【session1】メタバースエンターテインメントの今と未来【ウェビナーレポート】

7月14日(木)に配信された「世界トレンド1位2位独占!キズナアイxRライブの作り手が語るメタバースの現実」より、セッション1「メタバースエンターテインメントの今と未来」のウェビナーの内容をご紹介します。

  • 主催 :株式会社Too
  • 協力 :Activ8株式会社
  • 協賛 :オートデスク株式会社
  • 講師 :Activ8株式会社 
    代表取締役 大坂 武史 氏

会社紹介

会社紹介

まずは、私が代表を務めるActiv8株式会社について紹介します。設立は2016年で、従業員数は約30名の会社です。会社のビジョン「生きる世界の選択肢を増やす」をもとに、メタバースという言葉が一般的ではなかった2016年の創業当初から、「デジタル空間上であれば生きる世界を増やせる可能性がある」と考えて活動しています。事業を展開しているメタバースエンタテインメント業界において、メタバースエンタテインメントを1つの産業と言われるまで押し上げたいという会社のミッションを掲げています。

Activ8 2つの事業

Activ8には「メタバースIP事業」と「xRライブ事業」の2つの事業があります。メタバースIP事業では、メタバースにおいての『VTuberキズナアイ』のプロデュースや、VTuberやバーチャルアーティストのプロデュースを主に行っています。

xRライブ事業では、メタバースに関係するxRライブに代表されるライブ・興行ビジネスを行っています。xRライブはステージビジネスであるため当然ステージに立つアーティストが必要ですが、それらアーティストがVTuberやバーチャルアーティスト、バーチャルタレントというのが特徴です。

メタバースIP事業×メタバースエンタテインメント事業の相乗効果が生む力

これらのシナジーを生かして事業を展開していることが、Activ8の特徴だと考えています。

メタバースとはなにか?

本ウェビナーのタイトルにもなっているバズワード、「メタバース」について説明します。

メタバースの実現は容易ではない

Activ8でのメタバースの定義は、アマゾン・スタジオの元戦略責任者でメタバース投資家としても知られるマシュー・ボール氏が提唱している定義を参考にしています。メタバースとはデジタル空間にある仮想世界ですが、上の図にはその仮想世界が成立するために必要な8つの要素について記載しています。

8つ全部を説明すると多くなってしまうため、3つだけをピックアップして説明します。まず「インタラクティブ」ですが、デジタル空間内においてもペットボトルを持ち上げたら持ち上がるように、現実の物理世界と同様に物事が進むことをインタラクティブ性と呼んでいます。

次に「同時接続数」です。私たちがメタバースに期待するのは、「リアルの空間と同じ機能・体験」です。そのため、集めようと思えば1,000人から10,000人は集められる環境が必要だと考えています。

また、「永続性」も重要です。現実世界は良くも悪くもリセットはできません。しかしながら、リセットされないからこそ様々なものを積み上げることができます。こうした要素がデジタルの仮想世界にも成立したとき、初めて理想とするメタバースが成立すると私たちは考えています。

しかし、実現は簡単な話ではありません。期待されている完璧なメタバース、特に『レディ・プレイヤー1』や『ソードアート・オンライン』のような理想的なメタバースが実現するのは、まだ未来のことということです。私たちとしては5年後に実現すればいい方だと思っていて、場合によっては10年以上先にもなりえると考えています。

とはいえ、さきほどの8つの要素の一部だけを満たすメタバースが不十分ということではなく、その発展途上のメタバースにも意味があると思ってます。

様々なプレーヤーがメタバースの実現を急ぐがまだ道半ば

上図のように私たちなりに整理しました。このように、多くのプレーヤーがメタバースの実現を急いでいることがわかります。

例えば、『FORTNITE(フォートナイト)』のような多人数で戦うタイプのゲームには、雑談しながら遊べるコミュニティソーシャル性があります。しかしバトルロイヤルというゲームの特性上、それ以上の多様性があるコンテンツではありません。

また、同時接続の要素を満たすという点においては、生配信・ライブストリーミングのプラットフォームが該当します。しかしながら、経済圏の構築や永続性に関しては完璧とは言えません。つまり私が言いたいのは、様々な分野で別々の要素を満たしているということです。

