作した車が実際に走っているものを作成しました。デジタルデータの車を実際の映像と合成することによって、非常にリアルなイメージを抱くことが可能になります」

 

VRの次のステップとして、デジタル環境内に触覚が加わるという。グローブをはめることにより、デジタルデータに対して実際のボタンを触ったりハンドルを握ったりといった感覚を得られるわけだ。

「グローブからのフィードバックデータによって、『ハンドルの厚みはうまく手にフィットするかどうか』『シフトに手が届きやすいかどうか』といったことをデジタルデータをもとにして体感ができるようになります。足についても、ドアのコンソールの感触がわかるなど、車のすべての環境をシミュレーションし体で感じられることがデジタルで再現できるようになっています」

 

そして、これから先のブレイクスルーとしてAIの活用を考えているという。

「まだ科学の領域を出ておらず大学との産学協同ベースの段階ですが、AIの活用方法として、『スーパーコンピューターにこれまでのホイールなどの履歴データなどといった情報をAIが受け取ることにより、そこから何がユーザーに求められているかをAIが考え解を出してくれる』といったことが考えられます」

 

最後にアルバイサ氏は、未来のデザイナーの仕事の一部としては「キュレーターとしての能力が求められてくると思う」と語る。

「AIに対して、エンジニアリングなど、さまざまなデータをインプットすることにより、AIからはデザイン戦略などの回答が得られると思います。そこでデザイナーがキュレーターとして、人間でないと予測できない要素を加味してインプットしていくわけです。そういった情報をAIにプラスすることで、より面白味のあるデザインを生み出してくれることでしょう」

 

舘暲氏

 

次に登壇したのは、東京大学 名誉教授である舘暲(たち・すすむ)氏。「これからのVRとテレイグジスタンス ~身体のネットワークと実世界アバターが拓く未来~」と題された講演では、触覚をリアルに伝える身体性メディアの研究開発が盛んになってきているなかで、ネットワークを介してサイバー空間に自在にダイブできるようVRが大きく進展。実世界でのアバターの実現を目指す取り組みがスタートしており、それが「これからの産業と社会にどう実現に向けたていくのか」といった内容が語られた。

 

廣瀬通孝氏

 

そして最後は、東京大学大学院 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 教授である廣瀬通孝氏が登壇。「VR技術の新展開」と題した講演では、海外を中心にVR技術に対する投資が活発化しているのと同時に、最近のVR研究開発は、モノ中心のパイプライン型でなく、プラットフォーム型となっていると説明。2018年2月に東京大学で発足したVR教育研究センターの活動を例に、新しい研究開発の手法を紹介すると共にVR技術の実社会での活用を語り、約2時間にわたる基調講演が閉幕した。