【イベントレポート】映像制作の現場で考える、3DCGと生成AIの連携 – Autodesk CG Festa 2026(株式会社VONS)

2026年4月22日(水)に開催された「Autodesk CG Festa 2026」より、株式会社VONSによるセッション「映像制作の現場で考える、3DCGと生成AIの連携」の内容をご紹介します。


セッション概要

日進月歩で進化する生成AIは、映像制作の現場においても無視できない存在となっています。一方で実務的には、「AIをいかに意図どおりに制御するか」という大きな壁が立ちはだかっています。

本セッションでは、3DCGの持つ確実な構造と、AIの持つビジュアル生成力をどのように組み合わせるべきかを軸に、現時点での「使いどころ」と「注意点」を整理します。AI活用のメリットと課題、そしてワークフローを破綻させないための工夫を、検証用のサンプルを交えながらご紹介します。

【主催】株式会社Too
【特別協賛】オートデスク株式会社
【協賛】3Dコネクション株式会社
【登壇者】株式会社VONS 代表取締役 片岡 竜一 氏
     株式会社VONS 映像部部長 大里 宗也 氏

登壇者・会社紹介

株式会社VONS 代表取締役の片岡竜一です。本日は、当社の映像部部長である大里とともにお話しさせていただきます。

Autodesk CG Festa 2026 映像制作の現場で考える、3DCGと生成AIの連携 01

当社は、1997年に画像処理の専門会社として設立されました。設立から間もなく30年という節目を迎えるにあたり、社名を株式会社ヴォンズ・ピクチャーズから株式会社VONSへ変更し、再スタートを切っています。

設立当時の90年代~2000年代は、今ではスマートフォンで当たり前に行える画像処理にも数億円規模の投資が必要だった時代でした。それがMac上で扱えるようになり、PhotoshopもようやくレイヤーがVer.3.0前後で使えるようになった頃です。

メモリやCPUのスペックも現在とは比較にならない水準でしたが、それでも「今までと違う表現ができるのではないか」というワクワク感がありました。そして、2000年にウェブ部、2010年には映像部が立ち上がりました。

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現在では、「Gra/ft(グラフト)」という静止画領域、「.fps(エフピーエス)」という動画領域、「.axt(オーギュメント)」というデジタル領域の3つのサービスを提供しています。

当社は「デジタルでクラフトする」ことを掲げており、技術と感性の共存を大切にしています。そのため数年に一度、大里を中心に大きなR&Dに取り組んでいます。

12年前の「4Kシネマグラフ」を起点に

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本日のテーマは、12年前に当社が制作した「4Kシネマグラフ」を、現在の3DCGとAIでどこまで拡張できるのかという実験です。AIでできることを、実際に手を動かしながら検証していきました。

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4Kシネマグラフとは、グラフィックでありながら一部だけが動いている表現です。12年前はまだ広告の媒体がポスターなどの紙であり、それが街中でデジタルサイネージへと置き換わり始めた時期でした。その中で、デジタルの可能性を模索するために、こういったものを制作していました。

街なかでのタッチポイントは1〜3秒とごくわずかなため、起承転結を語るのではなく、グラフィックとしての強さを保ちながら、世界観として動いて見える表現が向いているのではないかという発想で制作したものです。撮影にはREDのEPIC(最大5〜6K)を用い、プロ仕様のシネマカメラで4Kが撮れるようになったタイミングの検証も兼ねていました。

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被写体は半魚人のキャラクターで、ハリウッドのメイクアップアーティストに特殊メイクを依頼しました。テグスで部分的に動かしたり、口から泡が出るワンアクションを加えたりしています。それから12年が経ち、当社ならではの映像の作り方や拡張の仕方を、「一枚からすべてに」という初心に立ち返って見直していく取り組みです。

本日お話すること

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内容としては、上記の画像にある5つの項目に沿って進めていきます。それらに議題に入る前に、AI×映像生成が注目を集めている今、なぜ3DでのAI活用が必要なのか、という点に触れていきます。

映像の世界では、いまやAIアプリが数多く登場し、手軽に映像が作れるようになっています。しかし、巷で見かけるAI映像は、「たまたまうまくできたもの」が多いのが実情です。AIサービスを使うと分かりますが、プロンプトで指示してもそのとおりにはなりません。仕事として成立させるうえで重要なのは、「制御と一貫性をどう担保するか」という点です。

