クラウドに出せないデータを、AIでどう活用するか? オンデバイスAIとID管理から考える、安全なAI活用基盤 - CADDi UNLEASH 2026出展レポート -

製造業の経営層やDX推進担当者が集まる招待制イベント「CADDi UNLEASH 2026」に、Tooはスポンサーとして出展しました。
今回Tooがテーマにしたのは、機密データを扱うAI活用と、そのためのIT基盤です。
製造業では、図面、設計情報、部品データ、原価情報、未公開の製品情報など、競争力の源泉となる重要なデータを多く扱います。
AIを使えば業務の効率化や情報活用の可能性は広がりますが、一方で、こうした機密性の高いデータをクラウドAIに入力することに不安や制約を感じる企業も少なくありません。
AIを活用したい。けれど、重要なデータを外部に出すことは難しい。
この課題に対して、Tooはセミナーとブース展示にて、オンデバイスAIとMacの可能性を紹介しました。
目次
製造業AI活用の課題は、クラウドに出せないデータにある
AI活用を巡る議論は、どのモデルが優れているかという段階から、AIをどう安全に業務へ組み込むかという段階へ移り始めています。
製造業では特に、AIで活用したいデータほど、社外に出しづらいという課題があります。
対象となるデータの例としては、次のようなものがあります。
- 図面、設計情報
- 技術資料、仕様書
- 部品データ、品質データ
- 原価、調達情報
- 未公開の製品情報
- 顧客別の仕様情報
こうしたデータは、業務改善やナレッジ活用の余地が大きい一方で、クラウドサービスに入力・送信することへのハードルも高い領域です。
こで注目されるのが、デバイス上でAI処理を行うオンデバイスAIです。
オンデバイスAIは、クラウドAIの代替ではありません。
重要なのは、すべてをクラウドで処理するのではなく、データの機密性や業務要件に応じて、クラウドAIとオンデバイスAIを使い分けることです。
クラウドAIは、大規模なモデルをすぐに利用できる点に強みがあります。高性能モデルを使うと複雑な推論や処理、Web上の情報を使った分析も実行できます。
ただし、従量課金による負担が大きく感じられることもあります。また、機密情報を扱う場合にはルール整備やアクセス管理、監査体制の設計が必要になり、業務によっては利用を許可しづらいケースもあります。
オンデバイスAIでは、機密データをデバイスの外に出さずに処理できます。データの外部送信を抑えやすく、工場や研究機関といったオフライン環境でも対応できるのは大きなポイントです。
ただし、オンデバイスだから自動的に安全ということではなく、デバイス側の管理やアクセス権限などは別途対策が必要です。
利用のたびにトークン料金を支払う従量課金モデルではないので、初期構築以降はトークンコストを気にせず利用できるメリット、ローカルツールや社内システムと連携しやすいというメリットもあります。
またモデルや動作を固定できるので、回答傾向を一定に保ちやすいことも利点となりますが、全体的な判断力や複雑な処理への対応は、クラウド型モデルの方が優れています。
それぞれのメリットとデメリットがありますので、行いたい業務や領域に応じた使い分けが推奨されます。
セミナーレポート:オンデバイスAIとIDガバナンスの2つの視点
今回登壇させていただいたセミナーテーマは「AI活用を止めないための、製造業のデバイス戦略とIDガバナンス」です。
主催のキャディ株式会社からも柳川様にご登壇いただき、Tooの福田とともに、製造業におけるAI活用とIT基盤についてお話ししました。
登壇者
キャディ株式会社
コーポレート本部 情報セキュリティグループ長
柳川 純二 様
株式会社Too
執行役員 Apple事業開発部 ゼネラルマネージャー
福田 弘徳
AI活用のボトルネック
セミナーではまず、AI活用を妨げる2つのボトルネックが紹介されました。
1つ目は、機密データの扱いです。
図面、設計情報、原価、未公開製品情報など、クラウドに出しづらいデータをどうAIで活用するかという課題です。
2つ目は、ID管理です。
AI活用が広がると、管理すべき対象は社員のIDだけではなくなります。各種AIエージェント、サービスアカウント、SaaS連携など、人ではないIDも増えていきますが、誰が・何が・どの情報へアクセスしているのかを把握できなければ、AI活用の拡大とともに企業リスクも広がります。
どのデータを、どのデバイスで処理するのか。
そして、誰が、あるいはどのAIエージェントが、そのデータへアクセスできるのか。
AI活用を安全に進めるためには、デバイス管理とID・アクセス管理を一体で設計する必要があることをTooからお伝えしました。
オンデバイスAI時代の選択肢としてのMac
