【イベントレポート】Autodesk Fusion × Rhinoによる次世代デザインワークフロー – ツールの機能限界が、創造性の限界になってはいけない

2026年4月8日(水)に開催されたセミナー「Autodesk Fusion × Rhinoによる次世代デザインワークフロー – ツールの機能限界が、創造性の限界になってはいけない」のイベント内容を紹介します。


Autodesk Fusion × Rhinoによる次世代デザインワークフロー

本セミナーでは、Autodesk Fusion と Rhino(Grasshopper)を組み合わせたハイブリッドなデザインワークフローを軸に、コンセプトデザインから形状生成(コンピュテーショナルデザイン)、ジェネレイティブデザインによる最適化、実製品設計への落とし込みまでの一連のプロセスを、事例を交えてわかりやすく解説します。

Rhino による自由度の高い形状設計と、Fusion による構造検証・最適化・製造設計をどのように接続するのか。実際の作業画面やフローをもとに、ツールを横断した設計の考え方と実務での活用方法をご紹介します。

【主催】株式会社Too
【協力】オートデスク株式会社
【登壇者】合同会社 Triple Bottom Line デザインディレクター 柳澤 郷司 氏

会社紹介

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合同会社Triple Bottom Lineの代表を務めている柳沢郷司です。

弊社は一般的なデザインスタジオとして紹介されることが多いのですが、皆さんが想像されるような「このプロダクトをデザインしました」「このロゴを作りました」といったスタジオとは、やや性質が異なります。もちろん最終製品のデザインや各種デザインサービスも提供していますが、それと同等、あるいはそれ以上に、リサーチや研究開発に重点を置いている点が特徴です。

具体的には、例えば今回のようなRhinoやFusionなどのソフトウェアにおいて、新しい機能が正式に追加される前の段階で、私たちのようなデザイナーが試験的にそれらを使用します。そして、それらの機能が実際のデザインプロセスやワークフローの中でどのように活用できるのかを検証します。

また、素材メーカーとの取り組みも多く行っています。新しい樹脂素材や金属素材が開発された際に、それらを用いてどのような加工が可能か、どのような意匠表現が実現できるか、さらにどのような製品開発に応用できるかといった点を検討します。加えて、切削加工機や旋盤などの加工機メーカーとも連携し、新しい設備を導入することでデザインプロセスや量産プロセスがどの程度効率化されるのかを検証しています。

こうした取り組みを通じて、コスト削減がどの程度可能になるのか、あるいは最終的な販売価格を下げることができるのかといった点についても検討しています。このような活動を行っているスタジオです。

本日は、私たちが実際にこれらの機能を活用してどのようなデザイン活動や開発を行っているのかについて、いくつかの事例をもとにご紹介できればと考えています。

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一つは、私たちが実務的な取り組みとして実際に製品化まで行った事例です。もう一つは、それをさらに発展させ、よりデザイン性を重視した取り組みについてです。

この二つの観点からご説明します。

01 Rhino + Computational Design

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まず最初に、Rhinoとコンピュテーショナルデザインについてご説明します。

実際に私たちがどのようなデザインを行っているのかを一つずつ詳しく説明すると、かなり長時間を要してしまうため、ここでは概要にとどめます。ご興味のある方は、「デンソー Triple Bottom Line」などで検索していただくと、画像の左にあるような事例をご覧いただけます。また、「トヨタ Triple Bottom Line」や「トヨタ Autodesk Fusion」といったキーワードでも、関連するプロジェクトをご確認いただけます。

当社はデザインスタジオではありますが、近年注目されている再生可能エネルギー分野にも取り組んでいます。具体的には、水上太陽光発電プラットフォームに関するプロジェクトで、いわゆるメガソーラーに代わる新しい形態の発電インフラの提案です。従来のメガソーラーは、用地取得の問題などさまざまな課題を抱えており、設置そのものが難しくなっています。そこで、水上で同様の発電を実現できないかという観点から、国内のゼネコンと共同で取り組んだプロジェクトです。

こうした事例に対して、「なぜデザイナーが発電施設のような領域に関わるのか」と疑問に思われるかもしれません。従来であれば、このような分野はデザインスタジオが担うものではなく、関与が難しい領域でした。しかし、今回ご紹介するコンピュテーショナルリソース、すなわち「計算資源」を活用することで、デザイナーが関われる領域は大きく広がっています。

本セッションでは、デザインが入り込めるフィールドの拡張性についても、ご説明できればと考えています。

コンピュテーショナルデザインとは

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先ほどコンピュテーショナルデザインという言葉が出てきましたが、初めて耳にされた方も多いかと思いますので、その意味についてご説明します。

