氷川竜介のアニメCG列伝 第一回

株式会社サンライズ 『機動戦士ガンダム UC』 (4/4)

- 正確な立体感と空間把握がメカ表現の先端を切り拓く -
 

締めくくりのepisode 7と今後の展望

――次回作以降、ぜひチャレンジしたいと思っていることは?

藤江 制作中のepisode 7に関しては、みなさんの期待以上のものを出していきたいと思っています。今回は締めくくりの話ですから、呎も長く全体のカット数が増え、当然CGカットも増えています。いつもとまったく同じというわけではないですが、重要なシーンにはCGも大きく絡んでいきます。そこをうまく表現しきって、完結に持っていきたいと思っています。

 僕自身はせっかく5年ほど長く関わっていろいろ勉強もさせてもらいましたので、このノウハウをぜひ次の作品にも活かしたいなと。その一方で、『ガンダムUC』はあらゆる条件がうまくハマって恵まれた作品だとも思いますので、このつくり方を一回バッサリ切るくらいで考えないと、引きずったらボロボロに失敗するとも思っています。

――4、5年たずさわったなかで、何か新しい可能性を感じたことはありますか?

藤江 参加前はモデリング中心の仕事でしたから、どうしても形を優先してつくっていたと思います。今回はトゥーン調の作品に絡んだことにより、形や立体の表現で今後も使えるテイストの可能性をひとつ見せられたかなと思っています。これまでの経験がうまく組み合わさったことで『ガンダムUC』にも成果が出せたと思いますし、CGのテイストがうま味として作品に乗った結果、「これはいいね」と受け止められるなら、それが一番嬉しいことですね。

――他のフィルムとも違うテイストは、確かに感じます。いつもどこかに情報量がたっぷり入っている感じに、CGは大きく貢献していると思います。

藤江 前にお世話になった方から、「お前のテイストは金属的なギラギラする方向ではなく、どちらかと言えば柔らかい方向だ」と言われたことがありました。なのでメカを描いても少しクラシック、落ち着いた方に行きやすかったかもしれません。それが今回の作品の方向性にマッチして、自分でも気づかないうちに個性として出たとすれば、すごくいいことだなと。『ガンダムブランド』ですから、どうしても何倍かバイアスがかかって良く見えてしまうということも、きっとあるはずです。でも観返してもらったときに、「こういう考え方のCGが関わったから、こんな風に見えるんだね」と思っていただければ、自分としてはこんなにありがたいことはないです。

【2013年秋 サンライズ第1スタジオにて】

藤江智洋氏PROFILE
株式会社サンライズ所属のCGディレクター。サンライズ・谷原スタジオ所属時に、『機動戦士ガンダムSEED』、『GUNDAM EVOLVE』、『SDガンダムフォース』、『ケロロ軍曹』などの作品に参加、CGのモデリングやディレクションを担当している。富士急ハイランドのアトラクション『ガンダムクライシス』用の映像制作などにも参加。