第九回 アニメータードラフト会議

アニメータードラフト会議 特別講評会 〜神戸電子専門学校〜



「アニメータードラフト会議」は、複数のCGプロダクションに一括で就活アプローチできる、アニメ制作を目指す学生のための動画コンテストです。2015年よりスタートし、毎年多くの採用実績が出ています。
今回は、神戸電子専門学校 3DCGアニメーション学科教員と同校の業界連携担当の職員、第八回アニメータードラフト会議で指名社数第一位に選ばれた学生に、コンテストに向けた具体的な取り組みをお話しいただきます。



登壇者



神戸電子専門学校について



創立64年の国内で最も歴史のあるコンピュータ系専門学校。18学科で構成される総合学園です。3つのポリシー【好奇心高き者】【創って学ぶ】【クリエイティブ・エンジニア】に加えて【共創教育】にも力を入れ、日々学生の育成に取り組んでいます。
さまざまな業界連携に力を入れており、年間650社以上の企業様にセミナーや説明会、作品指導会などを実施いただいています。企業、学生、学校の3者がWin-Win-Winになることを目標に取り組んでいます。

■アニメータードラフト会議参加のきっかけ



田中先生:神戸電子専門学校がドラフト会議にはじめて参加したのは、第三回の時でした。その時は学生が自主的に応募しました。結果は振るわなかったものの、就職活動の一環として、非常に優れたコンテンツだと感じました。次年度からは教員主導で希望者を募り、現在では2年生の授業の一環として取り入れています。
これまで多くの上位入選者が出ており第八回のドラフト会議では本長さんが指名社数15票で一位を獲得しました。

アニメータードラフト会議についての印象

田中先生:今となっては欠かせないものになっています。ドラフト会議をきっかけに、就活というものを学生が意識するようになっています。確実に毎年内定をドラフト会議からいただいているため、学校としても非常にありがたいです。
また、ドラフト会議の絵コンテはプロの方が書いています。そこから学生がアニメーションを制作するというスタイルは、他では体験できない貴重な経験になっていると思います。
1ヶ月間集中して課題に取り組むことで、アニメーションの力が伸びる子がたくさんいます。本当に参加するメリットしかない、非常にありがたいコンテンツだと感じています。



アニメータードラフト会議への取り組みポイント

①早い段階での意識づけとモチベーションの確保



田中先生:4月から始まるドラフト会議に向けて、1年生の9月に卒業生や先輩の作品データを見せて解説をしています。その後、1月の進級制作を作るために、学生たちは自分で絵コンテを描きます。初めは絵コンテの見方や描き方を知らないので、プロが作った過去のドラフト会議の絵コンテを使用して見方や描き方を教えています。
2年生に上がると就職活動が始まります。そのため、1年生の1月の段階で希望職種のヒアリングを行い、アニメーター志望者には2月にドラフト会議への参加を呼びかけます。そこからドラフト会議に向けて指導を本格化します。
4月にドラフト会議の課題が公開されると、1ヶ月間頑張って制作し、5月に提出する、というスケジュールを組んでいます。
このようにかなり早い時期から学生に告知して、「頑張れば就職できるんだよ」と意識づけをすることで、モチベーションを維持してもらうことがポイントです。何もない状態で「頑張れ頑張れ」ではなかなかモチベーションは上がらないので、最後までやり切ってもらうことを意識して指導しています。

松岡先生:モチベーションの維持で先生の存在は大きかったですか?

本長さん:はい、先輩の作品を見させていただき、作品のクオリティをどこまで持っていくのか基準ができたので、練習しようというモチベーションになりました。

②絵コンテの正しい理解と作品への反映



学生は入学した当初、絵コンテは読めない状態です。しかし、コンテは動画制作をする上で最も重要な設計図になります。これをしっかり読み解けないと、たとえモーションが上手くても動画作品としては良くなりません。
監督や演出の方には絵コンテを書いた根拠や考えがあります。学生には、いかにしてそれを読み取るのか、というのを意識するように伝えています。
仕事の現場では絵コンテをもとに打ち合わせがありますが、ドラフト会議では打ち合わせがないため、絵コンテから読み取っていく力が非常に大切になります。細かい動きだったり、どういったキャラクターにするのかなど、絵コンテの端々にある、細かいポースからキャラクターの設定や動きについても授業の中で取り込んで行っています。

カット3について

田中先生:年々ドラフト会議の絵コンテのハードルが上がっており、3月くらいからソワソワしています。今回もキャラクターの数が多くなってきたり、今回も電車の中で大立ち回りをするものになっていて、狭い空間での戦いの見せ方や動かし方など、どうやって教えようかなと思いましたね笑



本長さん:このカットではリファレンスを集めることが難しかったです。自分をモデルに撮影するわけにもいかず、多くのリファレンスを調べ、癖や特徴を把握してアニメーションを制作しました。

カット11について




田中先生:仮でモーションつけてもらった際に、上がってきたのはこの動画です。回転せずに戻ってきた感じです。絵コンテをみた感じでは、こういったアニメーションをつけられなくもないです。ですが、おそらく演出の意図としては、手すりと壁の間をぐるっと回ってるんだろうと判断できます。ですので修正の指示を入れました。



本長さん:最初は、隙間が狭いので無理かなと思ったんですけど。何とか絵コンテに忠実にアニメーションをつけました。

カット16について

コンテは専門用語が使われますが、アニメ業界の絵コンテはその中でも特殊な書き方をしているものが多いです。



こちらのカットには「BGフラッシュイメージ3枚置き換え」という呪文みたいなものが書かれていて、この言葉の意味がわからなかった学生が多かったです。
ドラフト会議の絵コンテが、非常にいいと思ったのはこういったところです。実際の現場で使う絵コンテのままですので、学生のうちにこれを体験できるのは貴重です。