コンピュテーショナルデザインとは、文字どおり「コンピューターを活用したデザイン」を指しますが、非常に広い概念です。その中で本日取り上げるのは、あらかじめ設定したさまざまなルールや条件に基づいて、コンピューターが形状や構造を自動生成する手法です。いわば、「デザインを自動生成するアプローチ」と捉えていただければと思います。

具体的には、パラメータや条件を設定して調整することで、結果が即座に出力され、それをデザインに反映することができます。この仕組みにより、従来は多くの試行錯誤を必要としていた作業や、人の手では一つずつ作成しなければならなかった工程を効率的に進めることが可能になります。

Fusionにおいては「ジェネレイティブデザイン」がこの考え方に該当し、RhinoではGrasshopperがコンピュテーショナルデザインを実現する代表的なツールとなります。

ジェネレイティブデザイン

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次に、ジェネレイティブデザインとGrasshopperについて、基本的な考え方も含めて順にご説明していきます。

Autodesk Fusionのジェネレイティブデザインについては、実際の作業の流れをお見せしながら紹介します。画面に表示されているのは、シャフトなどを取り付けるためのブラケットです。

現在はジェネレイティブデザインのモードに入っています。このモデルをベースに、機能を維持するために最低限必要な要素を考えると、三つの穴が不可欠であることが分かります。そのため、まずはそれらを担保するための最小限のモデリングを行います。

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必ずしも元の形状に完全に一致させる必要はありませんが、「この部分は必ず必要である」という要素をあらかじめ定義しておけば、元のモデルがなくても問題ありません。

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このように、シャフトが接する部分やボルトが通る部分など、干渉する可能性のある箇所も設定します。さらに、下部の台座となる部分も含めて、これらを障害物として定義し、赤色で指定していきます。

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選択した部分が緑色で表示されているのは、保持オブジェクトとして定義されているためで、ここは必ず残すべき重要な領域です。

加えて、どの程度の力が加わるのかという条件も設定する必要があるので、ニュートン単位で荷重を入力します。ここでは軸受けにかかる正面方向からの力を設定していますが、実際にはさまざまな方向や種類の荷重を設定することが可能です。

また、目標や製造方法といった条件も指定できる項目があります。

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最後に、使用する素材を指定します。どのようなマテリアルで製作するのかを設定したうえで、計算を開始します。

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計算は15分から20分ほどかけて進行し、最終的に収束した結果が表示されます。その結果は一つの完成形とも言えますが、必ずしもすべてが使いやすい形状とは限りません。中には実用性に課題のある形も含まれます。

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そこで、どの案が最適かを判断するために、グラフを用いて安全率や質量などを比較します。これらの指標をもとに、最も適した案を選定します。

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さらにリスト表示では、それぞれの案がどの程度最適であるかをパーセンテージで確認できます。最も評価の高いものが上位に表示されるため、それを採用候補として検討します。

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生成された形状はフォームベースとなっているため、後から細かな形状調整を行うことも可能です。このようにして最終的な微調整を加えます。

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結果として、元の形状と比較すると軽量化が実現できていることが分かります。

このように、ジェネレイティブデザインは一連の流れとして活用することができます。続いては、Grasshopperについても同様に、どのようなプロセスで進めるのかをご紹介します。

Grasshopperでのパターン生成

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次にGrasshopperについてご説明します。Grasshopperは非常に多機能で、用途の幅が広いツールです。そのため、ここでお見せする内容はごく一部の活用例に過ぎません。どのようにプログラムを構築するかによって、実現できる内容は大きく変わります。

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Grasshopperでは、乾電池のような形をしたノードを配置し、それらを接続することでプログラムを構築します。パラメトリックと呼ばれる手法で、数値パラメータを制御することにより、例えば楕円形のオブジェクトの配列や列の幅、サイズなどを簡単に変更することができます。

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この例では、中央にあるS字状の折れ線からの距離を調整しています。S字の上に配置された点を動かすことで、それぞれの楕円がその点の方向を向くように制御されており、その向きも連動して変化します。

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また、中央から外側に向かってサイズが変化するグラデーションも設定されていますが、こうしたスケールの変化もスライダー操作によって直感的に調整できます。

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パラメータを調整した後、最終的にRhino側でベイク処理を行うことで、初めてRhinoのオブジェクトとして確定されます。

その後、このオブジェクトに対してブーリアン処理を行い、穴を開けるなどの加工を加えることで、穴のサイズやデザインのバリエーションを効率的に検討することが可能になります。これを一つずつ手作業で行う場合と比べると、大幅に時間を短縮できます。

この例では、指定したサイズを下回るパターンが配置された場合に色が変わるように設定されています。

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黄色で表示されているものが指定サイズで、今回は0.3mmに設定しています。

