Apple Business ManagerにAPI機能登場!どんなことができる?設定方法は?

ABM に公式 API が登場!
Apple 製品のライフサイクル管理を支える中核的な存在が、Apple Business Manager(ABM)です。
Apple 正規販売店から購入したデバイスを自動的に ABM へ登録し、Jamf Pro や Kandji などの MDM と連携することで、手間のかかる初期設定を大幅に効率化できます。
ただ、これまでは ABM に関する操作や情報取得は Web 画面を通じた手動操作に限られており、外部システムとの連携や自動化には限界がありました。
そんな中、ついに ABM に公式 API が登場しました!
一体どんな作業が楽になるのでしょうか?
この記事では、ABM に登場した新しい API について、設定のステップや活用例について解説していきます。
目次
ABM API アップデートの概要
2025年、Apple は待望の機能拡張を実施し、Apple Business Manager / Apple School Manager 向けに公式 API を提供開始しました。
これにより、ABM 上の操作をプログラムから直接実行できるようになり、これまで手動でしかできなかった以下のような処理が API 経由で自動化可能になっています。
・ABM に登録されたデバイス一覧や詳細情報の取得
・デバイスの MDM 割当先の変更/解除
・Jamf Pro や資産管理ツールとのリアルタイム連携
これまで煩雑だった ABM の運用が、他システムとの統合を通じてより柔軟かつ効率的に行えるようになりました。
改めてとなりますが、この記事ではABM に登場した新しい API について、以下の観点から詳しく解説していきます。
・ABM API のアップデート内容とできること
・API を実際に使うためのステップ(JWT 作成〜リクエスト送信)
・Jamf Pro との具体的な連携活用例
Apple 製品の導入・管理に関わるすべての IT 担当者、情シス部門の皆様に、スマートな管理運用のヒントとなれば幸いです。
それでは、早速みていきましょう!
APIを使えると何ができるようになる?
2025年に公開された Apple Business Manager API では、以下の操作が可能になりました。
操作内容 |
エンドポイント |
---|---|
登録済みの MDM サーバ一覧を取得 |
GET /v1/mdmServers |
ABM に登録されているすべてのデバイスを取得 |
GET /v1/orgDevices |
シリアル番号を指定してデバイスの詳細情報を取得 |
GET /v1/orgDevices/{id} |
特定デバイスの現在の割当先 MDM サーバ情報を取得 |
GET /v1/orgDevices/{id}/relationships/assignedServer |
特定の MDM サーバに割当中のデバイス一覧を取得 |
GET /v1/mdmServers/{id}/relationships/devices |
指定した MDM へのデバイス割当、または割当解除を実行 |
POST /v1/orgDeviceActivities |
デバイス割当などの操作の結果や進行状況を確認 |
GET /v1/orgDeviceActivities/{id} |
API 経由でデバイス情報を取得・更新できるようになったことで、ABM と他システムとの統合運用が現実的になりました。
現時点では、Jamf Pro のデバイスインベントリとの連携や自社の資産管理システムや棚卸ツールとの連携が想定されそうです!
API 利用までの実践手順
それでは、これらのAPIは一体どうすれば使えるようになるのでしょうか?
Apple Business Manager API は、OAuth 2.0 ベースの認証を使っており、使うには少し準備が必要です。
以下に、実際のステップを詳しく解説します。
① API アカウントを作成する
ABM または ASM の管理者ユーザーのみが API アカウントを作成できます。右上の+から作成します。

