最近は自治体でもイベント情報や観光案内、移住支援、防災情報などを、Webサイトに加えX(旧Twitter)やInstagramなどのSNSで発信することが当たり前になってきました。紙の広報誌やポスターだけでは届けられない層にも情報を届けられる上、コストもそれほどかからないのがメリットです。
しかし、そういったとても便利なツールを気軽に活用できる一方で、せっかく頑張って発信しても、「どれだけの人が見てくれたのか」「効果はあったのか」が分からないままになっていませんか?そんなときに役立つのが、データを読み解く力です。
この記事ではSNSやWebサイトなどのデジタルメディアでの、情報発信の運用における注意点と、必要なスキルについて解説します。 


自治体とデジタル発信のいま

従来の自治体広報は「広報誌」や「回覧板」などが中心でしたが、近年はWebサイト・SNS・アプリ・デジタルサイネージが主流になっています。主な理由は以下のようなものが挙げられます。

タイムリー性が高い

災害情報やイベント情報をリアルタイムで発信できます。特に災害情報等は生命に関わることですので、高いタイムリー性が求められる情報の一つです。各種イベント情報でもリアルタイム性があれば、ちょうど近隣にいた人たちに情報が届けられるなどのメリットがあります。

コスト効率が良い

紙媒体の印刷・配布コストを削減。コスト削減は住民の皆さんに大きく貢献できる指標の一つです。

リーチ拡大に貢献できる

スマートフォンを通じて幅広い世代に届けられます。特にSNSは事務的な情報提供はもちろん、いわゆる地元に対する住民のエンゲージメントを高められる手段としても有効です。

最近ではX(旧Twitter)、Instagram、Facebook、LINEなどのSNSを住民層に応じて使い分けて、情報が届くような工夫をしています。

また、「公式アカウントの中の人」 を前面に出したユーモラスかつ親近感ある発信も増加しているようです。例えば、相模原市や和歌山市のように「自治体キャラの個性」でフォロワーとの距離を縮める事例も注目されています。


プロモーション施策を外部に任せきりでは不十分

情報発信をするには、その源泉となるイベントなどの行政施策が必要です。その行政施策を成功させる手段として、プロモーション施策を実行する必要がありますが、その運用を外部の業者に委託している自治体も多いと思われます。
もちろん、専門家の力を借りるのは大切ですが、任せきりになりすぎると施策の効果判定が曖昧になりがちです。そのため職員側にも最低限のマーケティングの知識があれば、もっと良い結果につなげられるでしょう。

たとえば…

  • 提案を受けたときに「これは効果がありそうだ」と判断できる
  • 施策の良し悪しが理解できることにより、改善スピードを上げられる
  • 限られた予算の効果を最大化できる

つまり、「実務は任せる」+「効果を自分で判断できる」という状態が理想です。


成功パターンと失敗パターン例

ここで効果を自分で判断できている例をご紹介します。(※あくまで一般的なケースをもとにしたイメージです。)施策の対象者には住民はもちろん、自治体外部の方もいらっしゃいますので、ここでは生活者と呼ぶことにします。

成功パターン

◯◯市の観光課のAさんは、観光サイトのアクセス状況を外部のマーケティング会社に確認してもらったところ、県外から特定の観光スポットのページに多くのアクセスがあることがわかりました。

そこで、そのスポットの何が良いのかをもっと深掘りしていく必要性を感じ、外部のマーケティングをおこなう会社へさらなる分析の依頼をしました。

調査の結果、検索サイトからのアクセスやSNSからの流入が多いようです。Aさんは、どのようなキーワードで検索して訪問したユーザーが、ページを長く見ているのか、また関連ページへ移行しているのかを数値で理解できるよう、業者にレポートを依頼しました。こういった分析結果から、生活者が何を求めているか=ニーズを想定しました。

その結果を元に、ニーズに合致するような特集記事を作り、SNSでも写真や動画を発信した結果、サイト訪問数や観光客の増加につなげることができました。

「数字が示す強み」をうまく活かし、生活者視点で施策を実行できた例です。

失敗パターン

△△市の観光課のBさんも同様にアクセスの増加に気づきました。そこでWebサイトに記載されているアクセス数などのデータや数値内容を抽出し、SNSを毎日更新することにしました。しかし、観光客の増加にはつながりませんでした。

これは、やみくもに情報を発信してしまい、「誰に何を届けたいか」「観光客が何を望んでいて、どうすればニーズに応えられるか」生活者視点で考えられていなかったことが原因と言えるでしょう。



持っておきたいマーケティング視点



これらの活動はいわゆるWebマーケティングと呼ばれる活動の一部です。プロモーション施策において特にWebサイトの役割は大きく、的確な運用が求められます。

運用の実務は外部に任せていたとしても、全体の運用を管理するのは依頼側の職員である必要があります。そのため、ある程度Webマーケティングの基礎知識がないと、発注者側として成果を出すための全体的な運用がしにくくなるでしょう。 難しいマーケティング用語をすべて覚える必要はありません。まずは次のような基本的な視点を持つだけでも、発信の効果は変わってくるでしょう。

  • ユーザーの動きを見る(どこから来て、どこで離脱しているか)
  • 4つの視点で考える(集客/回遊/成果/リピート)
  • 数字の背景を想像する(この数字の裏にどんな行動や心理があるのか)

マーケティング視点での考え方は、業務を遂行するすべての方々に必要と言っても過言ではありません。広報・PR担当はもちろん、営業職の方にも役立つ考え方です。最近ではWebマーケティングの基礎知識が取得できる資格もあり、新人教育の一環として受講させている企業もあるようです。


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初めての方でもWebマーケティングの基礎知識を体系的に学べ、すでにWebサイト運営を担当している方には知識の整理になります。初心者向けにもおすすめの講座です。



Webマーケティングを始めるにあたって、「SEO」や「広告」といったわかりやすい施策やツールを覚えることが、一般的となっています。

施策やツールを覚えることは、Webマーケティングでも「手に職をつける」うえで大前提にはなりますが、その先にある「サイトが自治体にもたらす影響」までは、なかなか気が回らないのではないでしょうか。

Webマーケティングをおこなう上で、全体を俯瞰して把握できるスキルは非常に重要です。技術的な面を含めた全体像を把握できるからこそ、やるべきこと・間違っていることが見えてくるものです。

特長

  • ツールの操作だけでなく「分析の考え方」に重点を置いた内容にしています。
  • 実際のユーザーフローに沿った分かりやすい解説
  • 集客から成果まで、一連の分析ポイントを体系化

自治体の観光やイベント、広報業務にもすぐ応用できる内容です。

これからの自治体広報・PRは、自治体施策に対して「施策の情報を単に発信する」だけでなく「プロモーション施策として捉え、施策を通して生活者のニーズを予測しサイトの利用効果を最大化していく」ことが当たり前になっていきます。 そのためにも、まずは「数字の見方を知る」ことから始めてみませんか?

その一歩が、生活者の皆さんにもっと届く情報発信につながります。


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