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こちらは表面の凹凸パターンの例です。グラデーションによって凹凸が徐々に消えていく表現になっており、その深さやグラデーションの範囲、中心位置などを視覚的に確認しながら調整することができます。

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さらに、Rhinoで作成した外形データをFusionに取り込み、内部構造の設計をFusion側で行うといった連携も可能です。これにより、外観デザインと内部設計を分担しながら効率的に開発を進めることができます。

Fusionでは干渉チェックなどの機能も利用できるため、実際に動作するかどうかといったシミュレーションも行えます。

今回は意匠デザインのパターン生成を中心にご紹介しましたが、Grasshopperは非常に幅広い用途に対応できるツールです。操作には一定の習熟が必要ですが、ぜひ挑戦していただきたいと思います。

コンピュテーショナルデザインの発展

結局、プログラミングを用いてモデリングを行うのであれば、「なぜプログラミングをする必要があるのか」という疑問が生じると思います。

私たちがプログラミングを行う理由は、デザインを行う人間がどのような思考で線を引き、立体化していくのかという点に関係しています。ここでいうパラメータ、あるいは変数と呼ばれる要素について、人間が同時に扱える数には限界があり、多くても一つか二つ程度ではないかと考えています。

しかし実際のデザインプロセスでは、それだけでは済みません。モデリングを行い、それが生産現場に移り、実際に製造され、使用されるという流れの中で、後工程に進むほど関係する変数は増えていきます。

一方で、上流工程であるデザインの段階で、最終的な仕様に至るまでのすべてを考慮して設計しているかというと、必ずしもそうではありません。しかし、製品は最終的に壊され、分解され、廃棄されるまでを含めたライフサイクル全体で評価されるべきものです。近年ではLCA(ライフサイクルアセスメント)と呼ばれる考え方が一般的になり、サステナビリティの観点からも重要視されています。

そうなると最初の設計段階から多くの変数を考慮する必要が出てきますが、それをすべて人間の頭で処理するのは現実的ではありません。そこで、あらかじめ存在が分かっている複数の変数をコンピューターに扱わせるという発想が生まれます。

コンピュテーショナルデザインは、こうした背景から発展してきました。特に建築分野では、コンセントの配置や空調ダクトの設計、座席レイアウトと設備の関係など、あらかじめ多くの条件が明確になっているため、こうした手法が早くから導入されています。

その後、この考え方は他の分野にも応用されるようになり、さまざまな領域で活用が広がっています。

コンピュテーショナルデザインの事例

ここからは、こうした手法を実務の中でどのように活用しているのかについて、具体的な事例を通じてご紹介します。

自律制御型の保線ドローン

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画像は、2025年の万博で初めて公開した自律制御型の保線ドローンです。鉄道会社と共同で取り組んでいるプロジェクトになります。

保線事業は、今後日本で人口減少が進む中で大きな課題となります。鉄道インフラは全国の広範囲にわたり、人口の少ない地域や原野に近い場所にも敷設されています。そのため、一度敷設したインフラは将来にわたって継続的にメンテナンスしていく必要があります。

こうした課題に対して、365日24時間、異常が発生した際に従来は人が現場へ向かって対応していました。現在、その対応を自動化しようという取り組みが進められています。実際には、私鉄やJRを含め、線路の異常はセンサーによって即座に検知される仕組みが整っています。ただし、それが実際のトラブルなのか、あるいはセンサーの誤作動なのかは、現地で確認しなければ判断できません。

このため、線路だけでなく信号機や架線など、さまざまな設備に異常が発生した際には、たとえ過疎地や雪原、トンネル内、海沿いなどの厳しい環境であっても、人が現場に赴く必要がありました。

こうした状況を踏まえ、これらの対応を自動化することを目的として、鉄道各社と連携した実証実験が進められています。本プロジェクトでは、その一環として自律制御型ドローンのビジョンコンセプトの設計を行いました。

クライアントから提示された要件としては、「鉄道会社は人を運ぶ事業であるため、利用者に不安を与えない、視覚的にもやさしいデザインにしてほしい。一方で、将来のサービスであることから先進性も表現したい。さらに、安全性が直感的に伝わるデザインであること」というものでした。

これらの要件は抽象度が高く、そのままでは設計に落とし込むことが難しいものでした。そのため、こうした曖昧な要求を具体化するために評価指標として整理し、パラメータや変数として扱うことが重要になります。先ほどご説明したコンピュテーショナルデザインやジェネレイティブデザインの考え方は、まさにこうした抽象的な条件を定量化し、設計に反映させるための手法です。

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課題として挙がったのは、「先進性のような抽象的な要素をパラメータとして管理できるのか」という点でした。例えば一般的に市販されているドローンは、軽量化やコスト削減のために部品点数をできるだけ減らすよう設計されています。

