HR・採用力向上のためのデバイス選択制ガイド ~従業員満足度を上げる“デバイス戦略”~

給与や働き方の制度に関しては、多くの会社で“そこそこ良い”水準に揃ってきた中、エンジニアや若手の採用に苦戦していませんか?
業務内容やビジョンへの共感、待遇など、人々が会社を選ぶ基準には様々な要因がある中、意外と採用側が見落としがちなポイントがあります。
それは、毎日触れる「デバイス体験」。
特に技術職採用においては大きな要素になったりします。
中途採用はもちろん、学生時代にMacやiPadを使っていたという若年層も年々増えている今、新卒採用でも例えばMacの選択肢は応募のブースターになりえます。
採用戦略を考える時には、業務デバイスについてもぜひ見直してみませんか?
目次
採用競争に勝つ“デバイス戦略”とは
人は、自分がいちばん調子よく働ける道具を選ぶのが一番力を発揮できます。
軽い靴では長く遠くまで歩け、合わない靴だと歩くのがすぐ嫌になりますよね。
それと同じで、PCはまさに業務の足元です。
慣れたデバイスを前提に、入社初日から“ほぼ何も考えずにPCを使える”状態を用意できれば、中途入社の応募や承諾のハードルがほんの少し下がり、立ち上がりも目に見えて早くなります。
良いスペックのPCや、好みでOS選択可能な環境を提供することは、「なんとなくの福利厚生」ではなく、採用と従業員体験(EX)を底上げする重要な設備投資なのです。
実際の事例企業の声
Macを選択肢に取り入れた、お客様の声を引用で紹介します。
株式会社ヨックモックホールディングス 様
ただ、やはり「Macも選べるようにしたこと」には大きな価値があると思っています。Macを使いたくても使えなかった従業員を喜ばせることができただけでなく、新入社員に「とても充実している」と言ってもらえるので、会社として従業員が働きやすい環境を構築するのにどれだけ力を入れているかの1つの現れになっています。さらに、学生向けに会社説明会を行うときに「当社では業務デバイスをWindows PCとMacから選択できます」と伝えると学生の受けが良いことから、人事部門からも喜ばれています。
キャディ株式会社 様
当社のようなスタートアップ企業とMacは、人材確保の面でも相性が良いと思います。というのも、当社ではベンチャー企業やスタートアップ、外資系企業など、前の会社でMacを使っていたという方が多くジョインされます。そのため、従業員選択制を採用してMacを使える環境を整えておけば、これまでの環境と同じように当社でも業務を行ってもらえます。Windows PCだけしか貸与していないと人材の流入経路が限られますが、WindowsもMacもどちらでも使えるようにしておけば、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を確保でき、かつ会社に入ってからも使い慣れたデバイスで100%のパフォーマンスを発揮してもらうことができます。
採用への影響はすぐに目に見えにくいものですが、取り組んだ企業様では確実に喜ばれている、という実感をコメントでいただいています。
開発ツールの選択肢も重要ですが、まず「希望するスペック以上のPCが支給される」ことは前提条件とされます。
とはいえ支給PCのスペックは企業によって様々で、業務内容によって必要なパワーも全く異なるのが悩ましいポイントです。
入社したらメモリ数・ストレージの少ない古いモデルを支給され、初日にモチベーションが低下……とならないように、ぜひPC調達の際は具体的な業務と想定利用環境を伝え、モデルやカスタマイズの提案を受けるようにしましょう。
ちなみに、Macの人気モデルは弊社で在庫を用意しています。
企業では特に、こちらの在庫ページの「USキーボード」欄に◯が付いているモデルがよく選ばれていますので、他社で選ばれているPCスペックが知りたい方は参考になさってください。
最後の章で、弊社で取り入れている標準機も紹介しています!
実際の開発チーム・エンジニアの一部意見として、下記のような率直なコメントも伺いました。
支給PCのスペックや使える開発ツールが募集要項に記載されていると安心する。
ツール一覧やデバイス環境で開発思想をイメージできる。応募の時の参考にする。
前職でMacを使っていたので、面接でどんなデバイスが付与されるかは最後に聞く。スペックに気を配ったものだったり、選択可能と回答されたら、技術環境への投資意欲を感じられる。
こうした観点は人事側からは重視しないことも多く、想定外のところで入社意欲を下げていた…という事態も起こりがちです。
逆に開発環境にはすでに十分投資できている、という企業はぜひ、採用の場でもアピールしていくことをおすすめします!
