株式会社プロダクション・アイジー様は、アニメーション作品の企画から制作までを一貫しておこなう、コンテンツ・プロバイダーです。同社では、『怪獣8号』第2期エンディングの3DCGシーンにおいて、After Effects内で Pencil+ 4ラインの編集を可能にするエフェクトプラグイン「PSOFT Pencil+ 4 Line for After Effects」を活用し、多彩なライン表現を実現されました。『怪獣8号』のCGプロデューサーである中村智樹様と、該当シーンの3Dアニメーションを担当された坂野友軌様に、製品導入の背景や具体的な活用方法、効果を伺いました。
アニメ『怪獣8号』第2期エンディング(該当シーンは1:10〜1:22)
ラインで多様な表現をするために、Pencil+ 4 Line for After Effectsが必要だった
中村様(以下、敬称略):
私たちは、プロダクション・アイジーのCGチーム「IG3D」として、主に当社と株式会社ウィットスタジオが制作する作品のCGパートを制作しています。作画アニメを制作するスタジオのCGチームのため、作画とCGの調和を心掛けた3Dアニメーションを制作しています。
坂野様(以下、敬称略):
私は業務委託で参加しているCGアニメーターです。該当シーンは、はじめに背景を含む全体のレイアウトや3Dアニメーションを整えた後、美術さんから送られてくる美術ボードをもとに、全体の質感を作っていきました。
美術ボード
坂野:
美術ボードを見た時、色ごとに印刷位置がずれているような「版ズレ」の表現と、ぶれや揺らぎのあるラフなラインを、3DCGの中でどう表現していくかがポイントだと感じました。その中でラフなラインを実現するためには、ストローク設定の異なるラインをいくつも重ねたり、奥行きに応じてディストーションを入れたりする必要があり、これらを普段使っている3ds Max版のPencil+ 4 Lineだけでおこなうのは現実的ではなかったので、体験版でテストをしてみたりしつつ、Pencil+ 4 Line for After Effectsの導入をお願いしました。
表現の引き出しが近くなったことで、発想にも変化が生まれた
(上)ラインあり (下)ラインなし
坂野:
ラインを重ねることで、画としての明瞭さが出ると同時に、像が定まりきらない不確定さも含んだ表現に仕上げることができました。
ベースの手法としては、ラインセットや検出方法、ストロークやディストーションの設定を少しずつ変えながら、レイヤーを複製してラインを重ねていく、というものです。合成方法もレイヤーごとに変更できるので、3ds Maxから出力する素材を増やすことなく、多彩な表現をコンポジション内で模索することができました。そこから発展して、塗り要素やパーティクル素材をラインで作成したりもしています。ライン表現の引き出しが手の届きやすいところに近づいたことで、今まではできなかった発想につながりました。
この他導入のメリットとしては、連番のマップをプリコンポーズで簡単に扱えるほか、キーフレームを管理しやすかったりプレビューができたりといった点が挙げられると思いますが、エクスプレッションやシェイプレイヤーとの組み合わせで表現ができたのも個人的には新鮮に感じた部分で、昔からあるAfter Effectsの機能と連動させることで思いつく表現も、この先あるのかもしれません。
車一つをとっても、状態の異なるラインがいくつも重ねられています。
「Pencil+ 4 Line」エフェクトだけでなく、「ディスプレイスメントマップ」等のエフェクトも必要に応じて追加されているとのこと。
テールランプをラインのみで表すなど、輪郭線に留まらない表現も見られます。
1本のラインが発光箇所の塗りとして使われた例
坂野様曰く「ラインでサブサーフェス・スキャタリング(※)をやったつもりの箇所」で、お気に入りとのこと。
※光が半透明な物体の表面を透過し、内部で散乱した後に表面から出て行く現象のこと
ランダムな要素を含むパーティクル素材をPencil+ 4 Line for After Effectsで作成した例
単一のPLDファイルをもとに、ラインセットごとにレイヤーを分けて合成。
シェイプレイヤーを用いたブラシ形状や、エクスプレッションなどを使用して連番のパーティクル素材を生成し、Trapcode Particularを使って散らされています。
活用できる機会を生かせば、他を寄せ付けにくい表現につながる
坂野:
一方で導入にあたって考慮すべき事柄があることも事実です。例えばアニメスタジオの場合は、撮影さんへの受け渡しをどのようにおこなうか。今回に関しては、BG一括で連番化したり等で対応しました。普通のライン表現であれば、3ds Max版のPencil+ 4 Lineでも十分可能なので、 追加の手間やコストをかけてでも実現したい表現があるかどうかが判断基準になってくるのかもしれません。今回のケースでは、CG作業が1カットしかないプロジェクトだったことも大きく影響しました。シーンで処理を統一する必要がない中だったからこそ、有効に使えた面はあると思います。
こういった側面もふまえて、個人的にはPencil+ 4 Line for After Effectsを、チーム全体で移行するようなツールだとは捉えていません。プロジェクトやカット単位で使えそうな時に活用するものだと思っています。Edit Modeの項目などを見ても、使ったり使わなかったりすることが容易なように設計されていますし、導入に障壁が伴うのであれば、その機能を生かした際には他を寄せ付けにくい表現にもつながると思うので、今後も機会があれば積極的に活用していくつもりです。
フォトリアルにはない要素にこそ、今後の発展の余地がある
坂野:
個人的には、ノンフォトリアルのCG映像において、テクスチャの張り込みでないストローク表現は、もっと探求されていい領域だと思います。テクスチャや陰影の付け方だけが差別化を図る手段ではないはずですし、フォトリアルにはない要素の中にこそ、今後の発展の余地みたいなものがあると思っています。一方でアニメーターとしては、普段作っているスタンダードな画面でも、ラインの重要度は変わらないと思っているので、今回のカットのように大胆に使うスタイルでなくても、ラインについては常に高い意識を持って取り組んでいきたいです。
アニメ業界に詳しいTooが、創作活動に専念できる環境を提供してくれる
中村:
業界の特性上、突発的な案件が多いのですが、Tooは柔軟に対応してくれるため、非常に助かっています。また、アニメーション業界に対する知識も豊富で、制作工程や現場のフローを理解しているため、とても心強く感じています。今後もより効果的な製品、サービスの提供やサポートを通じて、クリエイターが創作活動に専念できる環境を提供し続けていただければと思います。

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