2025年9月20日(土)に開催された「あにつく2025」より、「TVアニメ『ゆるキャン△ SEASON3』『ブルーロック vs.U-20 JAPAN』オープニング制作メイキング」のイベント内容をご紹介します。

セッション概要
アニメ作品の“顔”ともいえるオープニングムービー。その数十秒に作品の世界観を凝縮し、視聴者の心を一瞬で掴むためには、卓越した映像設計と緻密な制作プロセスが欠かせません。本セッションでは、アニメーションとモーショングラフィックスの融合を強みに、数多くのタイトルのオープニングを手掛けてきたポイント・ピクチャーズが、その制作の裏側を徹底解説します。
取り上げるのは、『ゆるキャン△ SEASON3』と『ブルーロック vs. U-20 JAPAN』のオープニング制作事例です。ロケハンを起点とした画作りのアプローチや、作品の魅力を最大化するための演出設計、そしてCinema 4DをはじめとしたMaxon製品をどのように制作フローへ組み込み、映像表現を拡張していったのか、実例とともに深掘りします。

【主催】株式会社Too
【登壇者】株式会社ポイント・ピクチャーズ あさをゆうじ 氏
株式会社ポイント・ピクチャーズ 二木 薫 氏
株式会社ポイント・ピクチャーズ くだゆうた 氏

アジェンダ

こちらが、本日のアジェンダです。
最初に、登壇する人の名前と会社紹介を行います。その後、『ゆるキャン△ SEASON3』のオープニング制作メイキング、『ブルーロックvs.U-20 JAPAN』のオープニング制作メイキングをご紹介します。時間がありましたら、質疑応答という流れです。
登壇者紹介

改めまして、株式会社ポイント・ピクチャーズと申します。登壇者の紹介ですが、ポイント・ピクチャーズで事業部長を務める、あさを ゆうじが進行を行います。本日のミーティングの解説は、ディレクターの二木 薫とディレクターのくだ ゆうたが担当します。
会社紹介

続きまして、ポイント・ピクチャーズという会社について簡単に紹介します。私たちポイント・ピクチャーズは2002年の設立以来、ゲームやテレビアニメのオープニング、CM、PVなどのショートムービーを中心に、様々なジャンルの映像制作に携わっています。
その中でも、テレビアニメのオープニング制作は業界でも限られた貴重な機会だと考えています。

続いて、ポイント・ピクチャーズの強みについてです。社内には「アニメーション部」と「CG部」、「デザイン部」という3つの部署があり、これらがワンフロアに集約されています。
この3つが連携することで、アニメーションとモーショングラフィックスを融合させた独自の映像表現が可能になります。長年エンタメコンテンツに携わってきた経験を生かし、作品の世界観をしっかり捉えつつ、洗練されたデザインと動きで視聴者の心を掴む映像を制作することを目指して日々取り組んでいます。

そのような点を評価していただいたのか、テレビアニメのオープニングやエンディングのご依頼を数多くいただいています。ここでは2024年の実績の一部を挙げていますが、『新テニスの王子様』や『無職転生!!』、『転生したらスライムだった件』などのオープニングを担当しました。
本日はこの中から2作品をピックアップし、そのメイキング解説を行います。
ここからはメイキングのパートに移ります。1作品目は二木ディレクターが解説します。
ゆるキャン△ SEASON3 オープニング制作メイキング

ゆるキャン△ SEASON3のオープニング制作メイキングについて説明します。

ここから説明させていただきます、ディレクターの二木薫と申します。簡単な経歴としては、2007年頃から映像制作を始め、さまざまな映像を制作してきました。2016年にポイント・ピクチャーズへ入社し、テレビアニメの仕事を担当するようになったのは入社後からです。画像の下の方には、私がオープニング制作に携わった作品が掲載されています。
趣味はキャンプで、キャンプを始めたきっかけがゆるキャンです。ゆるキャンが大好きで、自分自身もそこからキャンプを始めましたが、今回はそのゆるキャン△ SEASON3のオープニング制作を担当しました。

