ビジネスにおける競争が激化する昨今、業務プロセスの効率化・システム化はどの企業にとっても喫緊の課題といえるでしょう。この効率化を実現する方法として注目を集めているのがワークフローシステムです。導入することで、業務プロセスはどのように変わるのでしょうか。メリットや導入前に知っておきたいポイントをまとめました。

業務手続きをワークフローシステムで効率化する必要性

ワークフローとは、業務における一連の流れ(プロセス)を指す言葉です。業務には通常、誰がどのような作業をおこなうか、またどういった順番で進めるかが決められていますが、この手順のことをワークフローといいます。

例えば会議の議事録を社内で共有する場合、書記役の人がフォーマットに沿って議事録をまとめ、上長の許可を経て決められた方法で社員に回覧、もしくは決められた場所に保存するという流れになるでしょう。
もし、この作業を毎回同じ人が担当している場合は、慣れているため改めて手順を決める必要はないかもしれません。しかし、毎回担当者が変わる場合、どのフォーマットを使えばいいのか、だれに承認を取ればいいのか、またどうやって回覧するのかなど、作業の一つひとつに確認の手間がかかり非効率です。(議事録の作成は、業務に慣れる意味合いもあり新入社員が担当することが多いためなおさらです。)

手順をあらかじめ決めておかないと、回覧すべき人に書類が渡らなかったり、フォーマットに沿わない書類が作成されるなどのリスクが発生します。
フォーマットを探す、上長に承認を取る、回覧方法を確認する。それぞれの作業は些細なことですが、こうした小さな手間が積み重なることで仕事はどんどん非効率になり、時間ばかりがかかってしまいます。特に株式総会の議事録のように確認作業が多いもの、また厳密に決めた方法で保管されていることが重要な書類に関してはその傾向が強くなります。

こうした業務プロセスを効率化するには、手順一つひとつを整理し明確にする必要があります。特に、サーバーの中から適切なフォーマットを探したり、承認を取るべき相手を確認するといった「見えない手間」は、業務効率化を図るうえでボトルネックになりやすいもの。ワークフローシステムを構築することで、業務をスムーズに、スピード感を持って遂行できるようになるのです。

ワークフローシステムを構築するメリット

ワークフローシステムを構築することで、具体的にはどのようなメリットが生まれるのでしょうか。代表的な3つをご紹介します。

1.業務の効率化につながる

ワークフローシステムを導入する最も大きなメリットは、業務の効率化につながることです。申請や承認、決裁、保管などの業務手続きを電子化することで、これまで書類作成にかかっていた手間を大幅に削減。また、業務の滞りが解消されるため、大きな効果が期待できます。例えば、サーバーの中から必要なファイルを探したり、担当者を見つけたりといった本来時間をかけるべきではない手間が削減できるため、スムーズに業務を進めることができます。
また、一つのタスクを処理すれば自動的に次の担当者に回され、メールや業務システムなどあらかじめ決めた方法でアラートが送られるため、意思決定のスピードアップにもつながります。特に、出張や外出の多い上長に承認を得なければいけないケースでは、外出先からでもリモートで承認できるワークフローシステムを利用することで時間の大幅な短縮になるでしょう。

2.業務プロセスが可視化される

ワークフローシステムを導入していれば、申請や承認、決裁などそれぞれの業務タスクの担当者がシステム上で可視化されます。そのため、万が一業務がどこかで滞っていても発見しやすく、進捗状況が常に確認できるようになります。担当者は自分の担当業務として認識しやすく、責任を持って対応できるようになるのもメリットといえるでしょう。

3.内部統制の強化

ワークフローシステムには、必要な情報を必要な人に正しく伝えられるというメリットもあります。社内稟議や決裁においては、申請フォームに入力すれば自動的に決済権のある人に申請書類が送られるため、現場や支社の独自判断で決裁が進められるような事態を防ぐことができます。また履歴が残るため、誰が申請し誰が決済したのかをあとから追跡でき、文書の改ざんなどの不正防止につながる点も大きなメリットです。

ワークフローシステム導入時のチェックポイント

ワークフローシステムの導入は、業務の効率化や可視化などさまざまなメリットをもたらしてくれますが、だからといってどんなものにでも効果があるというわけではありません。
導入時に最も気をつけておくべきは、そのシステムが本当に現状抱えている課題を解決してくれるかどうかという点です。例えば現場の決裁権が強く、またそれで業務プロセス上も問題なく進んでいるようなケースでは、ワークフローシステムを導入することで業務プロセスが複雑化することによって現場が混乱し、逆に業務効率が落ちてしまう可能性もあります。ワークフローシステムは、あくまで現状の課題を解決できるかどうかという視点で選ぶべきです。

また、導入を予定しているワークフローシステムが現状の業務フローと整合しているかどうかも重要なチェックポイントです。仮にシステムを導入することで既存フローの一部または全部を一から構築しなければいけないような場合、当然ながら従業員がそれに慣れるまでは効率が低下することになるでしょう。それだけのリスクを抱えてでも導入するべきかどうかは、事前にしっかりとシミュレーションしておく必要があります。
このほか基本的なことですが、システム自体の使い勝手もチェックするべきポイントです。具体的には以下のようなポイントに気を付けておきましょう。

  • 現状使用している業務ファイルをそのまま活用できるか
  • ファイル共有、スケジュール管理などの機能は充実しているか
  • 社内で利用しているグループウェアと連携が可能か
  • シンプルで使いやすいUIかどうか

ワークフローシステムの機能を拡張してくれるツール

ワークフローシステムにはさまざまな種類のものがありますが、中には他ツールと連携することで、さらなる業務効率化を図ることができるものもあります。システムを構築する際には、以下のようなツールとの連携が可能かどうか、検討してみることをおすすめします。

電子署名ツール

ビジネスにおける契約の締結や、社内稟議・決裁において近年注目を集めている電子署名ツール。これまで捺印や署名は紙書類にするものというのが一般的な認識でした。しかし電子署名の登場により、パソコンやタブレット、スマートフォンなどのデバイスから電子書類にも署名を付与することができるようになりました。捺印のためだけに印刷した契約書を郵送する手間もなく、署名後の書類はサーバー保管し管理・共有できるなど、ワークフローの簡略化、効率化にも大きな効果が期待できるツールです。

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ファイル共有システム

業務に必要なさまざまなファイルをクラウド上に保存できるファイル共有システム。ただの保管スペースとして機能するだけでなく、タスクの進捗管理や柔軟なアクセス権限機能など、ビジネスで求められる機能が充実したツールも登場しており、業務管理全般に使えるマルチツールとして多くの企業が導入しています。

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効率化だけでなく、業務改善にも大きな効果を発揮する

ワークフローシステムを導入するメリットは業務の効率化だけでなく、タスクの可視化や業務管理、内部統制の強化など多岐に渡ります。業務プロセスが見えるようになれば、それだけボトルネックなどの問題点も見つけやすく、日々の業務改善にも大きな効果を発揮するでしょう。


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