
皆さんこんにちは!
株式会社Tooのアドビスクール「Desi(デジ)」講師です。
企業でのファイル管理・共有において、クラウドストレージの導入は当たり前となりました。
弊社が取り扱っているクラウドストレージ「Box(ボックス)」も、WordやExcelなどのドキュメント管理だけでなく、クリエイティブ部門のデータ保管先として多くの企業様にご利用いただいています。
しかし、デザイン業務でクラウドストレージを利用する際によくご相談いただくのが、「他の人がファイルを開くと画像が表示されない」「リンク切れになってしまう」というトラブルです。
今回は、代表的なクリエイティブツールである「Illustrator(イラストレーター)」と、弊社が扱う「Box」を例に挙げ、クラウドストレージで起こるリンク問題の仕組みと、その解決策についてご案内します。
Illustratorで作成するデータには、画像などの外部データをファイル内に直接埋め込むのではなく、「どのファイルを参照するか」という情報(パス)だけを保存する「リンク」という仕組みがあります。
リンク配置はファイルサイズを軽くできるメリットがありますが、元ファイル(画像など)の保存場所を参照して表示されるため、参照先が見つからなくなると「リンク切れ」が発生します。
つまり、Illustratorデータ(.ai)そのものではなく、「配置している関連画像の保存場所も含めて管理する必要がある」ということです。
「全員で同じBoxのフォルダを共有しているのに、なぜ別の人が開くとリンク切れになるの?」と疑問に思うかもしれません。
最大の原因は、Illustratorがリンク情報として「ファイルの絶対パス(フルパス)」を記録していることと、クラウドストレージ特有のデスクトップ同期アプリの仕様にあります。
Boxのファイルをローカルドライブのように扱える「Box Drive」を利用している場合、PC上の実際の保存場所(パス)には、「PCのログインユーザー名」が含まれます。
例えば、Aさん(ユーザー名:tanaka)とBさん(ユーザー名:suzuki)が同じBox上のファイルを開く場合、PCから見たパスは以下のように異なります。
Macの例
Aさん:/Users/tanaka/Library/CloudStorage/Box-Box/制作データ/Links/logo.png
Bさん:/Users/suzuki/Library/CloudStorage/Box-Box/制作データ/Links/logo.png
Windowsの例
Aさん:C:\Users\tanaka\Box\制作データ\Links\logo.png
Bさん:C:\Users\suzuki\Box\制作データ\Links\logo.png
ユーザーから見ると同じBoxのフォルダを開いているように見えますが、OSやIllustratorから見ると「実際の保存場所が異なる」と認識されます。そのため、BさんがIllustratorファイルを開いた時に「Aさんのユーザー名が含まれたパス」を探しにいってしまい、見つけられずにリンク切れが発生してしまうのです。
では、クラウドストレージを使うと必ずリンク切れになってしまうのでしょうか?