作品については、本当に素晴らしい作品なので、知らなかった方はインターネットなどで調べていただければと思います。今回のアニメ制作自体は株式会社エイトビットが担当されており、弊社はオープニングをエイトビットから請け負う形になっています。
アニメ作品のオープニングは、アニメ制作会社がそのまま作っていると思われる方も多いのですが、弊社のようにオープニングのみ外部が制作するケースも存在します。今回はそのような形での取り組みについてお話しします。
早速、制作したオープニングについて見ていきます。
制作工程

今回はオープニングのメイキングということで、まずは制作工程について、どのような流れで制作したかを大まかに説明します。最初に、監督からオープニングの方向性や作品の内容を含め、どのような映像にしたいかというオーダーを伺います。そこから弊社でコンテの制作に入ります。
一般的にアニメのコンテは紙で描くことを想像される方が多いかと思いますが、弊社の場合はオープニングやショートムービーの制作が多く、音の要素を重視することが多いため、ビデオコンテである「Vコンテ」という方式で制作しています。
また、デザインの指標が必要な場合には、イメージボードを別途作成することもあります。ディレクターとしては、このVコンテの制作が最も大きな壁になります。Vコンテが完成すると、弊社ではモーショングラフィックス、背景、今回であれば3DCGなどを制作します。アニメの作画部分については、本編を担当されているエイトビットが担当されています。
これらの素材が揃った段階で、撮影・コンポジット作業に移ります。今回この作業は私が担当しており、完成後に納品という流れになります。
Vコンテ作成前の設計

次に、最大の壁であるVコンテが完成するまでの過程について説明します。
まず、監督からいただいたオーダーは、
・キュートでポップでナチュラル
・本編とは異なるアートスタイル
・キャラクターは輪郭を実線で描かない
・テーマに沿ってグラフィックデザインされた画面で小気味よく音に合わせて展開する映像
・キャラクターの可愛さとアウトドアギアのかっこよさ、デザイン要素の融合
といった内容でした。本作のオープニングは、これらに十分応えられているのではないかと感じています。
このオーダーを受けて、個人的な指針も設定しました。
・画面はデザイン寄りにしつつ、本編のストーリー軸内の要素にする
・3期ということで、1期・2期から継続している要素を取り入れる
・楽曲のテーマである『新しい旅』を軸にする
このような方向性を意識しています。
ここからVコンテを作っていくのですが、今回は普段あまり行わない工夫を二点取り入れました。その二点について説明します。
Vコンテ作成時の工夫

一つ目は、監督のオーダーにデザイン要素が多かったため、Vコンテの段階でデザイン面の方向性も示す必要があると考えたことです。今回は弊社のグラフィックデザイナーにも協力してもらい、画面デザインのアイデア出しを行いました。

こちらが実際に上がってきたラフです。数日で制作してもらったものですが、さまざまな案が挙がりました。
女性デザイナーが担当したため、私が普段想像する可愛さやポップさとは異なる、女性ならではの視点の可愛さやポップさがあって、こうした要素を取り入れると面白い映像になると感じました。今回の制作では非常に役立った部分だと思います。

そして二つ目の工夫です。デザイン要素を強めれば強めるほど、ゆるキャンのシリーズが持つ「その場所に行ってみたくなる魅力」が薄くなってしまうのではないかと考えました。グラフィックデザインが主軸でも、実際に登場する物や風景を生かした演出は必ず入れたいと思っていました。
アニメ制作会社様から大量のロケハン資料もいただいていたのですが、自分でも現地を見ておく必要があると考え、実際にロケハンに行きました。

本編をご覧になった方は分かると思いますが、キャンプ場やダム、トロッコ電車など、印象的な場所が多く登場します。大井川周辺を一通り回ったり、本編に登場する食べ物を食べたりしました。
下の三つの画像は山梨県の精進湖で、富士山が見える場所です。右下はオープニングの該当カットの場所になっています。このように、さまざまな場所でロケハンを行いました。

