Too主催の特別セミナー「.design surf seminar 2016 - デザインの向こう側にあるもの - 」が、2016年10月12日に虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区虎ノ門、虎ノ門ヒルズ森タワー4F)で開催されました。

これからの時代にデザインの業界はどのように動いていくのか、いまデザインビジネスの最前線ではどのようなことが重要なのか、それらの答えを見つけるヒントとなるセミナーを9本用意いたしました。

本レポートでは、株式会社日本デザインセンター 大黒デザイン研究室による「コミュニケーションを軸にしたデザイン」について紹介します。

デザイナーに求められることが広がった今、領域を問わないデザインが必要

スピーカーは、株式会社日本デザインセンターで「大黒デザイン研究室」を率いるアートディレクター/グラフィックデザイナー、大黒大悟さん。

皇后美智子様の和歌のブックデザイン、武蔵野美術大学のパンフレット、無印良品のクリスマスキャンペーンのアートディレクション、国土交通省による全国23半島地域の振興を目的とした展覧会「半島のじかん」のアートディレクションなど、幅広いジャンルのクリエイティブに関わっています。

デザイナーに求められることがどんどん広がっている今、領域を問わないデザインをやらないといけないと語る大黒さん。例えばパッケージデザインだけでなくお店の店舗デザインや映像、Webなどそのブランド全般に渡って同じ印象を与えるような「One Design」で考える必要があるとのことです。

デザインする際にはスケール感覚を大切にしていること、背景を語れるものになっている必要があることなど、One Designでの考え方のヒントも解説しました。


最近の実績を紹介する大黒大悟さん

そして、アウトプットのクオリティはもちろんですが、コミュニケーションの仕方を考えることがより重要ということを、2つの事例を元に説明していきます。

高尾山のプロジェクトで「TAKAO 599 MUSEUM」の立ち上げ

東京都八王子市の高尾山のプロジェクトに参加し、高尾山の魅力や情報を伝えるミュージアム「TAKAO 599 MUSEUM」の立ち上げに奮闘した話を紹介しました。

建築空間の提案から展示のデザインや展示物のディレクションなどをトータルで手がけており、まさに領域を問わないデザイン=One Designの事例として大変興味深いものでした。


TAKAO 599 MUSEUMの展示の例

ただ情報を伝えるのではなく、訪れた方の好奇心をくすぐるコミュニケーションを目指し、コミュニケーションを軸にしたデザインが実現された空間に仕上がったようです。

マナーを教えるための「高尾山マナー講座」では、ムササビのキャラクターを使った思わず見たくなるアニメーションを制作、子どもにもわかりやすく押しつけがましくない見せ方を実現しました。ほかにも登山ルートを立体的に映像で見せるなどアニメーションを使った表現も多く、デザイナーの仕事の領域が広がっていることを実感させられた来場者も多かったと思います。


キャラクターを作りユーモアを交えマナーを説明したクリエイティブ

なお、TAKAO 599 MUSEUMは、2016年8月11日に開館1周年を迎え、年間来館者数は約30万人と好調。館内外サイン、展示物、グッズ、パンフレットなどを含めた総合的な空間づくりが評価され、「2016年グッドデザイン賞・ベスト100」にも選出されました。ほかにも「JAGDA賞」「NY ADC」「One Show」「Clio Award」「SDA優秀賞」など、国内外の賞を受賞しています。

じゃがいも焼酎「北海道 清里」をリデザイン

続いて、北海道清里町が造る日本初のじゃがいも焼酎のデザインを変更した事例を紹介しました。

長い期間をかけての町民との対話をもとにロゴを開発、パッケージも新しく生まれ変わらせました。予算がない中で工夫してパッケージをリニューアルしたエピソードは、今後同じようなプロジェクトに取り組む人のヒントになるでしょう。


リニューアルしたじゃがいも焼酎「北海道 清里」のパッケージ

まずは地域の人に理解してもらい地域の誇りと感じてもらえることが大切と、デザインのコンセプトなどを解説した冊子と焼酎とを配布した取り組みも興味深いものでした。

じゃがいも焼酎「北海道 清里」は、「NY ADC」「One Show」「グッドデザイン賞」など、国内外の賞を受賞しています。

質疑応答では、「地域のプロジェクトをどういう経緯で受託したのか」「デザイナーの範囲が広がっているが、特に力を入れた方がいいことは何か」といった質問に、大黒さんが真摯に答えました。

TAKAO 599 MUSEUMの事例は、写真や映像なども豊富に紹介され、そのクオリティに圧倒されるともに、実際にミュージアムに行ってみたいと思った人も多かったのではないでしょうか。

TAKAO 599 MUSEUM

大勢のお客様にご来場いただき、ありがとうございました。

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