しかし、安全性を重視すると事情は変わります。本事例のドローンはクアッドコプターに分類されますが、冗長性を確保するために上下それぞれにモーターを配置しています。開発者によれば、二系統が断裂しても飛行を継続でき、最大で30分以上の自律飛行が可能とのことです。サービス網と運用ルートを適切に設計すれば、最も遠方の地点でも往復20分以内に収まるため、墜落しない前提での運用が可能になるという考え方です。八基のモーターのうち二基が停止しても即座に墜落しないシステムになっています。

一方で、モーターを増やすと振動が増加するという課題が生じます。振動が増えると筐体や内部機器に悪影響を及ぼす可能性があり、共振が発生すると外乱によって予期しない挙動を引き起こすリスクも高まります。そのため、共振を抑える構造や材料の検討が必要になります。

さらに、万が一落下した場合には、最初に外装部品が破損し、本体内部の重要機器は保護される必要があります。特にセンサーやバッテリーを搭載しているため、本体キャビネットはサバイバルセルとして守らなければなりません。そのため、モーターやそれを支えるアーム部が先に破断する設計が求められます。

このように、「壊れやすくする必要がある部分」と「壊れてはならない部分」、さらに「振動を抑える必要性」など、相反する条件が同時に存在します。見た目だけで設計することも、性能だけを優先することも適切ではありません。これらをバランスさせる設計が必要になります。

本プロジェクトでは、初期段階で約300のパラメータを設定しました。振動、共振、外乱、落下時の加速度、軽量化、製造性など、多岐にわたる要素を組み合わせています。Autodesk Fusionのジェネレイティブデザインは、こうした条件に加えて製造プロセスの制約も考慮できる点が特徴です。例えば、ダイキャストや曲げ加工、切削加工、3Dプリントなどの製法を指定したり、それらを除外して理想形状を探索したりすることが可能です。さらに、その結果をもとに設計を発展させることもできます。

これらの条件を統合して評価した結果、最適と判断された形状が採用されました。具体的には、構造と接合部の設計により、モーター固有の振動が本体に伝わらないように調整されています。また、一定の高さから落下した際には外部構造が先に破断し、モーター部分はクリップ機構によって外れる仕組みとなっています。このクリップは一定以上の衝撃で外れる設計となっており、墜落時には通電が遮断され、プロペラの回転が停止するため、飛散リスクも抑えられます。

このように、安全性に関わる設計要件を初期の意匠設計段階から組み込むことが可能になります。その結果、従来にはあまり見られなかった構造となり、それ自体が先進性として表現されます。

一方で、親和性については、これらの機能要件を満たしつつも、過度に奇異な印象を与えないようデザイン的な調整を行っています。この部分は従来のデザイナーの役割に近い領域です。

このように、複数の相反する要素を同時に成立させるためにコンピュテーショナルデザインを活用しています。なお、本プロジェクトは通常であれば半年から一年程度の期間をかけて進める規模の内容ですが、実際には10月に開始し、翌年4月の発表に向けて短期間で進行しました。

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そのため、本プロジェクトは非常に短期間で集中的に進める必要がありました。

こうした状況において、外部の計算資源を有効に活用することが重要になります。デザインの現場ではよくあることですが、一度形状を提示して中間報告を行うと、その後になって新たな仕様や要望が追加されるケースが少なくありません。ここまでできているのであれば別の要件も満たせるのではないか、あるいは最初の段階では共有されていなかった条件が後から明らかになることもあります。

通常、手作業で設計を進めている場合、このような変更が発生すると一からやり直す必要が生じます。しかし、コンピュテーショナルデザインを活用している場合は異なります。例えば、先ほどのブラケットのように条件を設定して形状を導き出した後で、「実は別の素材を想定していた」といった変更があっても、該当するパラメータを修正するだけで再計算が可能です。

計算自体はコンピューターが行うため、人的な作業時間に制約されることもありません。電力さえ確保されていれば、就業時間外であっても処理を継続し、結果を導き出すことができます。そのため、例えば荷重条件の方向が異なっていた場合や、材料特性が変更された場合でも、迅速に対応することができます。

再計算の結果、形状が大きく変わらなければ従来案を維持することも可能ですし、変化が生じた場合には、どの要素が影響したのかを分析することで、設計の理解をさらに深めることができます。ここでいう進化とは単なる形状の変化ではなく、設計内容そのものの深化を意味します。

本プロジェクトでは約300のパラメータを扱ったので、当初は非常に多いと感じていました。しかし、設計を進める中で新たな条件が追加されたり、検証を通じて必要性が明らかになった要素を取り込んでいくことで、設計は継続的に変化していきます。