こうしたロケハンの中で動画も撮影しました。オープニングで足跡がつくシーンの元になった映像で、吊り橋を歩いている時に「これは面白い」と感じたものです。

こちらの吊り橋はサビのシーンのベースになっています。非常に広く、空が抜けていて、「ここでドローンを飛ばしたら面白そうだ」と思ったことが、サビの構成につながりました。
このように、社内のデザイナーの協力を得つつロケハンも行った上で完成したVコンテを、まずはご覧ください。
13:05~
Vコンテを見る機会はあまりないかと思いますが、今回はモーショングラフィックスで動かしています。3D人形を使ったり、描くだけではなく、できることは何でも用いて、どのような映像になるのかを伝えるための素材を作っています。グラフィックデザイナーが描いたさまざまな案も実際に取り込んでいます。
このような形でVコンテを制作しています。
実線を使わないスタイル

ここからは、VコンテがOKとなった後、どのような工程を経て最終形へ持っていったのかについて説明します。
最も大きな問題であり、アニメ制作に携わっている方が特に気にされる点として、「輪郭の実線を使わないスタイル」をどのように実現したのかという点があると思います。その点について、ここからお話しします。
実線を使わないスタイルを実現するため、制作工程を二つに分けました。
まず一つ目は、弊社のグラフィックデザイナーが作成した画面です。こちらについては、輪郭を使わないスタイルで描いてもらうよう依頼しているため、基本的にはそのまま使用できます。
問題となるのは、通常のアニメと同様の工程で制作したセルを、撮影段階で実線を消す作業です。セルを作成し、それに描かれた実線を後工程で消していく必要があります。

実際の作業では、撮影分野ではよく使われているF’s Pluginsの『Main Line Repaint』というプラグインを使用しています。これは、周囲の色を拾って実線部分をその色で塗りつぶすことで、実線を消す機能を持ったプラグインです。これにより実線は消せますが、実線のみで描かれている部分まで消えてしまうという問題があります。
実際に適用してみると、口や眉毛といったパーツが右側の画像では消えてしまっています。

これは問題だということで、実線が消えてしまう部分への対応として、顔まわりについては仕上げ工程で線を塗り分けてもらいました。いわゆるアニメでいう「色トレス」です。
右側はそのために私が作成した指示書で、眉毛や目の周辺、鼻、口、メガネといったパーツをそれぞれ別の色で塗り分け、素材として上げてもらっています。
それを撮影処理用のテンプレートに当てはめ、例えば黄色の眉毛であればその色だけを特定の処理に置き換えるよう設定することで、実線だけを消しつつ必要なディテールを残すという方法をとっています。
しかし、実線自体は消えても、細かい箇所ではどうしても不都合が出るため、そういった部分は手作業で修正しながら進めています。

実際の例がこちらです。上の例では、キャラクターの眉毛が髪の色と同じ色になっていますが、素材段階では別の色に塗り分け、右側の完成ではやや影色に寄せることで、ディテールを残しながら実線を消しています。
下の例は髪の毛です。中央を見ると実線がすべて消え、ディテールが失われてしまっています。このような場合は仕方がないため、手描きで一つずつ修正しています。
最終ルックの色彩調整

このようにして実線を使わない処理を実現したわけですが、今回のオープニングをご覧いただいた際、色彩にも特徴があったと思います。ここではその色彩をどのように作っていたかを説明します。
ロゴの配色や本編の色彩は、キュートでポップな印象を持っています。これは監督からの「キュートでポップ」というオーダーとも一致していたため、今回はアニメ本編の色彩を生かす方向で調整を行っています。

このようにして、グラフィック部分と背景用のカラーパレットを作成しました。左側であれば、ロゴの色彩に自然に馴染むナチュラルな配色を模索しパレット化し、後半に桜のシーンがある関係で、ピンクをキーカラーとした色調も用意しています。右側は桜色が画面に入る際の色バランスを想定したカラーパレットです。