未来に訪れるであろうメタバース時代に対して、今は原始的なメタバースの時代と言えます。この原始的で不完全なメタバースも軽視することはできず、むしろ期待していいと思ってます。いつでもどこでもNetflixやYouTubeなどの動画コンテンツが視聴できる現在において、リアルタイム性の高いライブエンタテインメントは、相対的に価値が上がっていると実感しています。

そのため、私たちはこの原始的なメタバース時代にライブエンタテインメントに力を入れています。音楽ライブをバーチャルトランスフォーメーションをすることで、その先に様々な可能性があると考えています。

xRライブとバーチャルYouTuberと『hello, world』

私たちがxRライブに可能性を感じた理由として、2016年からバーチャルYouTuberを使ったバーチャルライブをやってきたことが大きいです。キズナアイというタレントを使い、xRライブの『hello, world』というライブシリーズを2018年から2022年まで展開していました。ここで、私たちがやってきたことや可能性を感じたことを実際に見ていただくために、まずはこちらの動画をご覧ください

こちらが2018年に開催したファーストライブのhello, worldで、Zepp東京とZepp大阪で2Daysのライブを行いました。この時は現地に観客を入れて、かつオンラインでも配信をする形式で行いました。会場に大きなディスプレイを置いて本当にその場にキズナアイが存在しているような作りで、観客の方とのやりとりなども取り入れながらライブを作っていきました。

これが私たちが一番最初に開催したxRライブです。次に、2年後の2020年に開催した『hello, world 2020』のライブの映像です。

この時はライブハウスに人を集めずに、YouTubeとbilibiliでのオンライン配信だけでライブを開催しました。実写合成をしたARライブで、DJやバンド、ダンサーの方達とキズナアイが共演する形式のライブでした。

リアルタイムでの開催だったこともあり、YouTubeではスーパーチャットと呼ばれる投げ銭のシステムを採用しました。この時は、投げ銭をすることで画面上に流れ星が増えるという演出を試みとして導入しました。そのため、動画内で流れ星が多く流れているシーンは、観客・ファンの方がスーパーチャットで沢山応援してくださったということになります。

そして最後に、今年2022年に行ったhello, worldのラストライブです。ライブ部分のみの動画ではないため、[1:10:15〜]のあたりから見ていただければと思います。

こちらもコロナ渦だったこともあり、オンライン配信のみでの開催でした。誰でも楽しめるように、無料のオンラインライブという形で行いました

メタバースエンターテインメントの今と未来

ここからは上の表をベースにして、それぞれのhello, worldについて話を進めていきます。

hello, world2018はZepp東京とZepp大阪で開催し、オンラインでも配信をする形式でした。また、ヘッドマウントディスプレイをかぶって360度の空間に投影する「VR空間」などは実装しませんでした。「生身」と「アバター」の列に関しては、DJの方など生身の人間とCGキャラクターも出てきているため○が付いてます。これは、全てのhello, worldに共通しています。

hello, world2020はコロナ渦だったこともあり、オフラインのリアルな会場はありませんでした。それに関しては2022年も同様です。しかし、「VR空間」については、2020年と2022年でそれぞれ▲と○になっています。hello, world2020は配信のみのライブだったため、実写のライブ会場でカメラを回すだけだとバーチャルキャラクターを使う意味が薄まってしまうという懸念がありました。そこで、さきほど動画でお見せしたようなカメラトラッキングを用いて、CGの空間とリアルの空間を組み合わせました。そのため、CGの空間とリアルの空間が半分ずつ混ざっているということで▲にしています。

hello, world2022では割り切って、実写の映像ではなく全てCG空間内でライブを行いました。そのため、100%VR空間という評価で○としています。

バーチャルライブの各名称について

ここからは、xRライブに代表されるバーチャルライブの数ある名称について、それぞれを簡単に整理していきます。特に何か定義されているわけではないため、人によって意味が異なるというトラブルが起こることがあります。名称としては、

  • xRライブ
  • VRライブ
  • ARライブ
  • バーチャルライブ
  • オンラインライブ
  • メタバースライブ
  • 無観客ライブ

などがあります。

先に言わせていただくとこれは私たちなりの整理であり、中には違う意見もあると思います。それでも、各名称に対しての目線をひとまずこの場で合わせられればと思い、このようにまとめています。

まずxRライブですが、定義が曖昧なところもあり、これらのライブを複数組み合わせている場合にxRライブと呼んでいます。VRライブとは、主にヘッドセットなどのVR機器を用いるライブの総称です。

