2025年9月20日(土)に開催された「あにつく2025」より、「『Blender』導入への挑戦『パチスロ東京喰種』から紐解くルック開発講座」のイベント内容をご紹介します。

セッション概要
「パチスロ東京喰種」内のCG映像部分のメイキングセミナーになります。
特にルック開発に焦点をあて、実際の映像や中間素材を交えながら「Blender」の制作技術をスタッフメンバーがお話します。
【主催】株式会社Too
【登壇者】株式会社サブリメイション 小川 喬右 氏
株式会社サブリメイション 大橋 めぐみ 氏
株式会社サブリメイション 土屋 嘉廣 氏

登壇者 & 会社紹介
土屋:
まず、本日の登壇メンバーをご紹介します。
株式会社サブリメイションでCGディレクターを務めている小川喬右。同じくサブリメイションでCGチーフを担当する大橋めぐみ。そして、サブリメイションでラインプロデューサーを務めている土屋嘉廣の3人で進行いたします。

続いて、弊社サブリメイションについて簡単に紹介します。サブリメイションは2011年に設立されたCGプロダクションで、主にCGセルルック映像を中心とした映像制作を行っています。従業員はおよそ120名で、東京・名古屋・仙台の3拠点でスタジオを構えながら制作を進めています。
制作実績としては、元請け作品としてNetflixシリーズ『ドラゴンズドグマ』、『鬼武者』を担当しております。今回はそれらの作品にも携わったメンバーによって制作した『パチスロ東京喰種』についてお話しします。本日の登壇者は、いずれもその制作に携わったメンバーです。

本日のセミナーでは、「パチスロ東京喰種」での映像制作における実際の事例を交えつつ、ワークフローやルック開発の工程をメイキングとしてご紹介していきます。
作品紹介

まず、作品の概要についてご説明します。テレビアニメの東京喰種のパチスロ化に伴い、弊社が映像制作を担当しました。主にCGパートの制作を担当しており、ATと呼ばれる約6シーンの映像パートにおいて、合計300カットほどを弊社で手がけています。
これから、金木と亜門が戦うシーンをご覧いただきます。こちらは全てBlenderで制作した映像で、コンポジットが完了した段階の、実機に組み込む前の最終映像になります。約2分ほどですので、まずはこちらをご覧ください。
以上が映像となります。
続いて、この映像をどのようなコンセプトで制作したのかという点についてお話ししていきます。
金木と亜門が戦うシーンをご覧いただきました。こちらは全てBlenderで制作した映像で、コンポジットが完了した段階の、実機に組み込む前の最終映像になります。この映像をどのようなコンセプトで制作したのかという点についてお話ししていきます。
コンセプト / ディレクション
小川:
ここからは、ディレクション面で挑戦した点、そして本セミナーの中心テーマである「ルック開発」を理解いただく上で、どこに注目していただきたいかを、最初に共有させていただきます。
先ほどの映像にもある通り、私たちはATパートにおいて、遊技中の背景で流れる一連のアニメーションを“フル3D化”する役割を担っていました。制作に着手するにあたり、打ち合わせ段階から繰り返し挙がっていたキーワードが「原作をリスペクトし、可能な限り再現する」というものでした。この点を、私自身そしてチームとしても最重要コンセプトとして制作指針に据えていました。
この「原作をリスペクトし再現する」という課題に向き合うにあたって、私たちが特に重視したのは次の2点です。
1つ目は、アニメ放映当時の“手触り”や“印象”を限りなく近づけるための入念な考察とディレクションを行うこと。2つ目は、東京喰種のアニメ、そして原作ファンの方々が、遊技中でも違和感なく没入できる映像を構築すること。
今回の制作では、この2点を常に念頭に置き進行していました。
3D化したキャラクターのイメージ

