2025年9月20日(土)に開催された「あにつく2025」より、「株式会社ENGIによるTVアニメ『メダリスト』のキャラクターリギング解説」のイベント内容をご紹介します。

セッション概要
手描きアニメーションと3DCGが同居する作品づくりにおいて、両者を自然に融合させる鍵となるのが「キャラクターリグ」です。本セッションでは、近年増え続ける作画パートとCGパートが併存するアニメ作品において、どのようにリグが設計され、映像として違和感なく共存させているのかを解説します。
手描きの魅力を損なわず、3DCGの強みを最大限に引き出すためのリグ制作の考え方、具体的な工程、そして実制作での工夫やポイントを、現場の視点から深掘りしていきます。
【主催】株式会社Too
【登壇者】株式会社ENGI 砂村 洋平 氏

はじめに

リグとは

まずはじめに、「リグ」について説明します。リグとは、3Dモデルをアニメーション可能な状態にするための仕組みです。
モデラーが作成したキャラクターモデルに骨を配置し、変形具合を調整する作業は「スキニング」と呼ばれますが、それだけでは可動フィギュアのような状態で、滑らかなアニメーションをつけるのが難しい場合があります。そこでアニメーターが扱いやすいように、各種コントローラーや操作系の仕組みを組み込み、アニメーションしやすい形へと整えていきます。
3DCGに詳しくない方に「リグとは何をしているのか」と聞かれる際には、操り人形に例えて説明することが多いです。ぬいぐるみに骨を入れ、糸や棒をつけて動かせるようにする仕事である、というイメージです。

今回取り上げる『メダリスト』におけるリグの概要ですが、メインで使用されているDCCツールは『Autodesk Maya』です。リグの作成にはオープンソースの『mGear』を使用しています。また、服や髪といった揺れものに関してはシミュレーションではなく、すべてアニメーターによる手付けで制作しています。
作画との共存において最も大きな課題となるのが表情、いわゆるフェイシャルです。今回は表情の作成や調整もすべてリグによって行う方式を採用しました。
手描き作画と3DCGが混在する作品でのリグ作成

先ほど述べた通り、作画パートと3Dパートが共存する作品において大きな問題となるのは表情です。フル3D作品と基本的な考え方は大きく変わらないものの、より慎重な配慮が必要になります。
例えば、どれほど精巧な3Dモデルであっても、設定画と完全に一致するのは正面や横など特定の角度に限られます。それ以外の角度では、設定画とは異なるシルエットや印象がどうしても出てしまいます。フル3D作品であれば気になりにくい点でも、物語の多くが作画で進む作品では、作画から3Dに切り替わった瞬間のわずかな違和感が問題になります。
過去に参加したアイドルアニメのミュージックビデオでも、キャラクターにカメラが一定以上寄るショットは手描き、それより引いたショットは3DCGという運用が取られていました。ただしこの方法だと、カメラがショット内で大きく寄ったり引いたりする演出が制約されてしまいます。また、ショットごとにモデルを直接変形させる方法もありますが、これはアニメーターがモデラーのようなスキルを要求されるため、技術的な負担も大きく、角度が変わった際に変形が破綻する可能性もあります。
作画と立体物の間には、どうしても埋め難い差が存在します。作画はその瞬間のカメラアングルに対して、最も美しく見える「理想形」を描くことが可能です。物理的に正しくなくても、人の目がそう認識する形を描くことで、より魅力的な顔立ちやシルエットが成立します。一方で、3Dモデルは固定された立体物のため、美しく見えない角度がどうしても生じてしまいます。
今回のプロジェクトでは、3Dアニメーターが作画アニメーターのように表情を「作る」発想に沿い、できるだけリグ側で細かな表情付けができる仕組みを採用しました。また、角度による見え方の補正をどう入れるかも重視しています。
作画チームと同時進行で作業しているため、ペイントオーバーで修正指示をもらい、それにリグで対応できる強みもあります。レンダリング画像をレタッチする方法もありますが、それに頼り切るとコストが増え、CGを使う意味も薄れてしまいます。そのため、可能な限りリグで調整できるようにすることを目指しました。
手描きと立体物の違い

これは結束いのりの設定画です。丁寧に描かれた設定画ですが、手描きならではの”美しい嘘”が多く含まれています。横から見た際の額の丸みや白目の面積、斜めから見た時の頬の張りや口の位置などは、一つの立体形状では再現できません。設定画の角度にぴったり合わせてモデルを作ると、それ以外の角度で不自然になることもあります。
「エビフライ」と呼ばれている髪の編み込みの尻尾部分も、正面の位置に合わせると横から見た時に設定画と整合しない場合があります。