実際の制作はこのような流れです。
Vコンテ段階ではほとんど色がついていないものが、グラフィックデザイナーにカラーパレットを渡すことで、ある程度色がついた状態で上がってくるようになります。撮影・コンポジット時に私が微調整しますが、大枠の色彩はそのまま生かしています。
2列目の例は少し失敗例で、季節としては春より前の時期で芝生が少し茶色いのがリアルなのですが、今回の作品の色調としては緑の方が綺麗だと判断し、大きく色を変更しています。
一番下の例は、Vコンテとは構図が異なっていたため、私の方でレイアウトを切り直して描き直してもらったカットです。3D部分は本編の色のままですが、背景は弊社の背景スタッフに描いてもらい、カラーパレットを渡していたため、最終的にはほとんど手を加えず仕上げることができました。
このようにして、今回の色彩を作り上げています。
Cinema 4Dの活用事例
そして最後に、今回ご協力いただいているMaxonからリリースされている3Dソフト『Cinema 4D』を活用している部分について、どのように使用したかを説明します。

こちらはVコンテの橋のシーンです。まずはこのようにラフを作成しています。

この段階では、キャラクターの演技については作画担当の方へ口頭で指示を伝えていました。その後、作画側から接地点を示してほしいという要望があり、こちらでカメラワークを決めて接地点を付ける作業を行いました。

内容が決定したため、背景の制作に入ります。このシーンの背景は実は静止画2枚で構成しています。川の面と奥側の山、そして空を組み合わせたものです。

3Dと背景を組み合わせると、このようになります。ここで使用している3D部分は、Cinema 4Dでモデリングしたものです。

ここからが少し面白いところなのですが、セル素材が上がってきた段階で確認すると、途中からキャラクターの足元が橋に乗っていない状態になっていました。

これは撮影段階でAfter Effects(以下、AE)上の橋に足元を合わせるため、AEで位置を調整することにしました。この時にCinema 4Dが大いに活躍します。Cinema 4DのカメラデータをそのままAEに持ち込めるため、AE上にヌルを1つ置くだけで、その場で正確なマッチングが可能になります。

最終的にキャラクターが橋に正しく乗った状態になったため、撮影処理を行い、先ほど説明した色の調整を加えて完成となります。このように、Cinema 4Dも制作工程で活用しています。
以上でメイキングの解説は終了になります。駆け足の説明になりましたが、実際の制作期間は約3ヶ月から4ヶ月ほどです。今回は実線なしのスタイルという新しい挑戦もあり、多くのスタッフの協力を得て仕上げることができました。自分としても非常に思い入れの強いオープニングとなっています。
皆さん、ゆるキャンを見てキャンプに行きましょう。
ブルーロックvs.U-20 JAPAN オープニング制作メイキング

キャンプから変わって、次はサッカーになります。
自己紹介 + 作品紹介

先に自己紹介をさせていただきます。株式会社ポイント・ピクチャーズのモーショングラフィックス課で課長兼ディレクターを務めています、くだ ゆうたです。

本日は、ブルーロックのオープニングメイキングについてお話しします。オープニングメイキングに入る前に、まずは作品を簡単に紹介します。
今回のメインはオープニング制作のメイキングですので、作品紹介は簡潔にまとめます。ブルーロックは週刊少年マガジンで2018年から連載されている漫画で、2020年と2024年にテレビアニメ化されました。さらに外伝エピソードとなる『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』として映画化されるなど、非常に人気の高いサッカー漫画です。
ブルーロックとの出会い

メイキングに入る前のイントロダクションとして、私とブルーロックとの出会いを先にお話しします。 私はテレビアニメのブルーロック第1期のミニアニメ、「ブルーロックあでぃしょなる・たいむ!」のコンテ・演出・編集を担当しました。 その流れで第1期の2クール目のオープニングディレクターとしても作品に参加させていただきました。その流れが続いて、今回お話する第2期のオープニング映像につながっています。
第2期の説明に入る前に、第1期で私が制作したオープニング映像を先に見ていきます。

この映像をお見せしたのは、ただ自慢したかったわけではありません。第2期のオープニングを制作するにあたり、第1期で作ったオープニングのデザインや画面構成をベースに、雰囲気を残しつつブラッシュアップしたいと考えていました。言い換えると、「過去に自分が作ったオープニングを超えるためにどのような工夫をしたのか」という話につなげるためです。
それでは、この第1期のオープニングをどのようにバージョンアップさせたのか、第2期のオープニング映像をお見せします。
では、ここから本題に入ります。第1期と第2期をどのようにバージョンアップさせたのか、そのコンセプトについてお話しします。
コンセプト

