身近になったAI

2013年、将棋AI「Ponanza」がプロ棋士に初勝利を収めたのは、世の中に大きなインパクトを与えました。
家電量販店では、Google Homeをはじめとしたスマートスピーカーが普通に販売されるようになり、Facebookでは投稿した写真の自動顔認識機能が搭載されるなど、AIは私たちの生活の中にさらに溶け込みはじめています。
ところで、皆さんはAIに対してどんなイメージを持たれているでしょうか。定着化の段階に入ってきているとはいうものの、AIってただのバズワードだと思っていた、という方、人間の仕事が奪われるかもしれないと心配されている方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、身近になったAIを理解する上でのキーとなる「ディープラーニング」について、確認してみましょう。

これまでのプログラミングとの違いはディープラーニング

AIの定義は、研究者によって様々な見解があります。現在は、特定の目的に特化して作られたAIが主流になっているという点で、「人間の知能の一部を再現するプログラム」がAIと呼ばれています。その中でも、現在のAIの主流な技術となっているのが「ディープラーニング」です。
ではそのディープラーニング、これまでのプログラミングと何が違うのかというと、システムが「自動で特徴を抽出してくれる」、という点です。これまでのプログラミングでは、「この指示を受けたらこう答えて」といったように、すべての条件を人間が定義しなければならず、それを変えない限り答えが変わることはありませんでした。つまり、そのプログラムに組み込まれた範囲内でしか答えられない、ということです。
例えば、これまでの翻訳技術は、入力文を単語に分解し、それぞれの単語を翻訳したものをつなげることで翻訳文を作り上げる方法でした。しかし、全体の意味を捉えられていない不自然な文章になってしまうことも多くあり、語順の違う言語間ではあまりよい翻訳結果がえられませんでした。
一方で、ディープラーニングでは学習によって、「この単語の組み合わせの場合はこのように訳される傾向があるな」といった具合で、特徴を自動で見出すことが可能になりました。

AIは大量のデータから特徴を見出してくれる道具

2015年、Google翻訳で「存じ上げません」を英語に訳すと、「Zonjiage not」と訳されるという記事が話題になりました。現在同じ日本語を入力すると、きちんと「I do not know.」と訳してくれます。このように精度が向上したのは、「存じ上げません =I do not know.」と、プログラミングしたからではありません。これでは他の言葉も修正していくのに日が暮れてしまいます。
実はこの精度向上の裏で動いているのがAIの技術、ディープラーニングで、Google翻訳が大量のデータを学習した結果、より自然な翻訳が可能となったそうです。

ビジネスにAIを活用する場合は目的を明確に

Google社ではあらゆる便利なツールを提供することを通して、AIに利用できるビッグデータを大量に集めることを可能にしています。AIは大量のデータの中から特徴を見出すことのできる道具なので、よりたくさんのデータを持っている場合、AIによってできることの可能性が広がるでしょう。しかし、データさえあればあとはAIがうまくやってくれるのか、というとそうではありません。AIがより精度の良い結果が出せるように、たくさんのデータを選別したり、学習にあたっての微調整をしたりなど、人間の手が必要な部分もあります。
そのため、AIを使って何をしたいのかということが明確になっていることが、データを有効活用していくために重要になります。データがない場合は、それを集めるという段階から行う必要があります。
AIをうまく活用するために、できることとできないことを見極め、まず何が必要なのかをきちんと知ることが、これからのAI定着化の時代を乗りきる鍵になるのかもしれません。