ASIAGRAPH Reallusion Award 2018
University/3D部門優勝者インタビュー

AWARDの様子

(写真左から)小嶋将孝さん、イ・コマン・インドラ・ジュリアワンさん、道明浩平さん

『ASIAGRAPH Reallusion Award 2018』では、日本のチームが3D部門でBest Film賞(グランプリ)を獲得しました!受賞したのは名古屋工学院専門学校ゲーム総合学科3年の3名。参加2回目となる小嶋さんがリーダーとなってチームを率い、初参加の道明さん、イ・コマンさんとともに見事CGアニメーションの世界一に輝きました。彼らには優勝賞金として10,000USドル(約110万円)が贈られました。お三方と担当の世古先生にお話を伺いました。

作品について

言語に頼らず、わかりやすさにこだわる

小嶋さん:予選会場は日本でしたが、ASIAGRAPHなので、日本でしか伝わらない表現にならないよう気をつけました。本戦作品にも字幕やセリフは入れていません。審査員が英語圏の方とも限りませんし、なるべく言語を入れず、できるだけ受け入れやすいものにしようと考えました。

イ・コマンさん:受け入れやすいものとして、作品はコメディでつくろうと考えました。怖い作品と面白い作品だったら、面白い方がよく見られるからです。

イ・コマン・インドラ・ジュリアワンさん

道明さん:テーマとして3枚の絵画が発表されたとき、あえて絵の由来などは調べませんでした。調べると映像が難しくなってしまうかと、絵画を見た印象から想像してわかりやすいものをつくりました。発表されてからコンセプトを考えたので、忠実にテーマに沿った作品になったと思います。

他チームとの差別化を意識

小嶋さん:道明くんの案で、絵画のような表現を取り入れました。Auto animationというアプリを使っています。他チームは素のままのiClone映像だったので作品の差別化を狙いました。イ・コマンくんのキャラクターもかなり特徴的だったと思います。

イ・コマンさん:日頃から面白いと思うキャラクターは3DCGツールでつくってみます。例えば「おじいさん」のキャラクターだったらお腹がでかかったり足が短かったり。パーフェクトなキャラクターはあまり面白くないなと、特徴ある姿を頭の中に浮かべます。コンテスト前のセミナーで、素材のままではなく、アクセサリーや服などの編集によって加点される、という話があったのでそこは意識しました。

制作フローについて

プロットに時間をかけ、動画コンテを制作

小嶋さん:制作はそれぞれの得意分野で分担しました。イ・コマンくんがキャラクター制作、普段から編集や音響をやっている道明くんがカメラの動きや背景(ステージ)制作、私が複雑なアニメーション担当です。
昨年は途中で脚本を書き直したので、予選ではまずプロットをしっかり固めようと、PCに向かわずに1時間ほど話し合いました。プロットを決め、その後に実際に動きながら撮影して、「キャラをこう動かそう」という動画コンテを制作しました。

道明さん:本来であれば制作の段階で、絵コンテをつくってから動画コンテをつくるのですが、絵コンテを書くのに時間がかかってしまうのでコンテストでは省きました。もっと制作に携わる人数が増えたら絵コンテが必要でしょうけど、少人数なので動画コンテと言葉のやりとりで十分だろうと。

イ・コマンさん:動画コンテがあれば、動きの尺や動作がわかりやすくなります。例えば同じ「歩く」という指示でも、どういう風な歩き方なのか、制作もしやすくなります。

小嶋さん:予選のやり方がチームに合ったので、本戦でも最初にしっかり3人でストーリーを考えました。予選よりはストーリーに難航しましたが、大まかに決まったら先にイ・コマンくんにキャラクターの制作をしてもらい、その間に2人で動画コンテをつくろうと屋外で撮影しました。他の学生たちに不思議そうに見られながら(笑)

イ・コマンさん:雨が降っている中で、2〜3時間ずっと外で撮影してたよね(笑)

付箋でアナログに進捗管理

道明浩平さん

道明さん:コンテストでは、カットごとの作業をすべて付箋で管理しました。これも結構大きかったです。

小嶋さん:シーンごとのカットをすべて付箋に書き出して、作業する人のPCに貼り、担当範囲が終わったらハンコを押す、という流れです。カット割りは事前に用意できるものではないので、即座に用意できるものだったら付箋だ!と道明くんが考えつきました。

