働き方が大きく変わってきています。緊急事態宣言の影響で、多くの企業がテレワークを実施しました。今後もひとつの働き方として、テレワークを制度化して取り入れている企業も多くあります。そうした流れの中で、オフィスを廃止する企業も出てきたりと、オフィスのあり方についても見直されてきています。テレワークとオフィスの関係性について紹介します。

緊急事態宣言でテレワークを強いられた結果、これまで困難と思われていた業務も、想定以上にうまくまわっていたり、業務に集中できた経験から好意的な意見が多くあがりました。それに伴い、テレワークをひとつの働き方として取り入れる企業も多く出てきています。これまで、仕事(業務)は会社のオフィスに集まっておこなうことが一般的で、多くの企業が同じような就業時間ということもあり、東京にオフィスを構えている企業で働く社員は、世界一とまで言われる通勤ラッシュの中で出社していました。しかし、テレワークによってこの考え方が変わってきました。さらに、IT企業やベンチャー企業を中心に、固定のオフィスを持たなくなるような動きまで出てきました。その理由はオフィスを廃止することで、オフィスの賃料や光熱費、社員の通勤費といった費用が削減できるからです。特に、賃料の高い大都市圏にオフィスを構えている場合は大きなコスト削減につながります。

では、テレワークが中心になると、すべてのオフィスは不要になるのでしょうか?
そうではありません。オフィスがすべて不要になるわけではなく、オフィスが持つ機能的な役割に変化が生じます。以下で、これからのオフィスに求められる機能について説明します。

コミュニケーションによるチームワーク創出



対面でのコミュニケーションの重要性

それぞれが離れて業務をおこなうことになった結果、大きな課題としてあげられるようになったのが、雑談のような無目的のコミュニケーションが少なくなってしまったことです。雑談からアイデアが生まれるという経験をされた方も多いかと思いますが、テレワークの普及はそういった機会の損失につながっている面もあるようです。
対面でコミュニケーションが取れないと、非言語情報(表情や雰囲気、ストレスを抱えているか等)をうまくキャッチできない場合があります。またコミュニケーションの不足や、曖昧なコミュニケーションによって、不要な仕事が発生し時間が取られることもあります。こういった理由から、顔を合わせての、素早く効果的なコミュニケーションが強く求められているのです。
オフィスでは、従業員がある程度の頻度で顔を合わせながら、互いの考えること、悩み、置かれた状況を共有・相談しあうことができます。業務効率の点から見ると一見無駄なことのように思えますが、チームワークを創出し、効果的なコミュニケーションを生み出すためには必要なものであるといえます。

これらのことから、これからのオフィスに求められる機能のひとつとして「コミュニケーションが取りやすい空間」があげられます。テレワークを併用することで、デスクの数を減らすことができ、空いたスペースに休憩コーナーを作るなどの、コミュニケーションが取りやすくなる工夫をすることで、自然発生的なコミュニケーションを生み出すことができます。

これからのオフィスに求められる機能とは?



弱いつながりを生み出す場所

同じ社内でも、日常の業務で関わる人というのは、ある程度限られているのではないでしょうか?イレギュラーな業務で他部署の人と業務をおこなう際は、コミュニケーションミスが生じやすい傾向にあります。さらに、発言タイミングにコツのいるビデオ会議などの場合、直接会えればすぐ解決できるような些細な問題も、情報伝達が不足し、必要以上に時間がかかってしまう場合もあります。

普段の関わりが少ない他部署の人とも気軽に雑談ができれば、業務上の気づきや連携のきっかけということも生まれやすくなります。テレワーク環境だと、目的をもった打ち合わせ以外の、こうしたコミュニケーションが生まれにくいのは体感されているかと思います。オフィスには、「弱いつながりを生みやすい場所」が設計されていることが、重要な機能となります。

心理的安全性を物理的に感じる場所

テレワークをおこなうにあたって、これまでの信頼関係ができているチームは滞りなく業務が進められると思います。しかし、新しく入社したメンバーがいる場合は信頼関係は築けておらず、業務のやり方なども教えなくてはいけません。新しいメンバーには、早く会社の雰囲気や業務に慣れてもらい、定着させる必要があります。そういった場合は、テレワークよりもオフィスで顔を合わせてコミュニケーションを取りながら業務を進めた方が、信頼関係も早く築くことができ、業務理解のスピードアップにも繋がります。そのためにもオフィスには、心理的安全性を物理的に感じ、企業の目指す方向や醸成されているカルチャーなどを体現するという機能も求められます。

業務集中やオンラインミーティングのやりやすさ

業務をするためのスペースにも、変化が求められています。上記のように、社員同士が気軽にコミュニケーションをとれることが、これからのオフィスに求められる機能のひとつです。
さらに、これまでのように静かに業務に集中できるスペースに加え、周囲に気兼ねなく会話できるスペースも必要です。以前は会議室の予約時間の調整で苦労することもありましたが、現在は個人のデスクでオンラインミーティングが気軽にできるようになりました。そうすると、周囲にも気を遣うことが多くなったのではないでしょうか?近くの話し声や背景の写り込みまで配慮する必要がでてきました。周りのことをそれほど気にすることなく、オンラインミーティングがおこないやすいスペースがあると良いでしょう。

雑談などの直接的なコミュニケーションが取りやすいエリアと、業務に集中しやすいエリア、オンラインミーティングをやりやすいエリア等を意識的に分けることで、チームワークの向上だけでなく、生産性を向上させることもできるのです。

オフィスの機能を再構築



今後、テレワーク・在宅勤務がひとつの働き方として浸透していくことでしょう。すると、これまでオフィスに当たり前にあった一人ずつのデスクは不要になります。その分のスペースをコミュニケーションが生まれやすいエリアとして、意識して設計することが重要になります。顔を突き合わせて話ができるスペース、1on1ミーティングのような少人数で話がしやすいスペース、オンラインミーティングがしやすいスペース、業務に集中できるスペースで区分けができると効果的です。
つまり、「テレワーク・在宅の環境では実現できない、さまざまなコミュニケーションを促進し、業務のパフォーマンスを上げる」ということです。ポイントはどのようにしてコミュニケーションを生み出すか?です。ファシリティーなどのハードの部分だけではなく、コミュニケーションを生み出しやすくするソフトの活用なども合わせて考えると良いでしょう。

多様な働き方を取り入れる企業が増えています。「個人が業務のパフォーマンスを最大限に発揮できる場所」を選択できることが重要です。資料作成であれば、家の方が集中して作業できるかもしれませんし、込み入った打ち合わせであれば同じ場所にいることで、より深い話ができるでしょう。

社員のエンゲージメントや帰属意識といった定量的に評価しづらい部分が、これまで以上に重要になってきています。オフィスに出社しての業務が、無意識のうちに身についていく企業文化や考え方を醸成、自然と生まれていた仲間意識や絆を構築し継続できるという効果の有用性を認識できれば、多様な働き方の中でも社員が顔を合わせることができる「オフィス」の役割はおおいにあります。


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