こちらが実際の3Dモデルで、左上が設定画です。モデルとしては可愛らしく仕上がっていますが、設定画との差異があることが分かると思います。エビフライの位置や額の丸みは、仮の変形を加えて調整している状態です。
今回はモデル段階で全てを解決するのではなく、アニメーション時にリグで設定画へ近づける仕組みを実際に導入しました。
3Dモデルの弱点

キャラクターが回転したり、カメラが回り込むダイナミックなアニメーションにおいては、3Dモデルは作画よりも大きな利点があります。一方で作画との共存を前提にすると、3Dの弱点がそのまま違和感になる場面も生まれてしまいます。

3Dモデルでよくある弱点の一つが、アオリ角度で顎のラインが望ましい位置に出てこないことや、顎下の影の面積が大きくなってしまうことです。これに対応するため様々な変形機構をリグに組み込み、調整可能にしています。
フェイシャルリグのしくみ

フェイシャルリグとは、キャラクターの表情を制御するためのリグのことです。表情変形の方法には大きく二つの手法があります。
一つは、形状変化を再現する「blendShape」です。これは、変形させたい形状をあらかじめ作成してターゲットとして登録すると、元の形状からその形状へ変化するアニメーションが作れます。変形が干渉しない場合には、複数のターゲット形状を同時に適用することも可能です。

もう一つは、ジョイントを配置して変形させる方法です。ジョイントをコントローラーで細かく移動・回転させることで表情を作り、カメラアングルに合わせた調整も行います。
それぞれに、長所と短所があります。blendShapeは非常に細かい形状設定ができますが、用意した形状以外には変形できません。多様な表情を網羅しようとすると膨大な数のターゲット形状が必要になり、モデラーの作業量が増えてしまいます。
一方ジョイントは自由度が高く、柔軟な変形が可能ですが、細かい表情を実現しようとするとコントローラーの数が増え、アニメーターの負担が大きくなります。そのため、多くの場合はこれら二つを組み合わせてフェイシャルリグが構築されます。
表情の作成と修正

『メダリスト』の場合、CGで描かれるのは主にスケートシーンであり、滑走中の表情は日常芝居ほど感情の種類が多くありません。また、アニメーションスーパーバイザーの方針として「決められたパラメータを並べるだけではなく、作画と同じようにアニメーター自身が表情を作る」という考えを採用しています。
そこで、blendShapeで作成するターゲットは喜怒哀楽のような感情セットを用意せず、目と口の最小限にとどめ、細かな表情はコントローラー操作で作り上げることを前提にリグを構築しました。

表情を一から作る場合でも、すべてのショットでカメラアングルに応じた補正を手作業で行うのはコストがかかります。そのため、事前に調整した角度補正を一括で適用できる仕組みを導入しています。正面から見るとかなり極端な変形に見えることもありますが、各角度で適切に変形させることで作画との差を軽減し、CGの弱点を補う形になります。
また、角度補正の適用度を調整できるアトリビュートも用意されており、ショットごとに適用量を変えながら、アニメーターが細かく表情を作り込めるようにしています。

次に、実際のショットにおいて作画監督のペイントオーバー指示がどのように反映されたかを見ていきます。こちらが、アニメーション作業が一旦完了した段階の素材です。

これに対して、作画監督からペイントオーバーで指示をいただき、その指示を基準にリグで修正を加えていきます。リグだけでは対応しきれない部分については、手描きによるレタッチ修正を行っています。

レタッチは、リグで直しきれない表情部分だけでなく、影の落ち方の調整にも使用されます。
リグの制作過程

ここからは、リグの具体的な制作過程について紹介します。これは『メダリスト』におけるパイプラインとデータフローの概略図です。モデル、リグ、アニメーション、ライティング、コンポジットといった各セクションの作業が縦方向に、そして各セクション間でのデータの流れが横方向に示されています。
赤い矢印はインポート形式で、データを直接読み込んで加工する方式です。緑の矢印はリファレンス形式で、外部ファイルを参照しながら作業する方式を示しています。
モデルデータは一度完成しても、後に修正が必要になることが少なくありません。しかし、時間的な制約もあるため、次の工程を進めるために「完成前のモデル」を使ってリグを作り、後から完全版のモデルに差し替えるという運用もよくあります。
インポート形式でアニメーションやレンダリングを進めていると、差し替え時の反映が非常に難しくなります。そのため、多くのプロダクションではリファレンス形式でのデータフローを採用しています。

