「FONT TALK II(フォント トーク II)—文字をつくる。文字をつかう。—」セミナーレポート | イベント・キャンペーン | 株式会社Too

Too主催、Too curateセミナー「FONT TALK II(フォント トーク II)—文字をつくる。文字をつかう。—」が、Too本社の「The Gallery Too」(東京都港区虎ノ門)で開催されました。

「フォント」がテーマのディープなイベント「FONT TALK」の第二弾として、今回は文字そのものに焦点を当て深掘りする企画。アドビ システムズ 株式会社の書体デザイナー・西塚涼子さんによるフォント制作に関する話を聞けるとともに、「フォントかるた」制作チームによる解説のあと「フォントかるた」体験も楽しめるという、フォント好きにはたまらないイベントとなりました。

デジタルフォント制作の裏側を書体デザイナーが解説

第1部は、デジタルフォント制作の裏側を、アドビ システムズ 株式会社の西塚涼子さん、川島修治さんの掛け合いで解説しました。


アドビの西塚涼子さん、川島修治さん

書体デザイナーの西塚涼子さんは、アドビに入社してすぐ小塚明朝、小塚ゴシックの開発に参加、これまでにりょうファミリー、かづらき、ちどりなどのフォントを手がけてきました。

最近では、Google社と共同開発したオープンソースPan-CJK書体の、源ノ角ゴシック(Source Han Sans)、源ノ明朝(Source Han Serif)のフォントデザインを担当したことでも注目を集めています。

今回は、2017年4月にリリースされたばかりの源ノ明朝の開発エピソードを中心に、フォント制作に関する話をしていただきました。


日本語、英語、簡体中国語、繁体中国語、韓国語に対応し7ウェイトある源ノ明朝

源ノ明朝の大きな特徴は、日本語、英語、中国語(簡体、繁体)、韓国語が統一感のあるデザインで作られていること。多言語が併記された際にも違和感がなく、読む人にストレスを与えないようになっています。

源ノ明朝は、モダン過ぎずクラシック過ぎず、色々な場所で使われることを意識してデザインしたそうです。フォント制作においては「寝かせる」期間が必要とのことで、しばらく間をおいて新鮮な目で見ると修正しやすくなるそうです。


スクリーン表示を念頭に置きつつ様々な用途を意識してデザインされた


貴重な初期段階の手描きスケッチも公開

源ノ明朝はかなを大きめに作っていますが、縦組みの場合は自動的に2パーセント小さくなります。また、ひらがなは丸めに、カタカナは丸すぎないようにすることでバランスを取ってるとのことでした。


縦組みでは自動的にひらがなが小さくなる


ひらがなとカタカナとでバランスを取ってやわらかすぎない印象に

源ノ明朝の制作において一番大変だったのは漢字で、中国語(簡体中国語、繁体中国語)の漢字は西塚さんが作ったわけではないとはいえ、ディレクション的な作業に膨大な時間をかけたそうです。

中国のパートナーが、西塚さんのデザインしたパーツ(エレメント)を元に漢字を作成することで、デザインの統一感を保ちつつ共同作業を行いました。


西塚さんのデザインした文字のパーツ(エレメント)

日本と中国とで同じデザインの漢字を使う場合は、共有することでファイル容量を減らしています。しかし、同じ漢字でも国によって押さえるべきポイントが違うことが多く、別なデザインとなることも多いそうです。たとえば、中国では画数を大事にするため、女偏の「女」の「く」の部分が2画に見える日本のデザインは受け入れられないそうです。


同じ「的」でも日中ではバランスが違う


中国デザインの漢字と日本の漢字の比較表を1000枚くらいチェックしたとのこと

「あいえおんアイエオン」に濁点を付けられることや、EMダッシュを複数続けることで2倍、3倍のリガチャー(合字)になること、中国で「ビャンビャン麺」にしか使われないという最大画数の漢字「ビャン」も搭載されたことも紹介しました。


本来濁点のつかないひらがな/カタカナに濁点を付けられる


ビャンビャン麺屋を始めるときには使って欲しいという最大画数の漢字「ビャン」も搭載

ちなみに、Illustrator、inDesignで「⿺辶⿳穴⿰月⿰⿲⿱幺長⿱言馬⿱幺長刂心」と入力すると「ビャン」の漢字に変換されます。

源ノ明朝はAdobe Typekitの無償フォントとして使用できるほか、オープンソースとしてGitHubからも入手できます。


最後のあいさつは藤原定家の筆跡をヒントに西塚さんがデザインした「かづらき」フォントで

ネットで話題となり商品化「フォントかるた大解説」

第2部は、フォントマニアはもちろんデザイナーやクリエイターにも話題の「フォントかるた」制作チームの4人から、誕生のきっかけからフォントの見分け方まで解説していただきました。


「フォントかるた」制作チームはデザイナーとエッセイストの4人

仲間内での新年会で遊ぶため、自宅プリンターで手作りしたのが「フォントかるた」の始まりで、Twitterにアップされたところ大きな反響を呼び、商品として作ることになったそうです。


「フォントかるた」誕生は2017年1月7日

デザイナーを中心としたチームなので、そこからはプロの仕事としてしっかりとブラッシュアップしていきました。安いネット印刷でもカルタを作ろうとするとコストがかかるため、面識のある印刷会社に頼むことにしたとのことです。