続けて、セミナー前半でオンデバイスAIを実行する業務デバイスとしてMacの可能性を紹介しました。
Macは、単にAIが動くPCというだけではありません。オンデバイスAIを企業で運用するためのプラットフォームとして、次のような特長があります。
- ユニファイドメモリによる効率的な処理性能
- Appleシリコンによる高いパフォーマンスと電力効率
- Neural Engineを活用したAI処理
- ハードウェアレベルで統合されたセキュリティ
- MDMによる企業管理のしやすさ
- 業務デバイスとしての安定性と使いやすさ
オンデバイスAIでは、CPUやGPUの性能だけでなく、メモリ構成、セキュリティ、デバイス管理の仕組みまで含めて考える必要があります。
Tooからは、製造業において性能、セキュリティ、企業管理の3つを組み合わせて考えた場合のデバイスの有力な選択肢として、Macをご紹介しました。
続いて、キャディ様のMac導入事例にも触れました。キャディ様では、従業員の多くが力を発揮できるデバイス環境としてMacを活用されています。
社員の選択肢を広げながら、IT部門はJamf Proを活用して一元的に管理できる体制を整えています。
今後は、キッティングのさらなる最適化や、グローバルで同じポリシー・同じ基準によるセキュリティ管理を進めることも視野に入れられているとのことでした。
続けてTooからOmdiaの調査を紹介しました。
この調査では、多くの企業が機密データをクラウドに出さず、オンプレミスまたはオンデバイスで保持していることが示されています。
モデルの量子化やデバイスのメモリ構成、処理内容などの条件が合えば、ノート型であるMacBook Proでも、軽量モデルでローカルで推論を実行することを視野に入れると、機密データをより取り扱いやすくなる、とTooは分析します。
AI時代のIDガバナンスは、人間IDから非人間IDへ広がる
セミナー後半では、AI時代のIDガバナンスについてお話ししました。
AI活用が進むと、各種AIエージェントがSaaSや社内データに接続していきます。
そこで増えていくのが、非人間IDです。
サービスアカウントやAIエージェントのような非人間IDが増えると、様々なリスクが生まれます。
非人間IDのリスク
- 所有者が分からない
- 必要以上の権限が残る
- 使われなくなったIDが削除されない
- アクセス状況を監査できない
- どのAIエージェントがどのデータにアクセスしているか分からない
こうした状態は、AI活用の拡大とともに企業リスクになります。
Tooが推奨する流れは、まず人間IDの管理基盤を整え、その管理の規律を非人間IDにも広げていくことです。
キャディ様では、Oktaを活用し、約900人規模へのID基盤展開を1か月で実現されました。
SaaSの利用が急速に増える中で、入社・異動・退社に伴うアカウント管理を安全かつ効率的に行える体制は、事業成長を支える重要な基盤になります。
改めて、以下のようにID基盤展開の具体を教えていただきました。
キャディ様では、ゼロトラストセキュリティはID管理から始まると考えています。
誰が何にアクセスできるかを適切に管理できていない状態では、その先のセキュリティ施策をいくら打ったところで十分に機能しないためです。
特に、退職後のアカウント消し忘れは、大きなセキュリティリスクになると柳川様は強調します。
社員数が100~200人規模であれば人手で回せていた運用も、組織規模が拡大し、利用するSaaSが増えていくと、属人的な管理には限界が出てきます。
Oktaを選定した理由としては、ベンダーやOSに依存せず、MacとWindowsが混在する環境でも利用できること、そして導入後も社員が使い続けられる直感的な操作性が挙げられました。
まず人間IDについて、入社、異動、退社に伴うアカウント作成・変更・無効化の自動化を更に進める。そして連携するツールを増やしていくことで、よりシームレスな社内IT環境を目指して行かれるとのことです。
その次の段階として、非人間IDの棚卸しと最小権限化があります。
所有者、目的、権限、期限を明確にし、AIエージェントやサービスアカウントも含めて、統制できる状態をつくっていく……そしてさらにグループ会社や海外拠点をまたいで、共通ポリシーで運用できる状態を目指されています。
セミナーまとめ:AI活用を進める2つの視点
改めてセミナーでは、AI活用を進めるうえで必要な2つの視点をTooから紹介しました。
1つ目は、クラウドに出せない重要なデータを、AIでどう活用するかです。
すべてをクラウドに置くのではなく、データの機密性や業務要件に応じて、クラウドAIとオンデバイスAIを使い分ける。その有力な選択肢の一つが、オンデバイスAIの基盤としてのMacです。