こちらはショット制作の工程です。まずモーションキャプチャーを収録し、そのデータをレイアウトリグに流し込み、全体のモーションのタイミングやカメラワークを作成します。

次に、プライマリアニメーションと呼ばれる段階で、体の動きなど主要なアニメーションを作成します。

その後のセカンダリアニメーションでは、髪や服の揺れ、表情などの細かな動きをつけていきます。

レンダリングが完了したら、さらにエフェクトを追加し、最終的なショットとして仕上げます。

ショットの工程に合わせ、レイアウトリグとアニメーションリグを用意しています。
レンダリング用モデルが確定した段階でアニメーションリグを作成しますが、多くの場合この時点ではフェイシャル用ターゲットがまだ完成していません。そのため、まずはフェイシャルを省略したリグを出荷し、後からフェイシャルを追加したリグを再度出荷します。
アニメーションやレンダリングの過程でモデルに修正が入ることも頻繁にありますが、リグファイルを直接修正するのではなく、ツールを利用してリグを再構築できる仕組みにしています。
mGear

リグの作成には、Maya上で動作する『mGear』というツールを使用しています。これはMiquel Campos氏を中心に開発されているオープンソースツールで、多くのリグツールと同様にモジュラーリグシステムが採用されています。
腕や脚、背骨といった部位をモジュールとして扱い、それらを組み合わせてリグを構築する方式です。また、mGearではデータを「分けて保存する」という考え方も採用されており、ジョイントやモデル、ウエイトデータなどを個別に保存して、ビルド時に組み立てる仕組みになっています。リグツールではこれを、「ビルドする」と呼んだりします。
mGearは多くのプロダクションで使われており、オープンソースということもあって大規模スタジオでは独自にカスタマイズされる例もあります。私の知る範囲では『スパイダーバース』『ルパン三世 THE FIRST』『竜とそばかすの姫』などでも採用されています。
レイアウトリグ

レイアウトリグでは、モデルを関節ごとに輪切りにして、対応するジョイントに一対一でバインドした、動作が軽いリグを使用します。スキニングをしない分処理が軽いため、多くのプロダクションでこの輪切りスタイルが主流だと思います。
プライマリーアニメーションへ移行する際は、アニメーションリグにリファレンスを差し替えて、そのままアニメーションデータを引き継ぎます。そのため、関節位置の設計には正確さが求められます。
アニメーションリグ

アニメーションリグは、レイアウトリグのガイドデータを引き継ぎつつ、揺れものやフェイシャルを追加して作成します。プライマリからセカンダリ、そしてレンダリングまで一貫して使用されるリグです。
今回の作品では衣装や髪型が比較的シンプルなので仕組みも単純ですが、部分的には工夫を加えています。フェイシャルについてはここまで説明してきた通り、細かな変形を多数組み込んでいます。ここからは、その詳細な仕組みについてさらに説明します。
データ要素

アニメーションリグを作成する際に必要なデータはこのようになります。プロダクションによって異なりますが、メダリストでは大まかに以下を準備しています。
・ジョイント位置を指定するガイド
・レンダリング用モデル
・スキニング用ウエイトモデル
・各種リグの仕組みのためのモデル
・blendShape用のターゲットモデル(フェイシャル以外に服でも使用)
・各モデルに対応するウエイトデータ
・モジュールでは作れない特殊ジョイント
・角度補正などに使用する自動処理用セットドリブンキー
mGearはモジュールを組み合わせてビルドするだけでは、ジョイントとコントローラーしか生成しません。実際のリグとして使用するには、各種データを読み込み、結合する処理を追加する必要があります。これらはPythonスクリプトで実行します。

一部を例にすると、「モデルの読み込み」、「ウエイトの適用」、「フェイシャルリグの構築」、「コントローラー表示切替」などをスクリプトで処理しています。これらをまとめてビルドすると、必要なデータが読み込まれ、各種処理が自動で実行され、最終的にリグが組み上がります。
リグツールがこうした方式を取っているのは、省力化やミスの防止はもちろん、修正を効率よく反映させるためでもあります。リグファイルを手作業で直すのではなく、必要なデータだけ差し替えてリビルドすれば、素早く更新できますし、不具合が出た場合も前の状態に戻しやすくなります。
服と靴

