食品表示は消費者が安全な食品を自ら選ぶうえで重要な指標です。一方、食品製造や販売事業者は食品表示の欠落や誤りといったミスが事故や回収のリスクとなるため、管理を徹底する必要があります。しかし実際のところ食品表示のミスによる回収の事例は後を絶ちません。そこでこの記事では、食品表示の管理の重要性とミスが発生した場合のリスクをまとめたうえで、効率的に食品表示のミスを減らすためのポイントを解説します。

食品表示の必要性とその管理の重要性

食品表示は消費者に販売されるほとんどの食品に義務付けられています。なぜ食品表示は必要なのか、また事業者が食品表示の管理をする重要性を解説します。

食品表示の必要性

消費者は食品表示を見ることで、栄養成分やアレルギー成分が含まれていないかを確認できます。食品表示によって、消費者が自らに適した食品を選ぶための指標になります。

また食品表示はトレーサビリティを向上させるため、事故が発生した場合の回収や原因の究明といった措置を迅速かつ適切におこなうための手がかりとなるのです。

食品表示管理の重要性

食品表示には食品表示法の規定に基づいたルールがあり、これは「食品表示基準」で定められています。この基準は食品の種類ごとに異なっており、例えば生鮮食品は名称と原産地を記載するだけでよい(例外に該当しない場合に限る)のですが、加工食品では少なくとも9項目を記載しなければなりません。

さらに表示の方法も規定されており、栄養成分表示では成分ごとに指定の文字を冠することや決まった単位表示を使用することなどが求められます。

また食品表示基準は定期的に改正されることがあるため、情報の更新も欠かせません。例えば令和4年4月からは国内で製造されるすべての加工食品を対象に、重量割合のうち1位の原材料は原産地の表示が義務化されました。また法改正に限らず、原材料の調達先が変更になれば食品表示は見直す必要があります。天候や物流に左右されやすい材料を使用する場合は表示の更新頻度が上がることでしょう。

このように食品表示基準は表示方法に細かい規定があり、定期的に改定されます。さらに食品は材料の原産地が変更になることも少なくないため、食品表示の管理が重要になってくるのです。

食品表示ミスによるリスク

食品表示基準は食品ごとに詳細な表示の取り決めがあり、管理や定期的な更新が必要です。そして食品表示が適切におこなわれていない場合、重大リスクとなることが考えられます。

食品表示ミスは行政処分の対象

食品表示基準に定められた事項を欠落、誤記した場合は罰則があります。すでに解説したとおり、食品表示は購入者の食の安全を守るためにあります。例えば、重度の食物アレルギーがある消費者にとってはアナフィキラシーを避けるためのとても重要な情報です。そのため食品による健康被害の発生がある場合など、安全性に影響を及ぼす事項は「表示違反」となり、法人の場合で1億円以下の罰金が課せられることもあります。さらに緊急性の高い表示ミスがあった場合は「回収等命令」が消費者庁より発令されます。

食品回収(リコール)の主な要因は食品表示ミス

食品回収(リコール)にいたる理由はさまざまですが、実は2021年度中に届出があった回収要因の半分以上が食品表示ミスによるものです。 厚生労働省のウェブサイトにおける公開回収事案検索(食品リコール情報)によれば、全回収理由325件に対して食品表示法違反および違反のおそれ、その他(食品表示法)が回収理由であるものが170件表示されます(2022年4月11日時点、届出年月日を2021年1月1日から2021年12月31日として検索)

さらに事例をみてみると、製品に問題がなくても健康被害につながる表示違反は回収の対象です。例えば、あるクッキーのアソート缶はアレルゲン「卵」の表示欠落により食品表示法違反、回収となっています。

表示ミスは自社のビジネスの重大リスク

事業者にとって食品表示ミスは、回収や罰則につながるだけではありません。食品回収は自主回収であったとしても行政へ届け出る義務があり、厚生労働省や消費者庁のウェブサイト上で公表されます。そのため表示ミスがあると同社が扱う食品全般の安全性に疑問をもたれることになり、ブランドのイメージダウンや企業としての信頼性を損なうことにもなりかねません。

このようなビジネスの重大リスクになりうる食品表示ミスは、どのようにしたら減らせるのでしょうか。

食品表示のミスを減らす方法

なんとしても避けたい食品表示違反。ここでは食品表示のチェックを強化し、効率的にミスを減らす方法を解説します。

チェック方法を工夫する

まず今すぐできる方法として、食品表示のダブルチェック、トリプルチェックです。複数名が校正をするとミスを発見しやすくなります。さらに効果的なのは、読み合わせと呼ばれるふたり一組でおこなうチェック方法です。読み上げと確認を役割分担するので、ひとりで校正するよりも間違いに気がつきやすくなります。さらに2回目は役割を入れ替えてチェックするとより精度が上がるでしょう。

情報管理を徹底する

食品表示は法令や原料の調達先の変更によって更新が必要な情報です。そこで徹底したいのは食品管理のマスターデータ(商品規格書など)を一元管理することです。包装資材などの制作物の担当者は自分で表記データを入力せず、担当部署が責任をもって管理する商品規格書などのマスターデータを引用して制作するように徹底しましょう。

デジタルツールを導入する

チェック方法の工夫は食品表示のミスを減らす一定の効果がありますが、ヒューマンエラーを無くすことは難しいものです。また情報管理を徹底してもデータのやり取りを重ねるうちに思わぬミスが起こらないとも限りません。そこでおすすめしたいのはデジタル校正ツールの導入です。

異なる保存形式のファイル同士やデジタルと出力紙の比較、突き合わせ作業を自動化できるツールを使用すれば、マスターデータである商品規格書と包装資材の版下を簡単に比較できます。

差分チェックが簡単にできるデジタル校正ツールを使えば、基準の改正点や原材料の変更が確実に食品表示に反映されているかを少ない人員でも効率的かつ見落としなく確認できます。またオンラインでデータを一元管理することにより、他部署にわたる制作や校正業務の取りまとめを効率化できるようになり、データの取り違いミスも防げるでしょう。

食品表示ミスの回避にはデジタル校正が効率的

食品表示のチェックにおいて活用したいのはパッケージ制作の校正に特化したデジタル校正ツールです。異なるファイル形式の比較もできるデジタル校正ツールであれば、商品規格書と包装資材の版下などの突き合わせを自動化が可能です。デジタルツールと人による校正を掛け合わせることにより、チェックの効率は上がりミスは見つけやすくなるでしょう。

特に製品パッケージの校正は、バージョン管理や差分チェック、共同作業でのファイル管理ができるパッケージ校正ツールを使えば業務全体の効率化にも貢献するでしょう。


パッケージ校正ツールの例

パッケージ校正ツールの例


デジタル校正ツールの例

デジタル校正ツールの例



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