道明さん:付箋だと誰が何を担当しているかが一目でわかります。普段は進行管理にExcelで表を作ったりするのですが、その時間がもったいなくて。あとおそらく最初の24時間ぐらいはExcelでも管理できると思いますが、それ以降になると頭が真っ白になっているので難しいだろうと(笑)

コンテストについて

『ASIAGRAPH Reallusion Award 2018』に参加した理由

イ・コマンさん:最初に48時間での制作と聞いたときには『えっ本当ですか!?』と驚き、でも面白そうだと思いました。元々CGムービーやゲームが好きなので、やる気になりました。

道明さん:参加の動機は、元々3DCGを制作していたことと、やはり賞金です(笑)。ただ普段の授業では、3分ほどの3DCGムービーで制作期間が3ヶ月ほど。48時間制作はまったくの未知でした。iCloneのソフトウェアも触った経験がなかったので、手探りでやるしかないという感じでした。

小嶋将孝さん

小嶋さん:私は2回目の出場で、昨年は本戦には進めませんでしたが48時間制作を経験しました。参加前は不安でしたが意外とやってみると楽しくて。3人で構想を決めてPCに向かって……というのが合宿みたいで面白いと思っていたので、2人の参加を知って同じチームでの出場を決めました。

海外コンテストへの参加は初めて

イ・コマン:予選突破の知らせを聞いたときは、チームでつくった動画が受賞したこと、あと台湾に行けるということが嬉しかったです。私はインドネシア出身なのですが、台湾本戦ではインドネシアのチームとも仲良くなりました。

道明さん:現場に行くまでは制作環境の違いに多少の不安はありました。例えば、予選は使い慣れた学校のデスクトップPCでしたが、本戦では用意されたノートPCでどれだけ負荷をかけられるか、など。実際には問題なく制作に打ち込めました。iCloneの操作自体もシンプルで、他の3DCGツールと共通する部分もあって結構簡単に操作できるようになりました。

小嶋さん:個人的には食事が合わず……文化の違いは大きいですね(笑)同時開催のCGセミナーでは、iCloneが映画制作でも使われている事例などを知ることができて「そういう使われ方もあるんだ」と勉強になりました。

イ・コマンさん:最終の選考結果は、家に帰る途中の電車で知りました。友達になったインドネシアチームの子から「グランプリおめでとう!」と連絡が来て、「えっ本当!?」って。その後に世古先生から連絡がきて本当だと確認できました。

小嶋さん:3人で帰りの電車の中で握手したのを覚えています(笑)楽しい大会なので、ぜひ来年も参加したいです。

世古哲也 先生からのコメント

世古哲也 先生

大会参加は学生たちにとって、いい経験になります。校内の成績で満足してしまうとあまり外に出たがりませんが、学外の方や企業の方と話し、知識を増やすことはすごく大切です。以前からCG映像以外でも例えばゲームハッカソンや、県内の業界交流会などへの参加を勧めていました。

Reallution Awardに臨むメンバーには、アドバイスを3つだけしました。学校の授業では扱っていないので「iCloneのソフトウェアを一通り使ってみよう」、短時間での制作にはiClone自体の豊富なライブラリを網羅しておく必要があるだろうと「配布ライブラリは目を通そう」、それと「過去の受賞作品で評価されている点を考えよう」です。
3年生のチームということもあり、それ以外は私からは特に何も言っていません。学生たち自身が自由に取り組みました。48時間という短い時間でどう制作を進めるか、流れを考えるのも彼らにとっては勉強になると考えました。

他の日本チームの先生には、大会ではライバルでもありましたが情報共有いただいて、大変お世話になりました。Tooの技術サポートもありがたかったです。会場で質問できる技術サポートはすごく助かりました。
本校が大会に携わったのは2回目ですが、去年初めて学生が参加して面白い大会だと実感しました。今年はかなり積極的に参加を呼びかけました。予想した以上に、学生たちにとって多くの収穫があったようです。また海外交流の場としても貴重な機会だと思います。