ここからは、衣装まわりの工夫の例の紹介です。
スカートはジョイントで変形させる仕組みですが、アニメーターが手で付ければ自然な動きが作れます。一方でフリルの多いスカートを完全再現しようとすると、山と谷すべてにジョイントが必要となり管理が煩雑になります。そのため、スカートが広がった際にフリルが伸びる表現はblendShapeで補っています。

また、原作を読んでいて気付いたのが「足首を曲げた時の変形が複雑」という点でした。これをアニメーターが毎回手作業で再現するのは負担が大きいため、IKや回転制限を使って自動で再現できるように工夫しています。
フェイシャルコントローラ

メダリストのフェイシャルでは、このような複数のデフォーマと、それらを制御するコントローラーを組み合わせています。これらは同じオブジェクトを同時に変形させるのではなく別々の階層で変形し、レイヤーのように積み重ねることで最終的にレンダリングモデルに反映する仕組みです。
主なデフォーマは以下の通りです。
・blendShape(形状変形)
・angleLattice(角度補正用)
・part(部分ごとの変形)
・outline A/B(輪郭調整)
・tweak(まぶた・唇の細かな調整)
・lineShadow(ラインや影用の補正)
・brow(眉のコントローラー)
・angleCtrl(角度補正の総合制御)
デフォーマ階層

デフォーマとは、オブジェクトを変形させるための機能全体を指す言葉です。ジョイントによるskinCluster、格子状に変形させるlattice、そして形状の変形を反映するblendShapeなど、さまざまな種類があります。
階層化してデフォーマを管理する理由には、例えばスキンクラスターによって下地の変形がすでに存在する場合などがあります。そこに「さらに別の変形を追加したい」と思っても、ウエイトの合計が1である必要があるため、希望する領域に新たなウエイトを割り当てられないケースが起こるためです。左右のジョイントにウエイトを取られてしまい、中央に変形を加えられない、といった状況です。

このような場合、中央の変形をblendShapeとして接続し、そのblendShapeターゲットを常に1で動作させることで、一つのオブジェクトに複数の変形を重ね掛けすることができます。

また、「コントローラーが変形に追従する仕組み」を実現する際にも階層化が必要になります。例えば首の動きに合わせてblendShapeが作用し、その上で追加のコントローラーがさらに細かい変形を加える場合、コントローラー自身が持つ変形階層と、blendShapeが持つ変形階層を分けておく必要があります。そうすることで、追加コントローラーがblendShapeの動きに追従しつつ、「自分自身が動いた分だけ」変形を加えることが可能になります。
このようにデフォーマを階層化することで、ボディリグとフェイシャルリグを独立させたまま構築でき、後から機能追加や修正を柔軟に行えるという利点があります。

これがデフォーム階層の模式図です。丸い四角が変形するジオメトリ、色つきの四角が各デフォーマを表しています。矢印の色はデフォーマの種類を示し、点線は「コントローラーが変形に追従する」という関係を表しています。
リグ制御用の階層には、このように複数のジオメトリグループが存在し、それぞれが段階的に変形を重ね、最終的にレンダリングモデルへと形状が伝達されます。上位階層のデフォーマによる変形が下位階層のコントローラー位置を制御し、その上で下位のコントローラーが動くと「自分が動いた分だけ」追加の変形が適用される仕組みになっています。
角度補正組込

角度補正の制御は、これら複数のコントローラーを総合的に組み合わせて作られています。より正確には、コントローラーそのものではなく「親ノード」を制御しており、角度補正がかかってもコントローラー自体の位置は変わらないようになっています。
角度補正はセットドリブンキー(動きの入力と出力を1対1で登録する仕組み)で構築しています。カメラ位置は上下左右の2次元情報なのですが、このままではセットドリブンキーに登録できないため、一度「2次元アトリビュート → 1次元アトリビュート」に変換する処理を間に挟んでいます。その変換には、数値を四則演算で組み合わせて制御するノードを複数構築しています。
さらに、アニメーターが作成した角度補正用アニメーションデータは、STUDIO libraryを使ってライブラリ化し、そこから自動でセットドリブンキーを作成するツールも用意しました。