本作は、既にアニメシリーズとして世界的にもファンが多い作品です。そのため求められるビジュアルの方向性は明確であり、私たちも、これまで東京喰種の世界をつくってきたアニメーターの方々をはじめ、多くのクリエイターの表現・技術を改めて一から学ばせていただく姿勢で臨みました。
技術面の詳細は後ほど解説しますが、制作開始前の段階で、3D化したキャラクターの“最終的な見え方”を共有するため、クライアント様と弊社の間で、上のような表情集の資料を作成しました。
画像は完成モデルにポーズや表情を付け、弊社のルックチームが最終画を想定して仕上げたチェック用の画像です。左が金木、右が亜門の表情集になります。原作やアニメの表情設定を踏まえ、ATパートの演出意図に沿うものを中心に抽出しています。例えば金木は、アニメ1期のヤモリ戦を基にした表情が多く、当時の狂気や冷たさといった印象が伝わるよう意識しています。
亜門については、アニメ2期終盤の戦闘シーンから特徴的な表情を拾い上げています。戦闘主体のATパートという特性上、激しい表情が多めにはなりますが、臨場感を損なわない範囲でコントロールを行いました。
「キャラクターの“らしさ”を保ちながら、もとのモデルをどう崩すか」、それはCGに限らず難しくも楽しい工程で、今回も多くの試行錯誤を重ねています。

こちらがその他のキャラクターの表情集です。左上からヤモリ、霧嶋絢都、鯱、左下に鈴屋什造、梟、有馬貴将と続きます。
今回関わったATパートに登場するキャラクターは、すべて事前に表情集を作成しています。金木のように複数パートに登場するキャラクターについては、パートごとに異なる表情集を用意し、演出意図の違いに対応できるようにしています。
特に有馬は、アニメで描かれていない場面を映像化する部分もあったため、より原作の読解と設定の掘り下げを行い、微妙な表情の解釈に最も気を配ったキャラクターです。元々表情の変化が少ないキャラクターであるため、わずかな違和感が“キャラ解釈のズレ”につながりかねず、非常に繊細なディレクションが求められました。
このように、各パートで異なる衣装・テンション・演出に対応するため、印象的な原作表情の抽出、パートに応じた表情の想定を行い、モデル完成と同時進行でセットアップ・ルック開発を進めていきました。
ルック反映前後の表情資料

画像に映っている資料について補足します。左側が、モデリングがフィックスした状態に最小限のボーンやモーフを先行で仕込み、表情までセットアップした“ルック反映前”データです。右側が、その左のモデルをもとに、弊社ルック班がルックを当て込んだ“ルック反映後”のデータで、ビフォー/アフターとして確認できるように作成しています。
進行としては、まずモデルが固まった段階で、スピード最優先で必要なボーンとモーフを組み込み、表情を構築。そのデータをすぐルック班へ渡し、ポーズや表情を付けた状態を前提にルックを作成してもらいました。ルック発注時点で、用途や目指す表現方向は担当者へ事前共有しています。
この工程を早期に挟み、ルック班と細かくすり合わせることで、表情や骨格まわりの整理が初期段階で完了し、後工程の大きな土台を作ることができました。結果として、先ほど紹介した表情資料が完成したのですが、この「早い段階でのルック精度の底上げ」がディレクション面で非常に大きなアドバンテージとなりました。
仮にこの工程を挟まずに本制作へ入ってしまうと、シーンごと・カットごとの細かな演出意図やニュアンスを拾いきれず、ディレクター側の指示が曖昧になったり、リテイクが増えてしまう可能性があります。最悪の場合、描きたい表情や空気感をスケジュールの都合で諦めることにもつながります。そうしたリスクを避けるためにも、今回の工程は欠かせないものでした。
この資料を基準として、
・カット表現に必要な要素の整理
・キャラクターらしさを担保するためのチェックポイント抽出
・演出意図の説得力と精度の向上
といった部分に大きく貢献してくれたと実感しています。
LightWaveとBlender比較

こちらが、実際にその工程を経て制作されたカットの一部です。アニメ放映当時の“手触り”を可能な限り残すというコンセプトに沿い、一定の温度感を保てたのではないかと考えています。
前段のルック工程があったことで、「このキャラはこのカットでどう見せたいか」「影やタッチの方向性をどう統一するか」といったインテンションをディレクター側で明確に持った状態でチェックへ臨むことができました。その結果、限られたスケジュールの中でも、より精度の高いフィードバックに時間を使えるようになっています。
そして、この工程で最も重要な役割を担ったのが、弊社ルック開発チームです。もともと通常進行のスケジュールと並行で、この実験的な工程を挟み込んでいるため、テンポよくイメージを具現化し、現場へ戻せる経験値やフットワークの軽さが必要でした。今回のクオリティが実現できたのは、全セクション、特にルック班の尽力があってこそだと強く感じています。
なお、本案件ではAT以外のパートは従来どおりLightWaveをメインに制作していましたが、ATの6パートはアセット単位で独立性が高く、それぞれが適度な尺で構成されていたため、制作体制の改善を目的としてBlenderを導入しました。また、社内のツールや文化の統一、業界全体でのBlenderユーザーの増加なども背景となり、導入に踏み切っています。

