多様な働き方の実現、育児や介護と仕事の両立、オフィスの省スペース化、交通費の削減など、社員と企業の双方にとってメリットの多いリモートワーク。しかし、日本においてはまだまだ一部の企業でしか活用されていないのが現実です。その理由として、リモートワーク導入にはデメリットも少なくないことが考えられます。では、具体的にはどういったデメリットがあるのでしょうか?今回は、リモートワーク導入を妨げる主なデメリットとその解決法について考察していきます。

リモートワークを導入するうえで問題となるデメリット

さまざまなメリットがあるリモートワークですが、デメリットも少なからず存在します。そのため、導入後にデメリット面が表出し、リモートワークが失敗に終わることもあります。そこで、導入前にリモートワークのデメリットを把握しておくことが必要です。企業と社員の双方の立場から主要なデメリットを見ていきましょう。

企業側のデメリット

マネジメントが困難になる

同じオフィス内で働いている場合には、上司は部下の動向を確認できるため、マネジメントはそれほど困難ではないでしょう。しかし、リモートワークは基本的にオフィス外での業務となるため、労働時間の管理や業務進捗状況の把握が難しくなりがちであり、マネジメントは容易ではないでしょう。

緊急時に不在で対応ができなくなる場合がある

リモートワークをおこなっている社員の在不在を確認するには時間がかかるうえ、万が一の事態が生じた際に不在であれば、対応が大幅に遅れてしまうリスクがあります。

社員側のデメリット

仕事とプライベートの境界線が曖昧になる

リモートワークをおこなう社員にとって最も大きなデメリットは、自宅での業務が中心となるため、仕事とプライベートの境界線が曖昧になってしまうことです。就業時間外でも連絡が来れば対応せざるをえないことがある一方で、就業中であっても、育児や介護などに時間を割かなければならない場合があり、人によってはオン・オフがはっきりしないということでストレスに感じる場合があるようです。

オフィスにいる社員とのコミュニケーションがとりづらくなる

仕事のアイデアは同僚や上司などとの雑談のなかから生まれることも珍しくありません。しかし、リモートワークは、基本的に一人きりで業務をおこなうため、ほかの社員と何気ないコミュニケーションをとることが難しくなります。その結果、場合によってはアイデアが煮詰まってしまうといったこともあるようです。

リモートワークの最大の懸念とは?

リモートワーク導入には、さらにもう1つ大きな懸念がつきまといます。それはセキュリティです。 セキュリティ関連製品・サービスの開発・販売をおこなっているトレンドマイクロ株式会社では、2018年12月13日、2019年の脅威動向を予測したレポートを公開しました。テレワーク(リモートワーク)の普及が法人セキュリティにおける新たな弱点になると予測されています。リモートワークは外部のネットワークを介して業務をおこなうため、サイバー攻撃者は、社内ネットワークよりもセキュリティ強度の低い、ホームネットワークを経由して企業に攻撃を加えるであろうことを指摘しています。

また、トレンドマイクロ社と同じくセキュリティ関連製品・サービスの開発・販売をおこなっているマカフィー社(米国)も、2019年12月17日に2020年の脅威動向予測を発表。このなかで、企業ネットワークへの標的攻撃が継続的に拡大すると予測しています。日本においても、今後、企業に対するサイバー攻撃は増加すると考えられ、特に社内ネットワークよりもセキュリティ強度の低いホームネットワークは、セキュリティ脅威に対する不安がさらに高まると推測できます。

リモートワークをおこなう際、具体的に考えられる主なセキュリティリスク

リモートワークをおこなう際の最も大きなセキュリティリスクは情報漏えいでしょう。 サイバー攻撃者にウイルスやワームといった悪意のあるソフトウェアを仕掛けられ、自宅PCからネットワークを通じ企業のネットワークに侵入されることで、機密情報や個人情報が抜き取られます。また、外出時に機密情報が入ったパソコン、モバイル端末を紛失したり、盗難にあうことにより物理的に情報を盗まれたりするケースもあります。
多くの場合、リモートワークをおこなう社員のセキュリティ意識が低く、「機密情報を暗号化せずに保存・送信」「バックアップをしない」「無線LANの設定不備」「業務用ツールのアップデートをしない」「ログイン方法を書いたメモを放置する」といったことからセキュリティが破られます。

リモートワークのセキュリティ対策としてやるべきこと

企業による情報漏えいは社会的影響が大きく、時には経営自体を大きく揺るがしてしまうこともあります。そこで、リモートワークを導入するうえで、セキュリティ対策としてやるべき3つのポイントをご紹介します。

1. セキュリティポリシーの策定

リモートワークを導入すると、従来のセキュリティポリシーでは対応が難しくなります。自宅やサテライトオフィス、コワーキングスペースなどで業務をおこなう場合のセキュリティポリシーを新たに策定しなければなりません。具体的には、リモートワークをおこなう従業員は、公衆無線LANサービスの利用は避けること、ツールやアプリの利用は必ずシステム管理者に申請し、許可を得たものだけをインストールすること、基本的にパソコン、モバイル端末内に重要データや機密書類などを保存しないようにすることなどがあります。
また、企業としては、リモートワークをおこなう従業員に対し、定期的にセキュリティに関する教育、講習会をおこなうことも忘れてはなりません。

2. ウイルス対策ソフトの導入

リモートワークで使用するパソコンにも必ずウイルス対策ソフトを導入するようにします。加えて、ファイアウォールの設定、業務で使用するツールを推奨されるバージョンにしておく、データの定期的なバックアップも欠かさずおこなわなければなりません。

3. クラウドサービスの活用

業務で作成したファイルやドキュメントなどをパソコンにだけ保存していると、消失するリスクがあるうえ、情報漏えいのリスクも高まります。そのため、データの保存、オフィスとのデータのやりとりはクラウドサービスを通じておこなうようにします。クラウドサービスを不安視する企業も少なくありませんが、多くのクラウドサービスはセキュリティ対策に通常の企業の何倍ものコストをかけているため、安心して利用できるといえるでしょう。

セキュリティ対策を明確に打ち出すことがリモートワーク導入成功のポイント

オフィス内であれば、強固なセキュリティ対策を整え、万が一の際にもすぐに対応できる体制をつくることが可能です。しかし、自宅となると、万全の体制をつくることはオフィスほど簡単ではありません。そこで重要となるのが、自社にあったセキュリティ対策を明確に打ち出したうえで、それを実践することです。
そのためには、これまでオフィス内だけで利用することを想定してつくられたセキュリティポリシーを改正し、自宅利用するパソコンへのウイルス対策ソフトの導入などを実施します。
そして、もう1つのポイントがクラウドサービスの活用です。自宅からオフィス内のサーバーに直接アクセスする必要がなくなることで、セキュリティリスクを大きく軽減できます。

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