印刷はグラフィックデザイナー北川一成による印刷会社GRAPH

「愛のあるユニークで豊かな書体」という文言は写研の写植書体見本帳に使用されているもので、写研から使用許可をもらったそうです。

フォントはOSにバンドルされているフォント、みんなが知っているフォントなど基本的なものを中心に選んでいます。ゴシック系が多いのは、フォントを選んだメンバーが仕事柄使うことが多いフォントに影響されているからといった裏話も披露されました。


使用書体の内訳のグラフ

読み札/取り札は48枚で、つまり48書体を書体見本で見分けるというかるたです。取り札は表は書体見本、裏には書体名が書いてあります。読み札には書体名と書体見本だけでなくその書体の特徴などの解説も書かれています。

遊び方はフォント名を詠みあげて、そのフォントの札を取るというシンプルなもの。書体名だけで札が取られない場合、解説文を読み上げる、読み札の書体見本を見せるという順にヒントを出していきます。

読み手なしで二人で対戦する「源平戦」もできますし、普通のかるたと違い一人でも楽しめます。


48書体で書かれた札を取り合って遊ぶ


ヒントを隠しながら一人でも楽しめる

制作チーム直伝の、フォントの見分け方の解説も興味深い内容でした。やはり「かな」に注目すべきで、かなの大きさや形を見極めるのがポイントとのことでした。

「あくまでも個人的な感想」と言いつつ「たれぱんだっぽいのがマティス」「ナールは人懐っこい」など感覚的な説明も面白かったです。


比較ポイントを細かく解説


「ナールは人懐っこい」など最後は感覚的に捉えることが必要な印象

「これが取れたらすごい! 超難問ベスト3」が紹介され、1位は「こぶりなゴシック」「游ゴシック」「ヒラギノ角ゴ」の「ゴシック三兄弟」でした。並べて比較すると違いは分かりますが、バラバラに並んだかるたで見分けるのは相当難しそうです。


超難問という「ゴシック三兄弟」

「フォントかるた」の詳細は公式Webサイトもぜひご覧ください。かるたに選ばれた48書体から人気のフォントを選ぶ「第1回FKS48総選挙」の結果も発表されています。

フォントかるた公式サイト

フォントかるたオープン体験会

「フォントかるた」の解説と書体の見分け方を聞いたあとは、いよいよ実戦です。フォントかるた制作チームの司会進行とサポートにより、事前申し込みで参加表明いただいたみなさんと、アドビの西塚さん&川島さん、Tooのスタッフも参加しての体験会を行いました。


4つのテーブルに分かれ体験会が開催

まずは、各自が自由に札を裏返してフォント名を確認できる、フォント名を覚える時間が与えられます。札の位置で暗記されないようにシャッフルしたあとゲームがスタートします。

読み札を「愛のあるユニークで豊かな書体」と詠むというお約束で笑いが起きたあと、みなさん遠慮気味に始まった体験会でしたが、各テーブルから起こる拍手や歓声も徐々に大きくなって行きました。


フォントかるた制作チームが司会進行とサポート


見事お手つきなしで当てる人も少なくなかった


和気あいあいと楽しむ参加者たち


各テーブルの上位者が集まり事実上の決勝戦

2回線は各テーブルの上位者が集まっての優勝決定戦(!?)。ギャラリーの見守る中での白熱の頂上決戦は、僅差ながらパズル雑誌をデザインしているという来場者の女性に軍配が上がりました。

欧文フォントのいろは

1部と2部の間には、「欧文フォントのいろは」と題し、欧文フォント導入についてTooからの提案を行いました。


MD商品部・濵田より欧文フォント導入の提案

同じHelveticaという名前のフォントでも、ソフトウェア付属、OS付属、プリンタ付属、無償ダウンロード、市販のものなど複数種類が存在しており、形状も微妙に違うといった問題が欧文フォントにはあります。社内の複数端末で欧文フォント環境を揃えたい、ライセンス的に問題の無い正規の欧文フォントが使いたいといった声も増えています。

購入から管理まで、フォントに関する不安な部分をTooがサポートするので、気軽にご相談くださいといった内容を紹介しました。Adobe Typekitはもちろん、9,000書体以上の欧文/多言語フォントを年間契約で利用できる「Monotype LETS」のご提供や、輸入代行も行っています。


欧文フォントのお困りごとに対するTooからの提案

刺激的だったフォント好きのためのイベント

日々の仕事のスキルアップに直結するようなテーマではなく趣味色の強いイベントでしたが、フォント制作のヘビーな現場の裏話をフォントデザイナーから直接聞けたり、「フォントかるた」を商品化までこぎつけた制作チームのパワーに触れられたりと、来場者のみなさんはとても刺激的な時間を過ごせたのではないかと思います。

参加申込みの電話が当日まで鳴り止まなかったり、外部取材が入ったりと開催前から注目度も高いイベントでした。今後もこのようなクリエイターの知的好奇心を刺激するようなセミナー、イベントも開催していきたいと考えていますのでご期待ください。


記念グッズをプレゼントするジャンケン大会も盛り上がりました


記念グッズのトートバッグやTシャツはエプソンのプリンタで作成

大勢のお客様にご来場いただき、ありがとうございました。

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