その点、3DCGであれば同じことを何度でも試すことができ、カメラのパース感も正確に調整できます。これを土台にして映像化することが、現時点で仕事として成り立たせる最も確実な方法だと考えています。

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こちらが実際の4Kシネマグラフの撮影をした際の画像です。このように特殊メイクを施し、動画を撮影しました。

AIで4面図を生成する

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人物の画像を立体化するには、まず4面図が必要になります。今回はバストアップの元画像をもとに、ChatGPTで4面図を生成しました。

与えたプロンプトの要点は次のとおりです。

「この画像をもとに、3Dモデリング用の正確な前後左右の4面図を生成してください。顔の形状・比率・質感は元画像を維持してください。歪みのない正投影(オルソ)で、真正面・真横・真後ろのビューを作成してください。背景はシンプルで構いません。」

一度で仕上がるわけではなく、何度も生成したなかから良いものを選んでいます。カジュアルに「ChatGPTで作りました」と言える時代になりましたが、ChatGPTがなかった頃を考えると、わざわざ撮影の場を設け、特殊メイクのアーティストを呼んで素材を作るか、フォトリアルに描ける3Dクリエイターへ時間とコストをかけて依頼するしかありませんでした。それが手軽に実現できるようになったのは、とても大きな変化と言えます。

4面図をもとにAIでモデリングする

続いて、生成した4面図をもとにAIでモデリングを行います。この工程は現状ローカル環境での実行が難しく、今後ローカルへ降りてくるかも未知数です。そのため、現時点ではオンラインサービスを利用します。サービスは数多くありますが、今回は『TRIPO』、『Hitem3D』、『Meshy』の3つを使い、簡単に比較しながら進めました。

AIモデリングサービスの比較

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TRIPOは、全体的にディテールを彫りを深めに出してくれる傾向があり、鱗の形などもかなり細かくモデリングしてくれました。

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Hitem3Dは、凹凸をポリゴンによるメッシュで表現したり、生成し直すと今度はテクスチャーで表現したりと、生成ごとに作り方が変わる、ややムラのある印象でした。

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Meshyは、生成ごとのムラが少なく、比較的安定した状態で出力してくれました。今回のテーマは右のオリジナル画像に近づけることだったため、それに最も近い結果が得られたMeshyを採用しています。オリジナルにはない頭部の形状もAI側で補ってくれたのですが、いわゆる半魚人として思い描くイメージにうまく合致していました。

生成にかかる時間は、サーバーの混み具合によって5~10分と前後することがあります。また、前述の通り一度でここまで到達できるわけではなく、何度も出し直しを重ねています。

ハイメッシュとUVの課題

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今回はできるだけ画像の情報を取り込みたかったため、ハイメッシュな状態で生成し、75万ポリゴンで取得しました。ただし、これに付随するUVは細かく分断されすぎており、パッと見では判別できない状態です。このままではMayaや3ds Maxでの微調整がほぼできないため、整えていく必要があります。

AIによるポリゴンリダクションとテクスチャー調整

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「ポリゴンリダクション」は、Mayaや3ds Maxにも備わっている機能ですが、今回利用したMeshyにもこの機能があったため、テストを兼ねてAIで実行しました。結果として、75万ポリゴンを5万ポリゴンまで削減しています。

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注目すべきは、眉まわりなど形状の流れに沿ってポリゴンの向きをきれいに整えてくれた点です。さらに、生成直後は編集が煩雑な三角ポリゴンだったものを、扱いやすい四角ポリゴンへと整えてくれました。

ただし、ポリゴンリダクションをすると凹凸が失われ、表面がなめらかになりすぎてしまいます。肌の部分はそれで問題ありませんが、問題になるのは、半魚人のゴツゴツした部分はディテールを残したい点です。そこでMayaの転写機能を使い、もとのハイポリゴンが持つ凹凸データを部分的に転写しました。先ほどの画像右側の上段がテクスチャ、下段が凹凸を表現するノーマルマップで、同様の役割を持つディスプレイスメントマップも併せて出力しています。

AIモデリング → Mayaで調整

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このようにMayaで調整することで、左側画像のオリジナルの印象にかなり近いモデリングデータになりました。AIを使ったこの一連のプロセスにかかった時間は、おおむね2日ほどです。一から作る場合と比べると、スピード感が大きく異なります。

