セキュリティや検索性、環境面など、ペーパーレス化にはさまざまなメリットがあります。また、法律の改正など行政によるペーパーレス化を推進する流れもあります。ここでは、ペーパーレス化のメリット・デメリットを解説したうえで、実際にペーパーレス化に成功した事例もご紹介します。

国はペーパーレス化を推進している

企業の文書は電子帳簿保存法やe-文書法などの法律によって運用方法が定められています。法律の改正によって、2016年1月からすべての契約書や領収書は電子保存が可能になりました。2017年1月からは、領収書や請求書をスマートフォンなど携帯電話のカメラで撮影して電子化することも認められています。
こうした法整備などから、紙の書類をスキャンして電子データとして保存し、ペーパーレス化を推進していくことは国の方針であることが分かります。

ペーパーレス化のメリット・デメリット

あらゆる書類をデータとして保存するペーパーレス化は、企業活動において多くのメリットがあります。ここではペーパーレス化による具体的なメリットをご紹介します。あわせて、デメリットについても解説します。

ペーパーレス化のメリット

情報の検索が可能になる

紙で書類が管理されている場合、利用したい情報があるときには、「棚からファイルを出す」「段ボールから目当ての書類を探し出す」など、物理的にその書類を探し出さなければなりません。ファイルを繰りながら、お目当ての書類を探す手間と時間がかかる作業は、効率がいいとは言えません。
ペーパーレス化によって書類がデータ化されていれば、保存されているすべての文章に検索をかけることができるので、瞬時に探している書類にアクセスできます。しかも会社にいる必要もなく、取引先や出張先からでもすぐに情報を得ることができます。さらに、一度データ化されてしまえば、利用状況などを統計的に分析してビッグデータとして他の分野に応用することもできます。

紙代、印刷代がいらない

ペーパーレス化の大きなメリットのひとつに、紙代や印刷代のコスト削減が挙げられます。紙代、印刷代だけではなく、それに伴うプリンターのメンテナンスコストや電気代まで節約することができます。A4用紙にモノクロで印刷するのに1枚5円と仮定し、従業員が1日10枚印刷すると、500人規模の企業で1ヶ月75万円の印刷代がかかる計算です。年間では900万円のコストを削減することができます。

紙を保管するコストがなくなる

紙の書類がなくなれば必然的に書類を保管するファイルや棚もいらなくなりコスト削減につながります。また、保管スペースや倉庫を有効活用することができます。経理部門の場合、領収証の保管期間は7年なので、その期間の分の保管スペースを確保する必要がなくなります。

バックアップに強い

紙の書類は、物理的な紛失、盗難、火災による焼失など、一度失ってしまうと復元することは不可能です。一方、ペーパーレス化によってデータ化された書類をクラウド上に保存しておけば、パソコンや自社サーバーが故障したり、盗難にあったりしても復元することができます。

環境配慮

紙を消費することは、それだけ森林を伐採しているということです。環境破壊、それに伴う地球温暖化などの問題が山積するなかで、地球環境の保護にもペーパーレス化は有効です。持続可能な社会をつくるための取り組みとしてアピールでき、企業価値向上につながります。

ペーパーレス化のデメリット

ペーパーレス化自体に抵抗がある人もいる

ペーパーレス化が進まない最大の障害は、心理的な抵抗にあります。ベテラン社員ほど今までの仕事の仕方を変えることに抵抗があり、ペーパーレス化に対して消極的な場合があります。本格的にペーパーレス化を導入するのであれば、トップダウンによる強力なリーダーシップを持って推進する必要があります。

ペーパーレス化した後のオペレーションを学ぶ必要がある

ペーパーレス化を導入するということは、会議資料や稟議書など、ビジネスにおける基本的なオペレーションをすべて刷新することを意味します。新しい方法に慣れるまでに、時間と多大な労力がかかるのは事実です。前述の心理的な抵抗と相まって、新たなオペレーションを学ぶことに消極的な人もいるでしょう。

電子化できない書類がある

国がペーパーレス化を推進しているからといって、すべての書類を電子化できるかと言えばそういうわけではありません。宅建業法における重要事項説明書や賃貸契約書は、法律上「書面を交付」という文言があるので、ペーパーレス化することができません。ペーパーレス化に取り組む場合は、事前に専門業者と相談しながら準備する必要があります。

ペーパーレス化を進めるためのツール

ペーパーレス化をするには、紙の代替になる端末やシステムを導入する必要があります。ペーパーレス化のための具体的な方法をご紹介します。

タブレット端末

ペーパーレス化をするうえで、ハードウェアとして最も代表的なものが、タブレット端末です。iPadをはじめ、多くのデバイスが発売されています。タブレット端末を選ぶときは、自社のネットワーク環境との兼ね合いや、端末をうまく管理できるかなどの課題がありますので、専門業者に相談することをお勧めします。

クラウドストレージ

各デバイスのハードディスクドライブにデータを保存するのではなく、クラウド上にデータを保存することで一元的にデータを管理し、いつでもどこからでもデータにアクセスできる状態にします。各端末にデータが保存されなくなるので、セキュリティ面でも安全です。

ペーパーレス会議システム

PCで制作した会議に必要な配布資料などを、そのままシステム上で一元的に管理し会議に利用できます。ただ単に資料をペーパーレス化できるだけでなく、ストリーミングの動画を利用した遠隔会議もできるメリットがあります。

ペーパーレス化の成功事例

最後にペーパーレス化の導入に成功した2つの事例をご紹介します。

文理開成高等学校

千葉県にある文理開成高等学校では、教員業務にiPadを導入することによってペーパーレス化を実現しました。ICTリテラシーの向上と業務改善を目的として、iPadを20台活用しています。それまであった職員会議での議題の配布資料をやめ、クラウドシステムで資料を共有することにしました。ペーパーレス化しただけではなく、資料を印刷する手間や会議内容の聞き落としがなくなりました。
さらにiPadを利用した稟議システムも導入しています。今まで承認がおりるまで1~2週間かかっていたのが、直接上長に依頼できるシステムにしたため、業務改善を行うことができました。稟議の承認依頼があれば校長に直接通知され、稟議の結果はすぐに申請者に知らされます。校長が出張で不在の場合でも、迅速な決済が可能になりました。

三菱UFJ銀行

三菱UFJ銀行は、2019年1月にタブレットや多機能ATMを全面に活用した新店舗を東京・目黒に開店しました。デジタル取引をフル活用し、入金、振込、税金の支払いなどの銀行業務をペーパーレスで行えるそうです。2023年までには、同様のコンセプトの店舗を70~100店舗まで全国に広げる計画です。

さらに加速するペーパーレス化

ペーパーレス化を実現することでセキュリティ向上や効率アップなど、さまざまなメリットが享受できます。これからも世の中のペーパーレス化の流れは進むでしょう。業務効率化のためにも、ペーパーレス化を検討してみてはいかがでしょうか。


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