具体的には、データパスを指定し、ドライバーとなるコントロールを登録し、制御されるノードを登録すると、セットドリブンキーが自動生成されます。作成したセットドリブンキーデータはmGearのコマンドを使って外部に保存し、ビルド時に読み込む形で運用しています。
質疑応答
Q1. mGearについてお聞きします。ビルド前後のスクリプトで運用されている印象でしたが、内部改造や独自コンポーネントの作成は行っていないのでしょうか。また、今後別ツールへ移行したいなどの考えはありますか。
今後もmGearを使い続けることになると思います。現状ではカスタムコンポーネントを作成する段階までは至っておらず、基本的にはmGear標準の機能を使い、ポストスクリプトやプレスクリプトなど、スクリプトで制御できる部分を組み合わせて構築するスタイルです。
Q2. 今回は表情リグが中心でしたが、原作・アニメともに「指の演技」が重要な作品だったと思います。手や指のリグで工夫された点はありますか。
指については、本来細かい仕組みを入れたかったのですが、時間的にそこまで手を回せませんでした。リグ自体は比較的シンプルで、指先の表現が力強く見えた部分は、ほとんどがレタッチによる補完になります。
Q3. リグセットアップにどれくらい期間がかかり、何名が関わったのでしょうか。
レンダリング対象のキャラクターは約5人で、いのりは衣装バリエーションがあったため合計6体でした。社内でリグに携わったのは4名です。1体ごとに初期構築後の追加・修正も含めると、3〜4週間ほどかかったと記憶しています。
Q4. 女性キャラクターと男性キャラクターでは動きの質感(しなやかさ・硬さなど)が異なると思いますが、リグ側での違いはあるのでしょうか。
リグで大きく差をつけることはしていません。動きの違いは、アニメーターの技量と調整によるところが大きいです。モーションキャプチャーは元オリンピック選手の女性の方に演じていただきましたが、男性キャラクターにもそのデータを使用しています。モーションキャプチャーはそのまま流用されることはほとんどなく、最終的にはアニメーターが大きく手を入れる工程になります。
Q5. レタッチに頼りすぎるとCGを使う意味が薄れるという面について、リグ・レタッチ・作画をどう使い分けているのか、判断基準があれば教えてください。
基本方針は「まずリグで何とかできないかを試す」です。どうしてもリグでは対応が難しい指示が出た場合にレタッチを行います。また、3Dでは影の落ち方が手描きほど自然にならないことがあり、その補正にレタッチを使うケースも多いです。現場のコストとの兼ね合いも含め、リグを優先しつつ必要に応じてレタッチを併用する形です。
Q6. 今回は作画とCGが共存するワークフローでしたが、フルCG作品を制作する場合、このワークフローはそのまま応用できるのでしょうか。
当社はフル3D作品『GAMERA -Rebirth-』を制作した経験がありますが、今回と大きくワークフローが変わることはありませんでした。作画との共存時には注意点が増えますが、ツールやパイプラインを大きく変更する必要はあまりないと考えています。
Q7. 作画カットとCGカットを同じシーン内で馴染ませる場合、撮影処理の違いによってルックを揃えるのは難しいと思います。どのように統一感を取っているのでしょうか。
私の専門分野ではありませんが、コンポジット担当と話したところ、線をPencil(AE用プラグイン)などでレンダリング後に調整し、手描き線と太さ・質感を合わせています。色味も丁寧に合わせ込みます。
最終的にはモデルやリグで形状を寄せることも重要で、作画のラインや形状と大きくズレないよう調整しています。また、作画に馴染ませるための専用素材をCG側で複数出力し、それをAfter Effectsで統一感を出しているとのことです。
Q8. リグでは移動値・回転値を使っている印象でしたが、スケールは使用されていますか。
スケールも使用しています。ただし細かいジョイントを直接スケールすることは少なく、頂点を動かすような制御が多いです。目や口などパーツ単位の調整では、ショットごとにサイズ感を変えるためにスケールを用いることがあります。
Q9. 目や口の開閉にblendShapeを使用されていましたが、mGear標準のEyeRigger・LipRiggerを使用しなかった理由はありますか。
以前標準リガーを使ったことがありますが、ポリゴン分割をかなり計画的に設計しておかないとうまく動作しません。また、目を真っすぐ閉じる単純な動きには向きますが、「下向きにカーブしながら閉じる」「にっこりと上向きに閉じる」といった微妙な表情差を出したい場合、blendShapeの方が圧倒的に制御しやすいため、今回はblendShapeを採用したという経緯になります。