AIで4面図を生成 -全身-

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映像化を考えるとバストアップだけでは不十分だったため、全身のデータも用意することにしました。基本的なワークフローはバストアップと同じですが、全身の4面図はChatGPTではなく、「Gemini(Nano Banana)」で生成しています。これも徛来であれば、全身分の特殊メイクや、イラストレーターによる作画に相応のコストがかかる工程でした。

全身モデルのモデリング

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全身画像からモデリングすると、どうしてもバストアップよりディテールが甘くなってしまいます。今回はバストアップのカットも併用する想定だったため、先に作ったバストアップのデータの頭部だけを差し替え、テクスチャを調整して完成としました。ベースをAIで作り、細かなクリエイティブ作業は人力で行うという役割分担です。これだけでも、作業時間の半分以上を効率化できます。

リギングとウェイト調整

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リギングについては、AdobeのMixamoなどでも行えますが、今回はMeshyに備わっているリギング機能をテストとして使いました。そのうえで、ジョイントの調整や筋肉まわりのウェイトペイント調整はMayaで手作業を行い、アニメーション用のデータを仕上げています。

AIモデリングのまとめ

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AIを使うことで、一からモデリングする場合に比べて圧倒的に時短になりました。加えて、AIサービス側がポリゴンリダクションのような機能を実装し始めている点は、プロユースを意識し始めている表れだと感じます。1年以上前からAIモデリングのツールは使い始めていましたが、当時はポリゴンリダクションも、4面図を読み込んでモデリングする機能もありませんでした。

カジュアルに使える段階を過ぎ、よりプロに向けた機能の実装が進みつつあると見ています。3Dクリエイターが自分のツールとしてAIを使い始める時代が、すぐそこまで来ているのかもしれません。

レンダラーとしての生成AI

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ここからは、レンダリングの話に移ります。3DCGの作業を大まかに分けると、

モデリング

アニメーション(ポーズ付け)

マテリアルの作成・適用

ライティング

レンダリング

という工程になります。

AIの登場により、骨格となる線画の部分、すなわちモデリングは3DCGで作り、質感の設定とレンダリングのパートをAIに任せられるようになってきました。ものの構造の正確さやパーツの正確さは3DCGで担保し、レンダラーとして生成AIを活用する、という考え方です。

生成AIのステップ

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最初から高解像度で出力すると、時間とクレジット(オンラインサービスの利用料)を大量に消費してしまいます。そこで、私が「AI着色」と呼んでいる手法を使います。低解像度で数多く壁打ちし、良いと思えたものだけにアップスケールをかけるという手法です。

1年ほど前から取り入れていて、1年経てばもっと早く高解像度化できると思っていましたが、現実にはそうなっていません。そのため、最初の段階で壁打ちを重ねるやり方が有効だと考えています。

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低解像度の段階では、真っ直ぐであってほしい部分が崩れていたり、規則的に並ぶべき部分が不規則になっていたりと、形が整っていません。これをアップスケールする際にきれいに整えてくれるため、3DCGの下描きに着色をしたあと、清書をするようなイメージです。ここでは特別なプロンプトはほとんど必要なく、アップスケール処理だけで自然に修正がかかります。

バリエーション

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バリエーション生成は、AIが最も得意とする領域だと考えています。

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たとえばバルコニーの形状を変えたいといった場合、従来はモデリングやマテリアルの作り直しといった細かな作業が発生しがちでした。バリエーションは、クリエイティブの本命というよりも、それを固めるためのサブ的な要素であることが多い印象です。それよりも本命に時間を使いたいと考えると、AIが担えるようになったことの意義は非常に大きいといえます。

レンダラーとしての生成 – まとめ

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線画のデータをプロンプトだけで出そうとしても、屋根の傾斜やサイズ感までを言葉で正確に指示することは難しく、思いどおりには出てきません。そのため、ラフをAIに渡すことは必須だと考えています。そしてそのラフ自体も、カメラレンズ的なパースを正確に調整できる3DCGで作ることが、絵としての説得力を生みます。

仕事では「カメラ的に正しいか」「もう少し広いレンズで見たい」といった要望が必ず出てきます。しかし、線画であってもイラストで描いたものでは、こうした正確な調整は難しいです。

一方で、生成AIは事実と異なるディテールを数多く出してくるため、その点を確認していく必要はあります。とはいえ、細部のハルシネーションのような問題は、構造を3DCGで担保しておくことで安心して扱えます。