また、コンピューターによる計算結果は、一定の条件のもとで合理的に導き出されたものです。そのため、デザイナーにとっては、設定した要件を満たしているという前提で形状を評価できるという安心感があります。これもコンピュテーショナルデザインを活用する大きな利点の一つです。

ノードの一例

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これが実際に私たちが使用しているノードの一例です。先ほどのドローンで用いたものとは異なるものです。スマートウォッチのバンド設計において、従来にない形状を実現できないかという検討を行いました。単なるコンピュテーショナルデザインにとどまらず、アディティブマニュファクチャリングでなければ実現できない形状の提案も含めています。

具体的には、皮膚との接触面積を最小化しつつ通気性を確保し、さらに水が内部に滞留しないよう、水の表面張力以下で排水できる最小構造を設計条件として設定しています。これらをパラメータとして扱うことで、機能と形状を同時に最適化しています。

左下の事例は、シート素材メーカーと共同で行ったプロジェクトです。厚さ1mmの樹脂シートを用い、最大で約130kgの荷重に耐えられる構造を検討しました。カタログ上の性能は満たしていても、実際の形状として成立させるにはどのような構造設計が必要かが課題でした。

当初はL字形状のスツールとして成立させたいという要望がありましたが、そのままでは荷重により変形してしまう可能性があります。一般的には補強材を追加することで解決しますが、意匠面では望ましくありません。

そこで、なぜ補強が必要なのかを構造的に整理すると、応力集中部における断面二次モーメントが入力荷重に対して十分である必要があります。また、材料ごとに設定されるミーゼス応力の許容範囲、すなわち耐力を超えない設計であることが求められます。言い換えれば、構造が耐えられる範囲内に応力を収めることが重要になります。

この考え方をもとに、補強材を追加する代わりに、視覚的な印象を損なわない形で断面性能を向上させる方法を検討しました。その結果、スカートのドレープのような形状を取り入れることで、見かけ上の断面二次モーメントを増加させ、補強材と同等の効果を得ることが可能になります。

このような形状はコンピューターによる計算を通じて提案され、設計者はその結果をもとに、ひだの数や振幅などをパラメータとして調整します。最終的な見た目の判断はデザイナーの役割ですが、あらかじめ成立する範囲が定義されているため、その範囲内で最適解を探る作業になります。

このプロセスは従来のデザインとは異なり、条件に基づいた範囲内で最適な形状を導き出す、新しい設計アプローチであると言えます。

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コンピュテーショナルデザインの利点は、こうしたパラメータを適切に管理することで、複数のデザイン案を同時に展開できる点にあります。

デザインの現場では、「この案はとても良いが、あと二案ほど比較したい」といった要望が出ることがよくあります。締切直前にそうした依頼が来ると対応が難しくなりますが、パラメータが整理されていれば、条件を調整することで複数案を迅速に生成することが可能です。

実際にドローンの設計でも、ロゴを配置する前の段階で、「外観に何の要素もない状態では物足りない」という意見がありました。本来であれば、構造的な補強としてリブを設けることで剛性を高め、同時に部材の厚みを抑えて軽量化を図るという機能的な設計が考えられます。

この際、リブの形状に対してねじれを抑制するような設計要素を加えつつ、それを意匠として表現することで、見た目としては装飾的でありながら、実際には構造的な機能も担うデザインとすることができます。

このように、機能と意匠を同時に成立させたデザインを効率的に展開できる点も、コンピュテーショナルデザインの大きな特徴です。

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さらに、プロペラガードに設けている開口部にも工夫しています。一般的には軽量化のために単純に穴を設けるケースが多く、船舶などでも見られる手法ですが、本事例ではそれだけではありません。

この部分は、プロペラから排出される空気が通過する経路でもあります。そのため、空気が抜ける際の風切り音をどの程度低減できるか、あるいはどのように拡散できるかといったシミュレーション結果もパラメータとして管理しています。ドローンの場合、低速化や翼弦長を伸ばして揚力効率を高めるといった手法もありますが、一般的にはあまり採用されません。

そこで、構造を軽量に保ちながら、周辺に消音効果を持つ構造要素を配置することで、異物感を抑えつつ不快な風切り音を軽減する設計を検討しました。気流の流れ方や推力によって生じる風が周囲の構造にどのような影響を与えるかをあらかじめパラメータ化することで、それらを意匠としても活用することが可能になります。

こうした考え方をもとに、実際の設計操作についてもご紹介します。

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こちらが先ほどのドローンの筐体デザインです。このレベルのディテールを手作業で一つずつ作り込むのは非常に手間がかかります。

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しかし、実際には画像のようにすでにディテールが組み込まれた状態で生成されています。個別に凹凸をモデリングするのではなく、筐体の厚みやねじれに対する係数など、必要な条件をパラメータとして設定しています。