第1期のオープニング映像では、スタイリッシュでグラフィック寄りにキャラクターを見せることを意識して制作しました。第2期を作る際にYouTubeなどで調査をしたところ、ファンの方々からもその点が好評であったため、第2期でもその要素を取り入れることにしました。
しかし、それだけではバージョンアップにはなりません。そこで第2期の本編ストーリーを漫画で読み込み、自分の中で本編の展開を「荒々しく熱い展開」と捉えました。

その荒々しく熱い展開の表現について考えた結果、「筆タッチを追加すること」で本編の熱量を視覚的に表現したいと考え、今回のコンセプトに組み込みました。
ただし、そのコンセプトをどのように映像化したのか、筆タッチをどのように入れていったのかを説明する前に、まず筆タッチが入っていない状態のVコンテをどのようにブラッシュアップしたのかについてお話しします。
ということで、最初にVコンテを見ていきます。
30:38
先ほどゆるキャンのVコンテを見ていただきましたが、今回のVコンテはそれよりもさらにラフな状態です。先に完成映像をお見せしたのでなんとなくニュアンスはつかんでいると思いますが、かなりラフな3Dで進めています。
このVコンテは、ほとんど全てのカットでCinema 4Dを使用していますが、Cinema 4Dを使わなければ成立しなかったと思います。
では、ここからどのように筆タッチを追加していったのかを説明します。今見ていただいたVコンテにはデザイン要素が全く入っていませんが、ここからどのように現在の映像に近づけていったのか、その工程をお話しします。
カットの演出意図

今回は、自分が説明したいと感じたカットを選びました。それがこちらのカットになります。この状態では何が描かれているのか分かりづらいと思いますので、このカットに込めた演出意図を説明します。

ブルーロック第2期で、日本代表と戦う試合のラストシーンをイメージしています。試合終了間際、あと一点誰かが決めれば勝敗が決まるという大事な場面で、主人公の潔世一が運良く落ちてきたボールを蹴り、シュートを決めて勝利をつかむという展開です。
ただし本当は「運が良かった」のではなく、潔世一はその運を見据え、自分に運を引き寄せている、というのが作品上の表現です。そこで、その運の要素をルーレットで比喩的に表現しつつ、それさえも潔が見据えているという演出意図を込めています。
そして本題ですが、先ほど述べた通り、この段階のVコンテには筆の要素がまったく入っていません。コンセプト段階では「筆タッチを入れる」と決めていたのに、Vコンテが完成してからどう加えるかを考え始めることになり、本当に大きな壁となりました。この状態から筆タッチを追加していった苦悩の過程についてお話しします。
Trapcode Particular

どう乗り越えるか非常に悩みました。アナログで描く方法も考えましたが、スケジュール的に現実的ではありません。悩んだ末に行き着いたのが、「『Trapcode Particular』を使えば表現できるかもしれない」という考えでした。

一般的にTrapcode Particularは花火や光のエフェクト、粒子が集まって文字が浮かび上がる表現などに使われるものです。しかし私は、これを筆タッチの表現に応用できないかと考え、今回の制作で使用しました。
ここからは、どのように試作していったかを説明します。

まず、いきなり使用するのではなく、ベースとなる素材にアナログ調のプラグイン処理を“下味”として軽く加えました。これを行うことで、後から筆タッチを追加した際に画面の馴染みが良くなります。

その後、Particularで必要になる筆タッチの素材を複数パターン用意しました。ランダム性が重要だと考えたため、手書き風の筆素材を大量に作成しています。

これらの筆素材をTrapcode Particularにリンクさせると、このように複数の筆タッチが生成されます。筆の大小や形状など、様々なパターンのランダム性を持たせています。これは、ベース素材にリンクして筆素材が発生している状態です。

