萩原メリヤス株式会社様は、2025年に創業70周年を迎える老舗のニット生地メーカーです。丸編み機を自社開発しているのが特徴で、この機械のパーツを設計するために3DCADソフトのAutodesk Fusionを導入され、Fusionの技術を習得する2日間の基礎・応用講習を受講されました。CTOの萩原千晴様に、導入の目的や効果、今後の展望について話を伺いました。
独自の編み機を開発していることが強み
萩原メリヤスは、ニット生地を製造する会社です。元々は吊り編み機という昔ながらの機械を使って事業を展開していましたが、時代の流れで量産が中国に移っていったこともあり、事業形態を変えていきました。現在は、業界で主流の高速編み機へと転換し、培ってきたノウハウをもとにオリジナルの編み機を開発しています。
お客様の多様なニーズに応えるために、独自の編み機を開発し続けていることが私たちの強みとなっています。普通の編み機だと均一なものしか編めないのですが、当社の編み機では生地の厚み、柔らかさや風合いを幅広く扱えます。その代わりに独特の癖があるので調整が難しく、トラブルなく製造できるよう日々編み機に向き合っています。
オリジナルの編み機を存続させるため3DCADの導入を検討
弊社オリジナルの丸編み機は、ある機械屋さんに頼んで作ってもらっていました。しかし、その機械屋さんにも後継者がいないんです。現在、丸編み機を作っている日本のメーカーは大手の1社しかなく、将来的にはそこに頼むしか選択肢がなくなるかもしれません。しかし、他社と同じ機械を使うことになると、弊社の独自性が失われてしまいます。
そこで、まずは細かいパーツだけでも自分たちで作れないかと考えました。今までは近くの工場に頼んでいましたが、そういった小さな工場もどんどん減っています。残った工場に仕事が集中するため、納期が長くなってしまい迅速な対応は期待できません。ニットの丸編み機に精通している人でないと良いものは作れないので、今後頼めるところがなくなってしまう不安が大きくあります。
こういった状況を考えると、将来的にはいろいろなものを自分たちで作れるようになっておく必要があると感じました。そこで、3DCADの導入を検討し始めたのです。
Fusion導入の決め手は初期投資が抑えられることとMac対応
Fusionを選んだ理由の一つは、サブスクリプション形式で導入できることです。初めは何ができるかわからない状態だったので、高額な初期投資は避けたいと考えました。また、普段使っているMacで動かせることも大きなポイントでした。
さらに、作った3Dデータを機械加工の工程に引き継ぐことや、将来的には3Dプリンターでの出力も視野に入れているので、そういったことに対応できる点にもFusionの可能性を感じました。
実際にFusionの使い方を教えてもらい、いろいろな機能が搭載されていて、これさえあればある程度なんでもできることを実感しました。弊社のような中小企業にとって、すごく便利で経済的なツールだと感じています。
頭の中のイメージを3Dで伝えることにも期待
自分が使えるようになるのかどうかわからない不安もありましたが、実際に丸編み機のパーツを2日間のトレーニングで作成し、直感的に使えることがわかり非常に良い手応えを得ています。
丸編み機のパーツ作成以外にも、いろいろな用途で利用できると考えてましたが、「こういう機能もあります」「応用してこういうこともできます」と丁寧に教えてもらい、その考えがより確信に変わってきました。たとえば、ニット生地を用いたアクセサリーや雑貨など、ファッション関連の小物製作にも応用できるのではないかとアイデアが湧いています。
丸編みは筒状に編まれていくので平面ではなく3Dです。そのため、もともとわたしの頭の中では3D的な考え方をしていたといえます。そんな頭の中のイメージは人に伝えることが難しかったのですが、Fusionによって具体的な形として示せる可能性が出てきました。
例えば、編み機に関する新しいアイデアがあっても、それを鉄工所やメーカーに図面に起こしてもらうためにイメージを伝えるのは難しいですし、やりとりに時間がかかりコストも膨大になってしまいます。しかし、Fusionを使って3Dで伝えることができれば時間もコストも削減できるはずです。
Tooが一番ユーザーファーストな印象を持った
導入前の段階でいくつかのAutodeskの代理店に話を聞いてみたのですが、Tooが一番ユーザーファーストな印象を持ちました。Tooさんは余計な営業トークもなく、本当に必要なものだけを提案してくれたのです。
また、導入後のトレーニングでは、説明がとても丁寧でわかりやすく、技術力の高さを感じました。教え方が上手で質問に対する答えも的確で、よくわかっている人でないと、あそこまで明確に説明することはできないと感心しました。
今後Tooに期待することとしては、3DCADで設計したものを実際に製作できる企業の紹介があれば嬉しいです。幅広いネットワークを持っていると思うので、そういった橋渡し的な役割も期待しています。
当社は新しいことに対して、試行錯誤を繰り返してきました。中小企業、製造業にとって3Dツールは「新しいことを始めるためにちょうどいい」ものだと考えています。まずは触ってみてどんなことができるか知ることから始めていけば、既存のお客様にプラスアルファで提案できることが見つけられると思います。
※記載の内容は2024年9月現在のものです。内容は予告無く変更になる場合がございます。