導入結果が上の比較画像になります。左がLightWave、右がBlenderです。シーンの色味やキャラの精神状態による微差はあるものの、ソフト間で大きなイメージの乖離はなく、同一作品として自然に並ぶクオリティに仕上がっています。言われなければ別ソフトで作られたとは分からないレベルまで詰めることができたと感じています。
本作品のワークフロー

本作では、まず既存のLightWave班が構築してきたワークフローを原型にしつつ、これをどのようにBlenderで再現できるかという視点から導入と検証を進めていきました。画面にあるのは従来のLightWaveによるワークフローの大まかな流れで、モデリング、セットアップ、レイアウト・アニメーション、レンダリングという一般的な工程に加えて、モデリングから派生する「ルック開発」が特徴的な部分です。
ルック開発では3Dセルルックを作り、カットごとに印象をコントロールできる仕込みを行い、その後レンダリングセクションがアニメーション済みデータに本番ルックを適用して、先ほどお見せしたような変化幅を実現します。
セットアップとルック開発は並行で進められるため、データ間の差異が生じにくく、必要な絵作りの要素が初期段階で抽出でき、安定したルックデブを早い段階から行えるというメリットがありました。両セクションが密接に連携することで、レイアウト・アニメーション前にデータを一つに統合し、後工程に渡す体制を整えることができています。
こうした従来フローを軸に、Blender移行の検証を進めていきました。移行にあたっては、「Blenderでできること / Blenderできないこと」を共有するため、急ぎ社内向けのティップスサイトを作成しました。方向性は私が示しつつ、現場の提案も柔軟に取り入れ、スピード重視で構築しています。
この仕組みによって、途中参加のスタッフでも参画しやすい環境を整えることができました。また、チーム自体が少人数で構成されていたこともあり、密接な情報共有ができた点も助けになりました。
一方で、LightWaveとBlenderでは内部構造が大きく異なるため、ワークフローに関わる課題も多く、特にLightWave特有の「モデラー」と「レイアウト」による参照構造がBlenderには存在しない点は大きな違いでした。LightWaveでは、データをレイアウト側に読み込むだけで参照状態が成立し、大元を修正すれば一括反映されるため、後からの大規模更新に非常に強いという特徴があります。
さらに、弊社と株式会社YAMATOWORKSで共同開発したプラグイン『YS:ObjectReplacer』を用いれば、レイヤー名さえ一致していればモデルを半自動で置き換えられるため、アニメーションと並行してルック開発を行うフローが可能になっていました。
この仕組みをBlenderでも再現する必要があり、アドオン開発やワークフローの改修が求められました。同時期に弊社初のテクニカルアーティスト班が設立されたこともあり、LightWave文化とBlender文化のすり合わせを行いながら、後更新に柔軟に対応できる仕組みづくりを協力して進めました。
とはいえ両者の違いによって残された課題もまだ多く、今後も相互理解を深めつつ、より円滑なBlenderワークフローの構築を進めていく予定です。
ルックデブメイキング
大橋:
ここからは、実際にBlenderで行ったルック開発や、その際に直面した“ソフトが全く違うことによる問題点”、そしてそれらの解消方法について話していきます。
使用ソフト / プラグイン

今回Blenderパートで使用したソフトがこちらになります。Blender自体は当時最新の3.6を使用していました。また『Pencil+ 4』も、それに対応したものを使っています。
UV展開については、LightWave時代は『MODO』を使用していたのですが、最初は「Blenderで全部完結できないか」と考えていました。しかし、Blenderに触れたことのある方なら分かる通り、UV展開はとても難しいです。便利なアドオンも多数ありますが、それを使っても、LightWaveのワークフローでMODOが出していたような“綺麗なUV”に仕上げるのがどうしても難しく、この部分だけは従来通りMODOを使うことにしました。
弊社のレンダリングワークフローは、CG上で最終ルックまで作り込んでレンダリングする方式ではなく、BlenderやLightWaveから多種類の素材を出力し、それをAfter Effects(以下、AE)で合成して最終ルックを整えるスタイルです。そのため、AEも2020を使用していました。
出力素材