③学生ごとに合わせた指導で全員提出を目指す

アニメーターとして就職を目指す学生は全員提出を目指すというようにしています。この方針にしている理由は、もちろん、たくさん指名をもらい行きたい企業の内定がもらうことが一番ですが、それよりも1ヶ月間で絵コンテから動画を完成させる力をつけてもらうためです。



作品制作ではいきなりカットを作っていくと、学生にはスケジュール管理や、クオリティのコントロールが難しいです。そのため、まずは絵コンテをそのまま動画にしてもらいます。ドラフト会議の絵コンテにはカットごとの尺が決まっていません。そのため、カットごとにどれぐらいの尺を使うのか、この段階で決めてもらいます。また、カメラワークや、カットの繋ぎのイメージもこの段階である程度決めていきます。



次に作ってもらうのが3D空間にキャラクターと背景を立たせた状態で、レイアウトとカメラワークをつけた動画です。動きのタイミングとレイアウトを確認します。ここではキャラクターの細かい動きはつけません。プロが切っている絵コンテにレイアウトを限りなく寄せるように指導しています。ここまでできたら、細かいとこを作っていきます。

④Brushup(フィードバックツール)の活用



学生の作品をフィードバックをするのに、Brushupというツールを使っています。ブラウザ上で利用できて、たくさんの学生とのやりとりを効率よく管理することが可能です。



このツールはオンライン上で修正指示ができることがポイントです。学生が自宅から作品をアップロードすれば、離れている教員も見られるので、リアルタイムで修正指示ができます。
また、学生同士の作品が見られることもポイントです。教室で、みんなの前で作品を見せて指導するのと同じように、オンライン上でもフィードバックが可能ですので、お互いの刺激になると思います。
学生には、進捗があれば、その都度アップロードするように伝えています。

本長さん:締切が近い時は、なるべく毎日レスポンスをするようにしていました。

本長さんへの質問

①アニメータードラフト会議への応募に向けてプロジェクトの目標/計画/進行管理は具体的に立てましたか?

本長さん:はい、始める前に全て決めました。スケジュールに関しては、1日単位でやることを決めていました。

②ドラフト会議に向けての制作工程で「障壁」はありましたか?

本長さん:一番は時間がなかったことです。どの工程も妥協したくなかったので、最終的に映像として納得のいく作品にするための、工程ごとの制作時間の調整が大変でした。

松岡先生:時間を作り出すために努力はしましたか?

本長さん:最初に全部決めることで、後でなあなあにならないようにしました。

③ドラフト会議に向けて特に注力した部分とその具体的施策はなんですか?

本長さん:絵コンテをよく見て、キャラクターの個性や性格を捉えることをまず意識しました。背景や配色、小物で、見ている人がワクワクしてもらえるように気を配りました。

松岡先生:きめ細かく丁寧に、というところを心がけたのですね。

④先生からのアドバイスで役立ったことを教えてください。

本長さん:アニメーター志望のため、やはりアニメーションの制作に注力してしまうのですが、先生から自分が見落としている部分を客観的に教えてもらえてよかったです。

⑤制作過程において一番自信がある部分を教えてください。

本長さん:一番はやはりアニメーションです。ただ、1年生の時から教わっているのでモデリングも気に入っています。

⑥アニメーション制作において1番の魅力は

本長さん:現実では不可能な動きでもCGならワクワクさせる動きができるので、そういったアニメーションを付けている時が一番楽しいです。

松岡先生:自分もアニメーションを作ってみたいと思い始めたのはいつ頃ですか?

本長さん:高校一年生の頃にディズニー映画を観て、CGアニメーターになりたいと思うようになりました。

⑦日々の効果的な学習方法や練習方法を教えてください。

本長さん:自分が特に成長できたなと感じるのはコンテストに参加したことです。いつもは自分との戦いですが、コンテストでは他の参加者の作品も見られるので、新しい発見があることが大きいのかなと思います。

⑧作品を完成させるために最も大切なことは何ですか?

本長さん:始める前に頭の中で完成を決めておくことが大切かなと思います。

松岡先生:着地点を見つけて逆算することは、就活など他のことでも大事ですね。

⑨アニメーション制作で一番やりがいを感じる部分は何ですか?

本長さん:CGならではの誇張した動きや魔法など、現実ではできないアニメーションを作っているときは自分がしたいことができているなと感じています。

⑩今後どのようなアニメーション制作に挑戦していきたいですか。

本長さん:日本だけでなく海外のアニメーションにも挑戦したいです。



本長さんを採用された企業様からの採用ポイント

作品の評価ポイント

演出の一連の流れに本当に意識して丁寧なアニメーションをしている印象がありました。カメラの動きに関してもしっかりと絵コンテに合わせて制作できている上で、いいものを作成しようという意識の高さを感じられました。全体的に絵コンテの内容についての再現性が高く感じられたため、評価させていただきました。

採用理由

物静かで優しい印象を持ちましたが、静かな中にも真面目でしっかりとした軸があることが伝わりました。入社後も真面目に取り組んでくれると想像ができたため、採用させていただきました。

アニメータードラフト会議へ応募を目指している方に最後に一言

本長さん:アニメータードラフト会議は制作時間が短く、集中力も必要ですが、しっかりと計画を立ててから最後まで全力で取り組んだら絶対に自分の力になると思うので頑張ってください。