Too主催の特別セミナー「.design surf seminar 2017 - デザインの向こう側にあるもの - 」が、2017年10月13日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区虎ノ門、虎ノ門ヒルズ森タワー4F)で開催されました

昨年に続き第2回目となる今回も、デザインをビジネスの側面から捉えた9本のセミナーを行いました。

本レポートでは、花王株式会社の片平直人さんによる、花王のパッケージデザインの事例とともに「生活と商品デザイン」を考える「“きれい”のデザイン - 生活に寄り添う商品デザイン -」について紹介します。

片平 直人

花王株式会社 作成部門 副統括 兼 パッケージ作成センター長 1992年、パッケージデザイナーとして花王株式会社・作成部に入社。洗剤、スキンケア、オーラルケア等、国内外の様々なデザインを担当。広告担当を経て、2017年度より現職。

片平直人さんはパッケージデザイナーとして花王に入社し様々なデザインを担当、2年間広告を担当したあと、現在は兼務でパッケージ作成センター長を務めています。パッケージデザインの現場について豊富な事例を交えて紹介していただける貴重な機会となりました。

花王のヒストリーと「花王 ホワイト」のデザインリニューアル


花王の歴史を振り返る片平直人さん

まず最初に、2017年に創業130周年を迎えた花王のヒストリーを当時の広告のビジュアルを交えながら振り返り、ニーズや生活の変化に合わせて商品が変わっていったことを説明しました。古い写真の数々に歴史を感じるとともに、生活の場に広告を出していく取り組みや、当時珍しかったデザインコンペを行うなど先進的なことを行ってきた企業だと知ることができました。


時代とともに変化してきた石鹸のパッケージデザイン


花王ホワイトのデザインリニューアルの事例を紹介

石鹸からスタートした花王が1970年に発売開始した石鹸「花王 ホワイト」は現在まで続く主力商品で、2013年に大幅なデザインの改良を行ったそうです。「品質の良さを伝えたい」「店頭での存在感が下がっている」といった課題を解決しつつ、大事なポイントは継承して正統な進化ができたという事例の紹介はとても聞き応えがありました。


“きれい”への取り組みを展示会で紹介

暮らしの中の“きれい”への提案を通じて生活文化に貢献してきた花王は、3年前に東京藝術大学と「にほんのきれいのあたりまえ」展を開催しました。“きれい”が日本の教育の現場に根付いていること、“きれい”という概念は日本の文化になじんでいることを再確認できる場でもあったとのことでした。

パッケージ作成センターの仕事の紹介


生活の場、店頭といった現場を常に大切にしているという片平さん

パッケージ作成センターの仕事は商品の初期のプロトタイプの段階から関わるとのことで、作り手の思いを翻訳して「どうやって生活の中に入っていくか」「マインドに残っていくか」を考えてパッケージを作るそうです。

パッケージデザインで大事なこととして、1つ目は「店頭でのプレゼンスと生活の場での調和」と紹介しました。店頭で魅力を伝えることと、生活の場面に調和することの両立を大事にしているとのことです。


いろいろな商品のパッケージデザインの変遷を見ることができました

2つ目は生活、趣向、社会が変化していく中で、廃れないように少しずつ「よく」していくことです。花王の様々な商品のパッケージデザインの変遷が紹介されましたが、普段何気なく目にしている商品も、ちょっとずつ改良を加えていった結果の姿なのだと再認識させられました。

時代の変化に合わせて取り組む最近の事例

「店頭でのプレゼンスと生活の場での調和」を大事にする花王の、「店頭」と「生活」それぞれの変化に対する取り組みについての話も大変興味深いものでした。


生活の場だけに向けて考えたデザインの商品化の事例紹介

「店頭」がないネット販売において、デザインはどうあるべきかチャレンジした消臭スプレーの事例では、店頭での主張が不要になり生活の場だけに向けて考えたデザインの実例を紹介しました。

また、「生活」の変化としては、「みんながいい」と思うものが流行した時代から、多くの情報から自分なりの正解を取捨選択する時代への変化に対する取り組みを紹介しました。香りとそこにつながるストーリーで3種類を用意したシャンプーを開発、キャラクター設定やストーリーを作り込んで共感を呼ぶような広告をつくり、テレビ広告は一切やらずデジタルだけで宣伝しました。

最後にインドネシアで洗剤を販売する海外展開の例も紹介しました。現場に行ってターゲット層がどういう生活をしているのかを知り課題を立ててデザインで解決し、店頭に商品を持ち込んでパッケージの反応を見るといった地道な作業を行う姿に、海外でも生活に寄り添うデザインを追求していく姿を見ることができました。


片平さんの誠実な語り口が印象的でした

店頭で選んでもらうためのデザインと、購入されたあと日常の生活の場に調和するデザインの両立。過去からの歴史を引き継ぎつつ、新たなものに進化させるチャレンジ。“きれい”に貢献する花王のデザインの現場の声を聞くことができる、貴重なひとときでした。


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