
生成AIやSNSが身近になった今、生徒たちは日常的に大量の情報やデジタル技術に触れながら生活しています。しかし、デジタル社会を生きるために必要なのは、単にツールの使い方を知ることではありません。自ら考え、他者と対話し、自分なりの答えを見つけながら社会と向き合う力が求められています。
本セッションでは、和光高等学校 情報科教諭の小池先生が、高校1年生の「情報Ⅰ」で実践したデジタルシチズンシップ教育を紹介。生徒がスマートフォンや生成AIとの向き合い方を探究し、その学びの成果をAdobe Expressで表現するまでのプロセスについてお話しいただきました。

小池先生は、主体的で深い学びを実現するために、次の3つを重視しているといいます。
①生徒の実態から始める
②内容と順序、そして3つの対話で「学び」をデザインする
③創造的な学習活動で自分の学びを表現する
デジタルシチズンシップの学びを深める上で、小池先生は「生徒が自分ごととして課題を捉えられることが一番大事」だと言います。
そこで、授業を設計する前に、生徒たちのスマートフォン利用状況やSNSとの関わり方、生成AIの利用実態を調査したとのこと。その結果、スマートフォンとの距離感に課題を抱える生徒が多いことや、SNSで後悔した経験を持つ生徒が多数いることが判明。また、高校入学前からほぼ全員が生成AIを利用している一方で、利用規約を十分に確認せず使っている生徒も少なくありませんでした。

こうした実態を踏まえ、生徒自身が「自分たちの問題」として考えられる授業づくりを進めていきます。
そして、次の「3つの対話」を軸に学びを設計することで、生徒たちが自らの考えを深めることができるとのことです。
①世界から学ぶ:海外のスマートフォン規制などの事例
②自分から学ぶ:スマートフォン利用状況やセルフチェック
③他者から学ぶ:Padletでクラスメートの意見を見る
また、Claudeを活用して「16歳の生徒が90歳まで生きた場合、スマートフォンによってどれだけ自由時間が失われるのか」を可視化するシミュレーションを実施しました。数字として示されることで、生徒たちは自分のスマートフォン利用を客観的に見つめ直すことができます。

デジタルシチズンシップを深める中で、欠かせないテーマが「生成AI」です。
同校では、独自の生成AI活用ガイドブックをリリースしました。入学式で保護者に配布するなど、家庭との連携も深め、情報科の教材としても使用することで教育を強化しています。
小池先生は、生成AI教育で大切にしていることとして、次のように語りました。
「答えを出す機械として使うのか、思考を深めるパートナーとして使うのかで、生徒にとっての価値は大きく変わります」
授業ではガイドラインを学んだ後、Geminiを活用したハンズオンを実施。そして、「AIが社会のどのような分野で活用されているのか」「どのようなメリットや課題があるのか」「社会へどのような影響を与えるのか」--こうしたテーマを考えるため、小池先生オリジナルのカードを使用したディスカッションを通じて、生徒たちは多様な視点からAIとの向き合い方を考えていきました。実践・対話・探究を繰り返しながら、理解を深めていったのです。

十分な対話と探究を重ねた後、生徒たちはAdobe Expressを活用した15秒の動画制作に取り組みました。小池先生は、学びの成果を評価する上で、生徒自身が「何を表現したか」を重視しているといいます。
全6コマで動画を制作。完成した作品はクラス内で共有するだけでなく、文化祭などで公開する機会も設けています。
小池先生はAdobe Expressについて、「生徒の創造性を加速するツール」だと評価しています。その理由として挙げたのが、「低い敷居」「広い間口」「高い天井」です。

まず、直感的な操作で誰でも始めやすいこと。デザイン経験のない生徒でもすぐに制作に取り組めるため、授業でクリエイティブ制作を取り入れることの敷居が下がったと言います。一方で、動画やポスター、Webページなど幅広い表現が可能で、生徒一人ひとりのアイデアに応じた作品づくりができます。さらに、こだわればどこまでも表現を追求できるため、創作意欲の高い生徒にも応えられる環境が整っています。
また、クラスルーム機能によって教員が生徒の進捗状況を把握しやすく、一人ひとりに応じたサポートを行いやすい点も教育現場との親和性が高いポイントとして紹介されました。
今回の実践で特徴的だったのが、「アーティストステートメント」の取り組みです。
生徒たちは作品を制作するだけでなく、「なぜそのテーマを選んだのか」「どのような思いを込めたのか」を文章としてまとめました。背景や意図を言語化することで、生徒自身が学びを振り返ることができるだけでなく、教員も思考のプロセスを把握しやすくなります。
紹介された作品の一つでは、認知症の祖母への思いをテーマに、「AIによって思い出を残し続けられる可能性」を表現していました。Geminiで生成した画像を活用しながら、「忘れてしまうこと」と「記憶をつなぐこと」をテーマに制作された作品です。作品だけでは見えない背景を知ることで、見る側の理解も深まり、より豊かな学びにつながっていました。
授業後の振り返りでは、「スマートフォンとの付き合い方を考えるようになった」「他の人の作品を見て悔しくなった」「コンピューターを用いて作り上げる楽しさを知った」といった声が寄せられました。こうした言葉からも、生徒たちが単なる制作活動ではなく、自分自身と向き合う学びとして取り組んでいたことが伝わってきます。
今回の授業では、生徒たちはスマートフォンや生成AIとの向き合い方を考え、その学びをAdobe Expressで作品として表現しました。
その一連のプロセスを通じて、生徒たちは自らの学びに誇りを持つことができたのではないでしょうか。
Adobe Expressを活用した創造的な学習活動は、生徒を「学びの受け手」から「創造的な作り手」へ導く実践として、多くの教育現場にヒントを与える内容でした。
■関連URL
Adobe Express詳細:https://www.too.com/adobe/use/express/
Adobe Firefly詳細:https://www.too.com/adobe/use/firefly/
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記事は2026年9月18日現在の内容です。