AEでコンポジットするにあたっては、特に金木のように複数のシーンに登場するキャラの場合、シーンごとに髪色や服の色が変わる“シーン色”への対応が必須です。トレス線のあるキャラなどはライン色にも注意しながら素材を出力する必要があります。
今回出力した素材はキャラによって多少違いますが、基本は6素材です。赫子(かぐね)を持つキャラは、ここにさらに複数の素材を追加しています。
左上がベースカラー(ノーマル色)、その右がマスク素材のSH素材。左下はUV素材で、自分たちで展開したUV情報をそのままレンダリングしています。さらに、カメラから見た法線方向を色で示すグラデーション素材、そして細くて見えにくいのですがライン素材(実線色)を出しています。
この6素材をレンダリングするうえで、特に困ったのがUV素材とグラデーション素材です。今回は説明していませんが、赫子に使っていたプロシージャル素材もLightWaveとの差異が大きく、苦戦しました。
LightWaveとBlenderノード比較

大変だった理由のひとつが、LightWaveとBlenderでプリセットの量と種類が大きく違ったことです。LightWaveには特効素材やプロシージャル系のプリセットが豊富で、撮影的な質感追加も簡単でした。
一方でBlenderには、同等のプロシージャル表現がそもそも多く用意されておらず、必要であればノードを一から組むところから始める必要がありました。

また、先ほど触れたグラデーション素材ですが、LightWaveでは「Tangent space(XYZ) 」というカメラ基準のサーフェス法線情報を、ボタン一つで出力することができました。一方Blenderでは、同等の情報を出すためにはノードの組み立てが必要でした。
LightWaveではプリセットがあったため、深いノード知識が不要だったのですが、Blenderではまずノードの学び直しからのスタートとなりました。しかし、プロシージャルやグラデーションを再現するためのノード知識を得たとしても、ルック班全員が毎回これを一から組むのはあまりに負担が大きいです。
そこで、弊社テクニカルアーティスト班と協力し、画像右側のような「プロシージャルツール」を開発しました。ノード構成を保存し、出力サンプルを一覧表示し、ワンクリックで呼び出せるアドオンとしてまとめたもので、これによりBlenderでも柔軟なルック開発が可能になりました。
Blenderのレンダラ―比較について

もう一つ起こった問題が、先ほどの画像にもあったUV素材です。私たちの班では、CG上からUV素材をレンダリングし、AE上でテクスチャを貼り込む手法でカットごとのルック調整を行っています。そのため、このUV素材は非常に重要です。
しかし初期の検証では、スピードを優先して全素材を『Eevee』で出力していたため、UV素材がかなり粗い状態でレンダリングされてしまいました。確認したところ、正しい精度でレンダリングするには『Cycles』が必要であることが分かりました。
そこで最終的には、カラーやベタ素材のようなスピード重視の部分はEevee、UVやグラデーションのように繊細さが求められる素材はCycles、といった形で1キャラの中でもレンダラーを使い分ける方法を採用しました。これにより、Eeveeの速さを活かしつつ、必要な部分だけCyclesで綺麗に出すという形が実現でき、LightWave時代と遜色ない品質とスピード感でレンダリングが行えたと感じています。
また、東京喰種ではルックデブに加えて撮影も行いました。この撮影作業もルック班が担当しています。臨場感を出すためにカメラが激しく回り込むカットなどがあり、『ReelSmart Motion Blur』を使うためのベクター素材をBlenderで出力する必要があったのですが、これがBlenderだと難しく、有料の販売アドオンなどに頼る形で対応する必要がありました。
ジオメトリーノードの活用

ここまでBlenderで苦労したところを中心にお話ししましたが、Blenderの知識が積み上がってくると、ルック開発においてはむしろメリットの方が多いと感じるようになりました。
例えばBlenderの特徴であるジオメトリノードを使うと、別のオブジェクトの法線をシェーダーノード側に引っ張ってくることができます。つまり、モデルが元々持っている法線とは別に、用意したシンプルなオブジェクトのシェーディングを“転写”することが容易にできます。これにより、カットごとにリアル寄りの顔影や、アニメ的なハッキリとした顔影などを数値ベースでミックスし、カット単位で柔軟にルックを作れるというメリットが生まれました。
LightWaveでは、モデラーとレイアウトの仕組みにより全カットのデータがひとつのモデルに紐づく構造になっていたため、モデルを更新すると全シーンのモデルが同時に更新されるというつながりの強さが利点でもありました。
一方でBlenderはシーンごとで独立しているため、カット単位で自由にシェーディング調整ができる拡張性があります。これはルック班として非常に大きなメリットでした。
Pencil+ 4について