そのうえで、必要な剛性を確保する方法として、単純に厚みで補うのか、あるいは構造的な工夫で対応するのかを検討します。構造で対応した方が全体重量の削減につながるため、基本的にはそちらを採用します。

ただし、単純にリブを追加すると見た目が重くなるため、それを意匠として取り込むことで、機能とデザインを両立させる形にしています。

スペースマウス

モデリングは長時間に及ぶ作業になるため、操作性も非常に重要です。すべてをマウスで操作し、パンやズームを頻繁に切り替えていると、どうしても負担が大きくなります。そのため、できるだけ意識せずに視点の移動や拡大・縮小が行える環境が望ましいと考えています。

その点で、スペースマウスを活用すると、視点操作を直感的に行うことができ、作業効率が大きく向上します。基本的な操作はスペースマウス側で行いながら、各種コマンドも割り当てることが可能です。

例えばRhinoでは、通常コマンド入力欄にコマンドを打ち込んだり、ツールを探して選択したりする必要がありますが、よく使用する機能をあらかじめスペースマウスに割り当てておくことで、ワンタッチで呼び出すことができます。

操作自体はやや独特で、慣れるまでに1週間程度かかる場合もありますが、一度習得すると作業負荷が大幅に軽減され、快適にモデリングを進めることができるようになります。

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モデリングに関しては、Rhinoの性能は広く認知されており、長年使用されてきた実績もあるため、特に疑問を持つような部分はありません。このような形で、モデリングとしては十分に成立していると考えています。

ここまでRhinoでモデリングを行った段階で、ソリッドモデラーへデータを移行し、モデル製作会社や工場にデータを提供するところまで対応可能です。

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さらに機構設計が必要になる段階では、Fusionなどを併用します。Rhinoで作成した外形モデルと、Fusionで作成したモデルを組み合わせながら、内部構造の設計を進めていきます。具体的には、ボタンやバッテリー、ヒューズ、カメラなどの配置を検討し、一定の設計指針を示したうえで、製造側とデータのやり取りを行います。

Fusionでは図面作成も可能で、近年は日本の工場でも3Dデータによる出図が受け入れられるケースが増えています。そのため、従来の2D図面の使用頻度は相対的に減少しています。

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ただし、一部では2D図面が必要になる場合もあります。例えば、特定の範囲には部品を配置しないよう指示する場合や、部品同士の干渉や公差に関する数値を明示する場合などです。これらは一覧形式で整理されることが多く、必要に応じて2D図面として補足します。

一方で、嵌合や取り合いといった詳細な関係性については、3Dモデル上で定義されているため、「この形状のとおりに製作する」という指示で対応できるケースが増えています。

本プロジェクトでは、展示用のブラケットについても設計を行い、モーター部分に取り付けて吊り下げる構造としました。もともとは飛行デモを行う計画もありましたが、安全面への配慮から最終的には吊り下げ展示という実務的な方法が採用されました。

当初は、台上から離陸し、ホバリングして着地するデモンストレーションを想定していましたが、来場者が接触する可能性などを考慮し、安全性を優先した判断がなされました。

アセンブリの確認においては、スペースマウスを用いた操作が有効で、内部部品の確認などもスムーズに行うことができます。

以上のように、これらの手法を活用することで、新しい意匠表現を実現することが可能になります。

02 Exploration × Hybrid

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次は、これまでの内容よりも少しデザイン寄りの話になります。

Craftworks Informatics

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私たちが取り組んでいるリサーチプロジェクトの一つに、「Craftworks Informatics」と呼ばれるものがあります。直訳すると工芸情報学という意味になりますが、人の手作業によって生まれる質感や、いわゆる温かみ、工芸的な価値といった、言語化しにくい感覚的な要素をどのようにパラメータとして扱えるかを探る取り組みです。

工芸には、工業製品にはない魅力があるといわれます。そうした集合的な感覚を定量化し、3Dプリンターやデジタル加工機で再現可能な変数として扱うことができれば、デジタル環境でも工芸的な表現が可能になるのではないかと考えています。このテーマについては、約5年ほど継続して研究を行っており、現在も複数のプロジェクトが進行しています。

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こちらは、ビジュアルスタジオの『WOW』と共同で取り組んだプロジェクトです。彼らは万博のメインパビリオンの映像制作やオリンピック関連の映像制作などを手がけるスタジオで、流木をベースにしたキャラクター制作に取り組んでいました。

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具体的には、実際の流木を3Dスキャンし、そのデータをもとにCG上でキャラクターを構築するというプロセスです。流木の形状を取り込みつつ、CG的な要素を組み合わせて新しいキャラクターを創造し、それを現実空間にどのように落とし込むかというプロジェクトでした。