レンダラーとしての生成AI -動画-

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動画でも、考え方は静止画と同じです。カメラや人物の動きをプロンプトだけで再現するのは、現時点ではかなり難しいのが実情です。そこで、動きのリファレンスとして動画をあらかじめ作り、加えて色のリファレンスを用意して、AIでレンダリングします。生成時間はおおよそ5分程度ですが、ものによってはさらに短いこともあります。

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色のリファレンスを積み木調のものにすれば、それらしい質感に仕上がります。

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中世ヨーロッパ調にすればその景観になります。ここで一点、特性として押さえておきたいのは、動きのリファレンスの1フレーム目に対して着色しておかないと失敗するという点です。

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最初のフレームと異なるアングルの色リファレンスを与えると、画像のように結果が大きく破綻してしまいます。

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キャラクターの場合も同様で、動きのモックアップを作り、それに対して色のリファレンスとなる絵を与えます。その後レンダリングすることで、狙ったビジュアルへと変換することができます。

AI生成動画を素材にして映像を仕上げる

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ここからは、これまでに作った素材で映像を仕上げていく段階です。動きのリファレンスに対して色のリファレンスを適用していきます。

振り向きの課題と逆再生

1カット目で課題になったのが、振り向きの動きです。後頭部から始まるカットは、最初のフレームに色のリファレンスがないためにAIがその後頭部を「正面」と誤認してしまい、うまく振り向けませんでした。

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これを解決するため、カットを前後で分割しました。正面から始まる素材を生成し、それを逆再生することで「後頭部から始まって振り向く」動きとして成立させています。後半は、後ろを向いて泳いでいく動きをAIに生成させました。

グリーンバックでの合成

ただし、1カットの中で2つの生成物をつなぐと、どうしても差が出てしまいます。今回もっとも目立ったのは背景で、前半は背景がまったく動かず、後半から動き始めるという食い違いが生じました。これはプロンプトでどれだけ指示しても制御が難しく、たくさん生成しても「人物は良いが背景はダメ」という結果になりがちです。

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そこで対策として、生成の段階からグリーンバックにし、合成前提で素材を作りました。動きに対してグリーンの色リファレンスを与えることで、AIがクロマキー素材として生成してくれます。

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背景は人物を消した画像を用意し、それをプロンプトで動画化したうえで、人物と合成しました。

完成した映像

こうして、12年前の素材をもとに仕上げた映像が完成しました。全4カットで構成されていますが、4カットすべてに一貫性を持たせるのは容易ではありませんでした。

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完成版では、カット1のみAIと3DCGのハイブリッドで、それ以外のカットは3DCGのみで制作しています。背景のコンポジットや色調整はAfter Effectsで行いましたが、半魚人のアニメーションなど人物のデータは3DCGだけで作っています。

カット1だけをハイブリッドにした理由は、「不气味の谷現象」*1にあります。人物の顔を3DCGで作り込む際には、昔から指摘されてきたこの現象が付きまといます。現在は非常にフォトリアルに人の顔を作れるクリエイターもいますが、動き出すと印象が変わり、「CGだ」と気づかれてしまうことが少なくありません。今回試してみて分かったのは、AIをレンダラーとして使うことで、オリジナルが持つディテール感や雰囲気をあまり壊さずに再現でき、不気味の谷を解消しやすいという点でした。

12年前の当時は全身モデルなど作っておらず、記憶も薄れている部分があるなかで、よくここまで拡張できたと感じています。水中の雰囲気を含め、「一枚からすべてに」拡張していくという当社の方向性を体現する、良い実例になりました。今後さらに発展させていけると考えています。

*1 不気味の谷現象とは、CGやロボットなどで作られた人物が、見た目のリアルさを増していく過程で、ある段階を境に「人間に近いのにどこか違う」という強い違和感や不快感を引き起こす現象を指す。

まとめ

今回検証したワークフローを、順を追って振り返ります。

まず、AIで4面図を生成する工程です。ChatGPTが登場したのは2022年、画像生成はその1年ほど後であり、ごく最近のことです。かつては非常に手間のかかった4面図づくりが、AIで手軽に行えるようになりました。

次に、その4面図をもとにAIでモデリングする工程です。これが現実味を帯びてきたのはここ2〜3年の話で、今回もっとも驚いた点でもあります。3DCGクリエイターからすれば「結局は自分で作り直す」となる場面もありますが、ベースがあるのとないのとでは大きく異なります。4面図であれば、ある程度カジュアルに、かなりの品質まで仕上げられるようになりました。