応募率・承諾率とエンゲージメントを動かす見えないポイント
中途入社の社員には、エディタやショートカット、キーボード配列、開発ツールなど、身体に染みついた“作業のリズム”がある人が多くいます。
馴染んだ環境をある程度再現できる会社は、初日からのパフォーマンスが読みやすく、候補者にとっても「ここならすぐに力を出せそうだ」という安心感になります。
求人票に“PCは指定機種から選べます(Macも可)”と一行添えるだけで、応募ボタンを押す気持ちの傾きが変わります。
自分がその現場で仕事をすることが具体的にイメージしやすくなると、いざ内定が出た後の承諾率にも影響するのではないでしょうか。
入社初日の体験も、中途社員向けにはしっかりデザインしたいところです。
使い慣れたOSのPCを開き、ネットワークに接続したら必要なアプリとポリシーが自動で入るようになっていれば、入社から30〜60分で業務を始めるべく、周囲とのコミュニケーションを始められます。
逆に箱を開けてから半日自分でキッティング、慣れないOSで文字を打つにも苦戦……という初日を過ごすことになると、業務への期待は少し冷め、上司や情シスは質問対応などで慌ただしくなるでしょう。
どれくらい整ったオンボーディング体験を提供できるか、はITの面でもたくさん工夫の余地があるのです。
Macをゼロタッチでセットアップする方法
採用コストとデバイス投資の検討
デバイスを選択できるようにすること、選択肢にMacBook Proなどの魅力的なモデルを入れることは、それ単体ではコストが嵩んで見えるかもしれません。
ただ、採用単価や離職コストと同じテーブルに乗せると、基準が変わります。
PCの平均構成を上げることで内定承諾率が数ポイントでも上がれば、追加の募集や選考のやり直しが減り、結果として数百万円単位のコストが浮く、というのは十分あり得る話です。
デバイス差額回収の試算
例えば、年間で20名を採用し、ひとりあたりの採用単価が100万円だとします。
仮にPC差額がひとり10万円(18万→28万)とすると、20名分として200万円。
応募率や承諾率の上振れで不要になる追加募集が2名分(200万円)なら、その時点で追加する社員分の差額は回収できると考えられます。
ちなみに、高価と思われがちなMacですが、予算28万円であればメモリやストレージを上位カスタマイズしたMacBook Proも選択できます。
ビジネスサイドの社員はMacBook Airなどを主な選択肢とすることで、差額は更に縮められるでしょう。
※価格は2025年10月2日時点の情報です。変更となる可能性がありますので、都度お見積りにてご確認ください。
このように短期でも十分な投資対効果は見込めますが、デバイスへの投資は半永久的に、業務効率化やエンゲージメント醸成といった多くの波及効果が期待できることもポイントです。
40人のチームで、高スペックなデバイスに変更して一人当たりの業務効率を5%向上した場合、単純計算で2人追加で採用したのと同じ効果を生みます。
デバイス起動やアプリ立ち上げにかかる時間、再起動の発生率、バッテリー性能など、スペック差の積み重ねは意外と大きく響いてくるものです。
こうしたIT領域投資による採用メリットは、DX人材・AI人材といった、企業によって取り合いになる高度人材により強く響くことも見過ごせません。
金額などは仮定の話ですが、前年の実績と並べて確認すれば、取り組む意義が少し見えてくるのではないでしょうか。
離職のコストも静かに重いテーマです。
欠員の機会損失、新規採用と再オンボーディングの工数を積み上げると、一人あたりの離職が会社に与えるダメージは見える数値以上になります。
デバイスの最低選定ラインを向上したり更新サイクルを前倒しするだけでも、目立たない不満(PCが遅くて重い、設備投資されていない)を減らせます。
仮に離職が年間で2~3人減れば、保全できる金額は数百万円規模。
離職はデバイスだけで防げるものではありませんが、社員の働く環境への投資として俯瞰してみると、投資コストは小さく見えてくるのではないでしょうか。
従業員選択制(CYOD)を進めるには?