私たちの役割は、その流木のサンプルをデジタルツイン化することでした。実際にスキャンしたデータは約50億ポリゴンにも及び、高精細な形状を再現することができますが、そのままでは加工や内部構造の設計に利用することができません。

この高密度なメッシュデータを適切にリサイズしつつ、外観の特徴を損なわない形で再構成する必要がありました。さまざまな手法を検討した結果、最終的にはRhinoを用いたワークフローに戻り、最適な処理方法を構築しました。

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Rhinoのクワッドリメッシュ機能を使うことで、もともと約50億ポリゴンあったデータを、この段階で約12,000ポリゴンまで削減することができました。

クワッドリメッシャー自体は外部ソフトとしても提供されていますが、Rhinoでは標準機能として利用できます。さらに、クワッドリメッシュ化したデータをBRepに変換できる点が大きな特徴です。

一般的に3Dスキャナーで取得したデータは、非常に高性能な測定機器を用いない限り、四角形ポリゴンではなく三角ポリゴンとして出力されます。そのため、後工程での加工や設計に適したデータへ変換する必要があります。

Rhinoでは、例えば枝の流れや表面の形状に沿うようにポリゴンの流れを調整する指示を与えることができます。これにより、形状の特徴を保ったまま安定したメッシュ構造を生成することが可能になります。

こうして約12,000ポリゴンまで最適化した後、BRepへ変換することでサーフェスデータやソリッドデータとして扱えるようになります。ソリッド化できれば、その後の設計や加工に大きく活用することができます。

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そのデータをFusionやRhinoに取り込み、意匠設計を加えたうえで実際の制作につなげました。本プロジェクトは、虎ノ門の東京ノードで開催された展示イベントで初公開されました。

実物の流木とデジタルで設計した構造を組み合わせた作品で、外観についてもCGで設計した内容をもとに制作されています。興味深い点として、各パーツの最終的な組み合わせは展示開始直前に初めて行われましたが、事前の設計精度が高かったため、問題なく完成させることができました。

3Dスキャンしたポリゴンデータ

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こちらが元データです。ポリゴン数としては数十億規模で、基本的には三角ポリゴンで構成されています。編集を行わなければ、この状態でもFusion上である程度スムーズに扱える点は非常に優れています。

Fusionにはメッシュ機能が備わっており、メッシュを選択してカットするなどの基本操作であれば比較的軽快に動作します。ただし、全体を細かく編集しようとすると、やはり処理負荷は大きくなります。

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画像の通り木肌のディテールをそのまま保持しているため、シェーディングの反映にも時間がかかるほど重いデータです。そのため、このままでは実務的な編集には適していません。

そこで、編集可能な状態までデータを軽量化・最適化すると、このような形になります。先ほどの高密度なディテールを持ちながらも、BRep化されており、実際の設計や加工に利用できる状態です。

変換方法としては主に二つあります。一つは、クワッドリメッシュ実行時に「Duplicate to make subD surface」というオプションを有効にし、SubDサーフェスとして出力する方法です。もう一つは、クワッドリメッシュ後のデータに対して「toNURBS」コマンドを使用し、NURBS化する方法です。

「toNURBS」を実行する際には、Rhinoから「メッシュ数が多いため処理が停止する可能性がある」という警告が表示されることがありますが、これは比較的低スペックな環境を前提とした注意喚起です。実際には、ある程度の性能を持つマシンであれば問題なく処理が可能です。

このようなプロセスを経ることで、高精細なスキャンデータであっても、設計・加工に適した形へと変換し、実務に活用することができます。

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このほかにも、私たちはアディティブマニュファクチャリングでなければ実現できないプロセスにも取り組んでいます。例えば、3Dプリンターで編み物のような構造を作るという試みです。

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この事例では、リサイクルされたペットボトル素材を用いて編み構造を形成し、その編み目の頂点がレンズ形状となるようにパラメータを設定しています。その結果、表面に微細な結晶のような構造が無数に現れる照明を制作しました。

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こちらは実際のサンプルです。

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構造としてはメッシュ状になっており、編み目の密度が徐々に変化するように設計されています。部分的に編み目が存在する領域と、そうでない領域を制御することで、独特の表現を実現しています。このような形状は、射出成形や押出成形、プレス加工といった従来の製造方法では実現が難しいものです。

一方で、3Dプリンターのようなアディティブマニュファクチャリングを用いれば、このような構造をそのまま形にすることが可能になります。こうしたアプローチは、新たな意匠提案や機能の付加、さらには異なる素材への展開など、幅広い応用につながります。そのため、試作やコンセプト検証としても有効です。

このような表現は、手作業で一から設計することは現実的ではなく、コンピュテーショナルデザインのプロセスを取り入れることで初めて実現可能になります。新しいデザイン表現の一つの形と言えるでしょう。

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なお、これらの手法については、私たち自身で情報発信も行っています。具体的なプロセスやノウハウを公開することで、多くの方に関心を持っていただいています。

こうした取り組みは、趣味的な領域にとどまらず、実務レベルのデザインに携わる方々にも有効だと考えています。最初は興味本位でも構いませんが、実際に試していただくことで、新しいデザインの可能性をより身近に感じていただけるのではないかと思います。

最後に:これからの設計者に求められるスキルとは?