AIでポリゴンリダクションもリギングも行えます。今回はクラウドサービスを検証として使いましたが、MayaやMaxの中でもAIでできることが大きく広がってきているので、本当に目が離せません。

そして、レンダラーとしての生成AIです。Arnoldや、サードパーティ製のV-Ray、Redshiftといった既存のレンダラーに、もう一つ「AIレンダラー」が加わったような感覚です。

最後に、AI生成動画を素材として映像を作る工程です。後ろ向きがうまく作れないといった課題も、マルチリファレンス機能を備えたモデルなどが登場し始めており、時間の問題で解決できると見ています。そうなれば、グリーンバックで作って合成する作業も、さらにやりやすくなるはずです。

クリエイターとしては、AIを工夫して使うことで、制御と一貫性を求められる仕事においても、ベースづくりなどの部分で大きく役立つと実感しました。あわせて、不気味の谷を解消する手立てとしても有効だと考えています。

Q&A

Q1. AIレンダラーが、存在しない植物の影や湖面の反射などを自動生成してしまうことがあります。厳密さが求められるレンダリング工程で、こうした不確実・不自然な要素を最終成果物として許容できるのでしょうか。プロの制作現場では、どのように判断されているのですか。

AIは、どうしても事実と異なる表現をしてしまいます。そのため、生成物をそのまま使うことはまずありません。画像についてはレタッチャーがきちんとチェックし、修正を行ったうえで使用しています。その部分には、しっかり時間をかけるようにしています。

時間をかけられるキービジュアルのようなクリエイティブでも、AIを使う場合は部分的な活用が主になります。AIの出力をそのまま成果物にするのは、現在のクリエイティブでは難しいというのが実情です。先ほどの家のビジュアルも、クリエイティブの一部分・素材という位置づけで、そこは時間をかけずに作ってレタッチで調整する方向を選びました。

不自然な影などは別の生成素材を組み合わせることで、レタッチで処理することもできます。嘘にならないよう気をつけながら、メインではない部分の効率を上げ、よりクリエイティブな部分に時間を割いていくという使い分けを心がけています。

Q2. 今回の半魚人モデルは、AIを使って約2日で制作されたとのことでした。これを最初から3DCGで制作した場合、どのくらいの期間がかかるイメージでしょうか。

3DCGクリエイターに依頼する場合、バストアップであれば、まず5営業日ほど使ってもらい、その段階でファーストチェックをさせてもらう、というお願いの仕方になると思います。全身となると、人にもよりますが2〜3週間程度は必要で、そのあとに微調整を重ねると、トータルで1ヶ月ほどの工数になるイメージです。

一方、AIの場合は生成そのものが数分程度です。それをいくつか壁打ちしたうえで、丁寧に手を加える微調整に1日半ほどをかけて作り上げました。

Q3. AIの活用によって、クリエイターに求められるスキルはどう変わっていくのでしょうか。

グラフィックであろうと動画であろうと、人の表現というものには、AIではまだ到達できていない領域があると考えています。先ほど触れた不気味の谷もそうですが、まだ「科学で解明しきれていない察知の感覚」のようなものが、そこにはあるはずです。

ですからクリエイターに求められるのは、その感覚を研ぎ澄ましていくこと、いわば手と脳をつなげる感覚を鍛えていくことだと思います。これは、これまでやってきたことと大きくは変わりません。私個人の見解としては、仕事が奪われるという話でもないと考えています。

振り返れば、19世紀に写真術が生まれ、写実的な絵を手で描いていたものがシャッター一つで複写できるようになりました。印刷も同様で、一枚一枚描いていたものが木版画で複製できるようになりました。こういったイノベーションは、歴史上何回もありました。

しかし、そのたびに人間は次の新しい表現へと拡張してきました。これから10年、20年と経てば、また違う価値観が人間に求められるでしょうし、クリエイターはそれに応えていく存在なのだと思います。

Q4. 今後AIが普及することで、制作費はやはり減っていく方向にあるのでしょうか。

工数が減るのだから安くなるだろう、と思われる方は多いと思います。しかしクリエイティブにおいては、単純な工数よりも付加価値の方に価値があります。逆に言えば、クリエイターがこれから取り組んでいくべきは、その付加価値を高めていくことなのだと考えています。

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