2つ目は、誰が、そして何が、企業のデータへアクセスしているのかを管理することです。
AI活用が進むほど、管理対象は社員のIDだけでなく、サービスアカウントやAIエージェントへ広がります。まず人間IDの基盤を整え、その管理の規律を非人間IDにも広げていく必要があります。
Tooはこれまで、MDMを通じて企業のデバイス管理を支援してきました。しかし、これからの企業ITは、デバイスだけを管理しても完結しません。
デバイス管理とID・アクセス管理を一体で設計することが、AI活用を止めないための新しいIT基盤になることを皆様にお伝えしていければ幸いです。
ブースでは、MacBook ProによるローカルLLMデモを実施
弊社ブースでも、多くのお客様からAI活用に関する声をいただきました。
「確かにクラウドにアップすることに抵抗があるデータが多い」
「AI活用のルール整備を進めたいが、リスクを考えて止まってしまっている
「図面や技術文書を安全にAIで扱えるなら試してみたい」
そんな声にお応えして、ブースではM5 MacBook Pro 32GBモデルでローカルLLMのデモを実施しました。
GemmaやQwenなどの軽量モデルを用いて、架空の図面と部品データを読み込ませ、情報の要約と整理、質問への回答、簡単な計算を行う様子を紹介しました。
ネットワークに接続していない状態でも、デバイス上でAIが動作する様子に、多くのお客様が関心を示されました。
クラウドAIをすぐに全社展開することが難しい企業でも、オンデバイスAIであれば、部門単位・用途限定で検証しやすい可能性があります。
特に、機密性の高いデータを扱う製造業では、オンデバイスAIがAI活用の現実的な選択肢になり得ます。
オンデバイスAIに適したMacの強み
オンデバイスAIを業務で活用するには、単にAIが動作するだけでは不十分です。
安定した処理性能、十分なメモリ、セキュリティ、企業で管理できる仕組みが必要です。
ややセミナー内容と重複しますが、Macには、オンデバイスAIに適した次のような特長があります。
ユニファイドメモリ
Macでは、CPU、GPU、Neural Engineが高帯域・低遅延のユニファイドメモリを共有します。AI処理ではモデルやデータを効率よく扱う必要があるため、メモリ構成は重要なポイントになります。
Neural Engine
Appleシリコンには、機械学習処理に最適化されたNeural Engineが搭載されています。画像処理、音声処理、自然言語処理など、さまざまなAI機能を効率的に実行するための基盤になります。
ハードウェアセキュリティ
Macは、Secure Enclaveや起動時のセキュリティ、暗号化など、ハードウェアとOSが統合されたセキュリティ設計を備えています。機密性の高いデータを扱う業務デバイスとして、セキュリティ面でも安心して検討できます。
企業管理
Apple Business、MDM、IdPといった適切なツールを活用することで、配備、設定、セキュリティポリシー、アプリ管理などを一元的に運用できるため、Macを個人任せにせず、企業ITとして展開できます。
高性能モデルの選択肢
MacBook Proは、持ち運べる業務デバイスとして簡易的なオンデバイスAIの利用を行えるパワーがあります。
より大きなモデルや重い処理を扱う場合には、Mac Studio・Mac miniのような据え置き型のMacも選択肢になります。
メモリを後から拡張できない点には注意が必要ですが、Mac Studioは処理性能とコストパフォーマンスの面で、ローカルAI環境の構築に適した選択肢です。
2026年8月にはM6チップを搭載したモデルも登場し、Apple×オンデバイスAIの流れはますます強まっていきそうです。
まとめ:機密データを多く扱う業種でもAI活用を止めないために
製造、金融、医療や製薬、法務、メディアやライセンスビジネスといった業種や職種におけるAI活用は、クラウドAIだけでは語りきれません。
クラウドに出しづらいデータをどう扱うか。
どのデバイスでAI処理を行うか。
誰が、何が、どの情報にアクセスできるのか。
AIエージェントやサービスアカウントをどう管理するのか。
Tooは、Apple正規販売店としてのMac導入・運用支援に加え、MDMによるデバイス管理、OktaによるID管理まで含めて、企業のIT基盤づくりを支援しています。
Macを業務デバイスとして導入・管理したい。
AI時代のID管理やゼロトラストについて相談したい。
こうした課題があれば、ぜひTooへご相談ください。
記事は2026年8月27日現在の内容です。
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