そしてARライブは、初音ミクさんがやっているように会場に透過ディスプレイやLEDを置き、キャラクターが実際にいるような形で行うライブです。バーチャルライブはこれらライブの名称全てのことであり、全体の総称として使っています。細分化していく際に、具体的にどのライブに該当するのかを追求していくイメージです。

オンラインライブはCGかリアルに限らず、配信形式のライブのことを指しています。メタバースライブは、バズワードであるメタバースの何かしらの要素が組み込まれているライブだと私は感じております。無観客ライブは文字通り、観客がいないライブのことです。

数字でみるhello, world 2022

ここからは、hello, world2022に関してデータを見ていきます。

数字でみるhello, world 2022

上の図のように、私たちの想像を超えるようなお客様やファンの方々にオンラインでご来場いただきました。具体的に言うとYouTubeの同時接続数は14万人弱くらいあり、YouTubeのチャンネル登録者数はこのライブだけで3.4万人も増えました。

Bilibiliの方にもチャンネルがあり、YouTubeと同時にライブを開催したところ登録者が10万人以上増える結果となりました。ライブから興味を持ってチャンネル登録をしていただけて、私たちとしても嬉しい結果になりました。

では、ここからはhello, world2022が熱狂を生んだ理由について話をしていきます。キズナアイが2016年から活動を始めた時にはバーチャルYouTuberなんて言葉もなく、バーチャル市場という言葉を初めて彼女が発して、そこから徐々にバーチャルYouTuberと呼ばれる人たちが増えていきました。今では、最近話題のANYCOLOR株式会社さんの『にじさんじ』や、ホロライブさんの配信者の方にアバターを被せているVTuberなども出てきています。もはやアバター文化というよりも、「アバタービジネス」と言えると思います

その原点であるキズナアイが集大成としてラストライブをするときに、プロデューサーには「そういった関係している方々と一緒になってステージを作っていきたい」という思いがありました。

キズナアイは「みんなとつながりたい」というキャッチフレーズのもと、それを使命として活動をしてきました。そのため、YouTubeという無料のオンラインのプラットフォームで国境を越え、ライブで世界中の人とつながることができました。そういったコンテキストをうまくコンテンツに昇華していくことにこだわったからこそ、あの熱狂は生まれたのだと私たちは考えています。

質疑応答

Q1. メタバースの世界に国境は存在するのでしょうか?

これは作り方次第だと思います。メタバースはマルチバースと呼ばれることもあり、1つだけに限定されるものではありません。自分の理想に共感する仲間と一緒に世界を作るように、色んな世界があっていいと思います。

そのため、個人的にはわざわざ現実世界の国境という理論を持ち込む必然性はないと思います。持ち込みたい人がいるのであれば持ち込めばいいだけであり、そういったことに従わなくてもよいものがこれから私たちが作るメタバースだと思います。今は過渡期のため何とも言えませんが、そうであってほしいと私は思います。

Q2. Activ8株式会社が会社として注力しているのはリアルタイムの「バーチャルオンラインライブ」なのでしょうか?それともモーションも整えられて編集された「バーチャルライブ」なのでしょうか?

キズナアイに関しては「みんなとつながりたい」というテーマがあり、彼女自身のタレントとしての願いを叶えることが最優先でした。そのため、より多くの人に見てもらえるオンライン&無料のバーチャルオンラインライブのリアルタイム性を重要視していました。

今は様々なキャラクターやアーティストのバーチャルxRライブを作っていますが、1つ1つの方法、つまりコンテキスト(文脈)によってそれぞれ作り変えていくことがポリシーだと思っています。

コンテキストとコンテンツはどちらも大事だと思っています。例えば初音ミクさんであれば、マジカルミライでいつもニコニコ動画で見ている彼女を現実世界にいるように感じられることなどがありました。あれは初音ミクさんのコンテキストだからこそ、コンテンツとしてあの形がベストなのではないかと私は解釈しています。

Q3. hello, worldにおいて、当初は実装を構想するも、開発難度やコスト、要求スペック、その他やむを得ない事情により実装に至らなかったものはありますか?

hello, world2022に関しては、当時トレンドだったリアルライブで使われる照明の信号を取り込む手法の導入を見送りました。手法としては既に社内では確立していたのですが、限られた期間内で優先度をつけて開発していたため、見送る結果となりました。

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