「秘密鍵を生成」を選択します。

名前をつけ、APIアカウントを作成します。

アカウントの準備はこれで完了です。

② JWT(JSON Web Token)の生成
Apple の API は JWT を使ってアクセストークンを取得する仕組みです。macOSの場合の手順をご紹介します。
1.作業用フォルダに Python 仮想環境を作成します
python3 -m venv abm
source abm/bin/activate
2.ABM からダウンロードした秘密鍵(拡張子は .pem)を作業用フォルダに保存します
3.Apple 提供の JWT 生成スクリプト Create a client assertion(拡張子は .py)を作業用フォルダに保存します
4.スクリプトの中で定義された変数を編集します
private_key_file:2. で保存した秘密鍵 .pem のファイル名
client_id:ABM で作成した API クライアントの ID
team_id:client_id と同じ値
key_id:ABM で作成した API クライアントの秘密鍵の ID
5.必要なライブラリをインストールします
pip3 install authlib pycryptodome
6.スクリプト実行で JWT を生成します
上記 3. で abm_api.py というファイル名でスクリプトを保存していた場合は、以下のように実行します。
python3 abm_api.py
作業用フォルダ内に client_assertion.txt というファイルが生成され、「eyJ……」から始まる文字列が格納されていると成功です。
7.仮想環境を終了します
これ以降では Python 仮想環境は使用しませんので終了しておきます。
deactivate
③ アクセストークンを取得
②で作成した JWT を使用して、アクセストークンとの引き換えを実施します。
成功すると、
のように JSON 形式で結果が返ってきます。
ここで取得したアクセストークンは次の④で使用します。
アクセストークンの有効期限は1時間なので、もし期限が切れてしまった場合は再取得が必要です。
④ ターミナルから API にリクエストを送信します
例)Mac のシリアル番号を指定して、インベントリを取得する
成功すると以下の結果が返ってきます。
例)シリアル番号:XXXXXXXXXXX の割当先の MDM サーバを AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA にする
(割当先の解除は activityType を UNASSIGN_DEVICES に変更する)
このように、curl + Bearer トークンでAPI操作が可能です。
ABM APIの活用シーンは?
Apple Business Manager API を活用することで、これまで手作業や表計算ソフト、属人的な運用に依存していた Apple デバイス管理業務を、自動化・統合管理・トレーサビリティのある運用へと進化させることができます。
ここでは、2025年夏時点で実現可能な具体的なユースケースをご紹介します。
ユースケース:Jamf Pro インベントリと ABM 購入日情報の連携によるライフサイクル管理
目的:デバイスの購入日をもとに交換・リース返却のタイミングを明確化する
Jamf Pro に Apple デバイスが登録されると、自動的にインベントリ情報が作成されますが、購入日情報は Jamf Pro 単体では自動取得されません。
そのため、リース期間や更新タイミングの管理には、別途スプレッドシートや人的な確認が必要でした。
この課題に対して、ABM API の GET /v1/orgDevices/{id} エンドポイントを使い、シリアル番号に対応する orderDateTime を取得し、その値を Jamf Pro の「購入日」項目に反映させることで、以下のような自動化が可能になります:
想定フロー
1. Jamf Pro にデバイスが登録されたタイミングを Webhook で検知
2. 該当デバイスのシリアル番号をもとに、ABM API から詳細情報を取得
3. 取得した orderDateTime を Jamf Pro の「購入日」フィールドに書き込み
4. 購入から◯年経過したデバイスをスマートグループで抽出(例:リース終了の3ヶ月前)
5. 自動的に Slack 通知や管理者アラートを送信


ポイント
・Jamf Pro に登録された「日付」を基準にしてもある程度の管理は可能ですが、Jamf Pro からインベントリが削除された場合など、一貫した基準日が取得できないリスクがあります。
・一方で、ABM 上の orderDateTime は、デバイスが ABM に存在し続ける限り参照可能な固定情報です。
このように、ABM と Jamf Pro を API でつなぐことで、正確かつ持続的なライフサイクル管理が実現できます。
まとめ
Apple Business Manager に API が追加されたことで、Apple 製品の運用における「データ取得の壁」や「操作の属人性」が大きく解消されました。
Jamf Pro などの MDM と連携することで、以下のような変化が期待できます。
・棚卸・リース更新の業務を正確かつ効率的に管理
・部門単位での MDM 割当・運用の自動化
・手動による UI 操作を排除し、運用コストを削減
・データに基づくライフサイクル管理の精度向上
API 導入には一定の技術的準備は必要ですが、導入メリットは非常に大きく、中長期的に Apple デバイス運用の品質と効率を向上させる重要な武器となるでしょう。
参照リンク:Apple Business Manager API ドキュメント(公式)記事は2025年7月14日現在の内容です。
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