実は、Illustratorには保存時のリンク先が見つからなかった場合に「別の場所を探しにいく(再探索する)」という優秀な仕組みが備わっています。
Illustratorは、元のパスで画像が見つからない場合、下記の順番でリンクファイルを探します。
そのため、Box Driveの仕様でユーザー名(フルパス)が変わってしまっても、Illustratorが自力で画像を再認識できるフォルダ構成になっていれば、正常に表示されます。
ただし、再探索の対象となる場所に同じファイル名の画像が複数存在すると、本来意図していたものとは異なるファイルがリンク先として認識される可能性があります。誤った画像へのリンクを防ぐためにも、同一案件内では同名ファイルを複数作らない、ファイル名を一意にするなどの運用をおすすめします。
Boxをはじめとするクラウドストレージ利用時は、PCの仕様上ユーザーごとにフルパスが変わることを完全に防ぐことはできません。 そのため、「Illustratorがリンクファイルを自動で発見しやすい状態を維持すること」が最も効果的な対策となります。
1. 関連画像を近い場所(同じ階層・Linksフォルダ)に保存する
前述の再探索機能が働きやすいよう、Illustratorデータとリンク画像はセットで管理するルールを徹底しましょう。
【推奨されるフォルダ構成例】
案件フォルダ
├─ チラシ_表面.ai
├─ チラシ_裏面.ai
└─ Links
├─ logo.png
└─ photo.jpg
逆に、リンク画像が「個人フォルダ」や「全く別の遠い階層の素材フォルダ」に保存されていると、再探索でも見つけられずリンク切れとなります。
2. パッケージ機能を活用する
Illustratorには、使用しているリンク画像やフォントをひとつのフォルダにまとめて書き出す「パッケージ機能」があります。
納品時だけでなく、チーム内でのデータ共有やバックアップ時にも、この機能を使ってデータをまとめる運用にするとトラブルを防げます。
【補足】Illustratorの最新動向と他のAdobe製品について
Illustrator 2024(v28.5)以降のバージョンではアップデートが入り、フルパスだけでなく「相対パス」も保存されるように改善されました。これにより、Box Driveのような環境でもリンク切れが格段に発生しにくくなっています。
ただし、InDesignやPhotoshopなどでは、引き続きフルパス依存の傾向があるため、今回ご紹介した「Linksフォルダで管理する」という運用ルールをクリエイティブ部門全体で統一しておくことをお勧めします。
ここまでリンク切れを防ぐ運用方法をご紹介してきましたが、正規販売代理店として、皆様に必ず知っておいていただきたい重要な前提があります。
それは、Boxを含むクラウドストレージやネットワークドライブ上でのファイルの直接編集・保存は、アドビの公式サポート対象外であるということです。(アドビのクラウドサービスを除く)
▼参考
【アドビサポートページ】オンラインストレージや外部ストレージ上のファイルの編集
アドビのサポートページでも案内されている通り、クラウドストレージ上で直接Illustrator等のデータを編集・上書き保存すると、同期のタイミングなどによりパフォーマンスの低下や、最悪の場合ファイルの破損につながるリスクがあります。
今回ご紹介したフォルダ構成ルールによって「リンク切れ」は防ぎやすくなりますが、万が一ファイル自体が破損してしまった場合の復旧などは保証されません。そのため、クラウドストレージ上での直接編集は、あくまで「お客様の自己責任」での運用となる点にご留意ください。
システム的に最も安全で確実な方法は、一度PCのローカル環境(デスクトップなど)にファイルをコピーして編集し、作業完了後にBoxへ戻す(上書きする)という運用です。 チームの利便性とデータ保全のリスクのバランスを考慮し、自社に最適な運用ルールをご検討ください。
IllustratorファイルをBox等のクラウドストレージで管理する場合に重要なのは、以下のポイントです。
対策:関連ファイルは同じ階層や「Links」フォルダで管理し、再探索させやすくする。
リンク切れは、クラウドストレージ自体の問題というよりも、アプリケーション側の仕様と運用方法に起因する部分が大きくあります。正しい仕組みを理解し、適切なフォルダ構成ルールを設けることが快適なデータ共有への近道です。
制作データの共有・管理でお悩みではありませんか?
今回ご紹介したIllustratorのリンク管理をはじめ、クリエイティブ部門でクラウドストレージを導入・運用するには、ファイル容量、フォルダ権限、他部門との連携など、特有の検討ポイントが多数あります。
Tooでは、毎月クラウドサービス個別相談会を開催しています。
弊社が取り扱う「Box」はもちろん、お客様のクリエイティブ業務に適したクラウドサービスのご提案から、ファイル共有のルール策定、アクセス権管理まで、幅広くご相談を承っています。
「制作部門と情報システム部門で管理方法を整理したい」「セキュアでクリエイターも使いやすい環境を作りたい」といった課題をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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ありがとうございました。
今後も最新情報やTIPSなど配信していきますので、ぜひご覧ください!
記事は2026年8月28日現在の内容です。