また、『Pencil+ 4』をBlenderで使えることも大きな利点でした。LightWaveでは、ラインレンダリングを行う際にカラーとラインでシーンを分けてレンダリングする必要があり、最終素材が分離してしまうというデメリットがありました。
一方Blenderでは、1つのシーン上でカラーとラインを同時にレンダリングでき、さらにラインセットIDを使えば1シーン内で複数ライン素材を分けて出すことも可能です。トレス線の多いキャラでは非常に恩恵が大きいと感じています。
Blenderで精力的にチャレンジしたこと

ルックデブのワークフローとしては、これまで通り複数素材をレンダリングしてAEで合成し最終調整を行っています。ただし、AEを通さないと最終ルックを仕込めないというデメリットもあり、これが将来的な課題になります。
今後の目標としては、Blenderのコンポジットノードやジオメトリノードを活用し、AE作業量を減らす、さらには「Blender完結のルックデブ」を実現することを考えています。これが可能になれば、AEのプラグイン環境に依存することなく、誰でも柔軟にアニメーションからレンダリングまで対応できるようになるはずです。
質疑応答
Q1. 作画的なケレン味のあるエフェクトが多く見られました。特に煙や火花など、手描きのような質感が強かった印象ですが、これらのエフェクト表現にはどのように向き合い、どんな方法でCG上に落とし込んだのでしょうか。
今回の映像では、まず「作画らしさをどれだけ再現できるか」が大前提にありました。そのため煙のような要素については、最初から作画の雰囲気に寄せることを方針として決めており、実際に作画の煙素材をそのまま使用しているカットも多く存在します。
一方で、カメラが大きく回り込むショットなど、平面の作画素材だけではどうしても破綻してしまう場面もありました。そういったカットでは別のアプローチを取り、作画の“原画風の煙の形”をまず一枚だけポリゴンでモデリングし、それを長い一本の煙として構築した上で、長いボーンを通してアニメーターが手動で変形させるという方法を採用しました。いわばディスプレイスメント的に揺らしながら形を動かすような作り方で、3Dでありながら手付けのニュアンスを残す工夫をしています。
火花についても、カメラが固定されている部分は作画の止め素材を使用していますが、カメラが回り込む場面ではオブジェクト連番として3Dで動かした素材を流す形を取りました。このように、カットごとに最適な手法を選択しつつ、作画の雰囲気を損なわないよう丁寧に調整し、場合によってはアニメーター側からの提案を取り入れながら、作画素材と3Dの動きを自然につなげていくことを意識して制作しています。
Q2. 3Dでは再現が難しい影のつけ方が多く見られました。特にカメラが大きく動く中で、どのように影表現を成立させていたのでしょうか。テクスチャ対応なのか、別の方法なのか、可能な範囲で教えていただきたいです。
影表現については、弊社ではアニメーターが影をつけるのではなく、ルック班の“影付け専任”のセクションが担当しています。アニメーターはあくまでキャラクターの動きやエフェクトなど、画面上のアクションに集中し、影や最終的なセルのニュアンスづくりはルック班が後工程で仕上げるという分業体制になっています。
影の制御には、先ほど触れたUV素材が非常に重要で、キャラクターの顔や体のUV情報をAE上で読み込んで、そこに影用のテクスチャを貼り付けるようにして作っています。これにより、3Dの形状にぴったり沿った影を加えたり、作画らしい理想的な影形に寄せたりすることができます。
また、カメラが大きく回り込むカットでも、AE上でUVに沿って影を送りながら調整することで、作画的な影の流れを成立させています。必要な場合は1フレーム単位で影形を描き換えることもあるため、かなり手作業による微調整が入っています。
3Dの限界を補いながら、作画らしい影の付け方を再現するために、テクスチャワーク・UV活用・AEでの手付け処理を組み合わせるかたちで対応していた、という流れになります。