これをコンポジット作業で重ねると、荒々しい質感が生まれ、試作段階で「これはいける」と手応えを感じました。そのため、先ほど説明したルーレットのカットにこの方法を組み込みました。

このカットもCinema 4Dで作成しています。
Vコンテとカットが大きく変わってしまっていますが、ご容赦ください。制作を進める中で、よりかっこよくなる方向へ変化していくためです。

この試作で作ったParticularによる加工方法をテンプレート化し、他のカットにも適用しました。これにより作業効率が上がり、3D素材やセルの修正が発生した際にも、アナログで書き足す必要がなく、Particularで筆タッチを自動的に反映させることで柔軟な修正が可能になりました。

テンプレート化を採用した理由は、アニメオープニングのスケジュールが非常にタイトだったからです。今回は第2期のオープニングで全51カットを細かく刻み、そのうち33カットがデザイン加工や筆タッチの処理が必要なカットでした。
これをすべてテンプレート化せず個別に調整していたら、時間が到底足りませんでした。テンプレートを活用したことで大幅な時間短縮につながり、その分ブラッシュアップやクオリティアップに時間を充てることができました。
駆け足になりましたが、これで私のメイキングの説明は終了になります。
テンプレート化したとはいえ、スケジュールは最後までギリギリでした。また、Vコンテの段階ではデザイン要素がまったくなかったため、社内のグラフィック担当に丸投げで「かっこよく作ってほしい」とお願いしたり、社外の多くの方にもご協力いただきました。今回お見せしたオープニングは、そうした多くの方々の力によって完成したものです。この場を借りて改めて感謝申し上げます。
質疑応答
Q1. ゆるキャンのオープニング制作でロケハンに行かれた際、吊り橋などで新しい発見があったとお話しされていました。ロケハンに限らず、外部からアイデアを得る時は、普段どのような考え方でインプットしているのでしょうか。
インプットについては、日頃から多くの映像を見ることが大きいと思います。今回ロケハンに行った理由は、デザイン寄りに制作を進めている中で「作品に登場する実際の舞台の良さを十分に表現できないのではないか」という危機感があったためです。
ですので、ロケハンはインプットを補う手段として行きました。映像をたくさん見る、原作をしっかり読むといった普段からのインプットに加えて、今回はロケハンも行ったという形です。
Q2. オープニングでは、2Dのキャラクター作画と3Dで作ったキャラクターアニメーションの両方が使われていたと思いますが、どのような基準で切り分けているのでしょうか。
ここだけの話として聞いていただきたいのですが、汎用的な動きは基本的に3Dで作っています。例えば歩き、固定ポーズ、表情に依存しない動きなどです。一方で表情が必要なカットは自分で手描きしたり、作画で対応しています。
また、つり橋のシーンのようにダイナミックなカメラワークが入る場合は、まず3Dを置き、その上で「この表情にしてください」「この演技をお願いします」といった指示を口頭や書面で渡して制作してもらう、という切り分けをしています。
Q3. 私はまだCinema 4Dを触ったことがありませんが、今回の話を聞いて使ってみたいと思いました。おすすめの本や、学習方法があれば教えてください。
現在の学習環境で一番おすすめなのはYouTubeです。Maxon Japanや本国の公式チャンネルで公開されているチュートリアルが非常に充実しています。書籍で文字を読んで学ぶよりも、YouTubeを流しながら同時進行で操作する方が、体感的に覚えられて身につくと思います。
Q4. Cinema 4Dを普段使っている学生です。制作過程でCinema 4Dを使う理由として、AEとの互換性以外に何かありますか。
個人的にはインターフェースが非常に分かりやすく、アイコンやモディファイアが直感的で扱いやすい点が大きいです。オープニング制作でCinema 4Dを使い続けている理由としては、「テイク機能」が特に便利だからです。
例えばアニメでは、キャラクターと背景を別々に出力する必要がありますが、Cinema 4Dではキャラクター用のテイク、背景用のテイクを作成し、それぞれにリンクしたレンダリング設定を簡単に管理できます。効率的にパターン出しができるため、制作工程で非常に有用だと感じています。