「選べるPC環境」、すなわち「Choose Your Own Device(CYOD)」は、すでに海外ではある程度確立されている制度です。
会社が選んだカタログから、自分の業務デバイスを選択します。
少し古い内容ですが、以下はJamf社の調査です。
「回答者の87%が業務で使用するデバイスを選択できることは重要である、と答えています。」
こうしたトレンドを受け、5年ほど前から、日本でもこのCYODを「従業員選択制」として取り入れる企業が増えています。
まずは上記の調査や先に挙げた事例を社内に展開し、検討を進められると良さそうです。
ちなみに、類似用語である「Bring Your Own Device(BYOD)」は、社員が所有しているデバイスを仕事でも利用させる制度です。
設立年数の短いスタートアップ企業などでは取り入れている例もありますが、スマホ等でも管理が煩雑となりがちですし、メインデバイスのPCをBYODにするとセキュリティ担保や管理運用面のハードルが非常に高くなることは認識しておけると良いでしょう。
Windows PCの環境にMacを導入する場合のステップや考えるべきことを、記事「企業・教育機関でWindowsからMacへ乗り換えたい!実際どれくらい大変?考えることをまとめてみた」でまとめているので参考になさってください。
Macの導入が初めて、という企業には、伴走して制度設計をサポートするコンサルティングサービス「Mac PoCプログラム」をご用意しています。
従業員選択制に取り組みたい方は、ぜひご相談ください。
もちろん、「選べる」環境は、「何でもOK」ではありません。
カタログ準備はある程度入念に行わなければ、コストが大きく膨れてしまうでしょう。
数種類の標準機を用意し、業務に応じてモデルに下限と上限を設けることで、ビジネスサイドに選択制を取り入れてもある程度コストセーブが図れます。
Windows PCとMacの、管理しやすいOSから標準機(新卒や、希望がなかった人へ貸与する端末)を設定することがおすすめです。
Tooのデバイス選択制度と標準機種の紹介
ちなみに・・・弊社、Tooでは、Macの標準スペックと上位スペックは下記のように設定しています。(2025年10月現在)
少し前まではチームごとにスペックを自由に選択していましたが、標準機の設定により年間数百万円の出費削減につながりました。
どうしても業務上必要な社員はWindows PCを利用し、原則はMacが標準機です。
【株式会社TooのMac標準機(参考)】
・標準機 A:基本業務モデル(基本的な作業向け)
MacBook Air 13inch
M4
16GB / 256GB
・標準機 B:開発・制作モデル(エンジニア・デザイナー・動画編集者向け)
MacBook Pro 14inch
M4
24GB / 1TB
・標準機 C:高負荷作業モデル(更に高負荷な作業をする人向け)
MacBook Pro 14inch
M4
48GB / 1TB
これらの機種を、特段の理由がない限りは2年のライフサイクルで運用しています。
一般的に、PC更新サイクルは全社3~4年、負荷の高い職種は2〜3年を目安にしておくと、迷いが減ります。
「壊れるまで使う」だと不意な故障や不具合のリスクが上がり、経年劣化への対応コストを都度行うことで、急な出費や見えない人的コストに繋がりかねません。
ライフサイクルは一定に決めておく方が良いでしょう。
定期的なMacの入れ替えには、Apple Financial Services(AFS)のような残価設定型リースを利用すれば、更にコストを削減できるのでおすすめです。
2年リースであれば約25%のコストが削減できるため、弊社もAFSでMacを調達しています。
まとめ
会社共通と職種別の“下限”を決めて、カタログにMacも選べるように置き、採用ページに「支給PCは選択可能」と一行添える。
たったそれだけでも、応募の母集団が少し広がり、承諾のハードルは少し下がることが見込めます。
良いデバイスは静かに会社の評判を押し上げてくれます。
HR投資の観点でも是非一度、業務デバイスは良い環境を整えられているか、見直してみてはいかがでしょうか。
記事は2025年10月 2日現在の内容です。
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