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よく言われることではありますが、「領域を越えて考える姿勢」が重要だと考えています。デザイナーはデザインだけ、エンジニアは技術だけを理解していればよい、という考え方もありますが、その枠を少し越えたところに新しい可能性が広がっています。

一方で、エンジニアにデザインの理解を求めるというよりも、デザイナー自身がエンジニアの言語を理解し、使えるようになることが重要です。

理由として、デザインされたものが製品化されるまでには、デザイナーの後に多くの工程が続きます。つまり、自分が引いた線がどのように実装され、どのような影響を与えるのかを見通したうえで設計することが求められます。

そのためには、デザイナーがエンジニアの考え方や用語を理解し、自分の意図をエンジニアリングの言葉に置き換えたときに、どのような要件や仕様になるのかを把握しておく必要があります。

こうした視点を持つことで、意匠設計や提案の精度が高まり、結果として関わるすべての工程にとって有益な設計につながると考えています。


Q&A

Q1. 解析まで行うのはデザイナーの仕事ではないが、解析結果を提示できれば、デザイナーのやりたい意匠デザインが理解されやすくなるか?

結論としては、非常に有効です。むしろ現在では、意匠だけを主張するのではなく、根拠とともに提示することが求められています。

かつては、デザイナーが引いたラインをそのまま尊重するという考え方もありましたが、現在の開発プロセスでは、そのラインがどのような性能や条件のもとで成立しているのかを説明できることが重要です。

製品には必ず性能保証期限や耐用年数といった指標が設定されています。これは使用環境や素材、製造方法などを前提に、どの程度の期間性能を維持できるかを定義したものです。例えば住宅設備などでも、数年から十年単位で保証期間が設定されているケースが一般的です。

こうした考え方は、かつては経験則や概算による設計が中心でしたが、計算機の発展に伴い、CADやCAEを用いた解析ベースの設計へと移行してきました。特に早期にCAEを導入した企業では、コスト削減や品質の安定化を目的として、解析結果を積極的に設計へ反映するようになりました。

その結果、設計段階で寿命や性能をある程度予測し、意図的に設計指標をコントロールすることが可能になっています。一方で、こうした解析を行わずに設計されたものと比較すると、最終的な品質や信頼性に大きな差が生じます。

重要なのは、設計した形状が実際の使用環境や条件の中でどのように振る舞うのかを理解したうえで設計しているかどうかです。シミュレーションや解析によってその挙動を把握していれば、設計の妥当性を説明しやすくなり、意匠デザインの意図も相手に伝わりやすくなります。

このように、解析結果を伴ったデザインは説得力を持ち、設計全体の完成度や信頼性を高める要素となります。

Q2. スペースマウスツールをRhinoに導入する際、事前のアプリ登録やRhino側の詳細設定が必要ですか?

特別な事前設定やRhino側での詳細な設定は基本的に不要です。

スペースマウスは、3Dconnexionのユーティリティソフトで設定を行います。このユーティリティを起動すると、現在アクティブになっているアプリケーションを自動で認識し、そのまま設定画面に移動できます。

設定画面内の「ボタン設定」から、各アプリケーションに応じたコマンド一覧を呼び出すことができます。例えばRhinoであればRhinoのコマンド一覧、PTC製品であればそのソフトに対応したコマンド一覧が表示されます。NXなど他のCADソフトでも同様に、それぞれの環境に応じた設定が用意されています。

そのため、Rhino側で特別な準備を行う必要はなく、ユーティリティ側で直感的にカスタマイズが可能です。

Q3. 50億ポリゴンを使うことができるPCとそのスペックは?

実際には用途ごとに2台構成で運用しています。レンダリング用と設計業務用を分けており、設計業務用のマシンでBRep変換などの作業を行っていました。

当時の構成は、CPUにAMD Ryzen 9 9950X3Dを使用し、メインメモリは128GBで運用していました。現在は約198GBまで増設しています。GPUはNVIDIA RTX 5000 Ada(24GB)を搭載しており、別構成としてNVIDIA RTX A5500(24GB)もポリゴン処理には有効でした。

現在はローカルでLLMを動かす用途もあり、NVIDIA RTX 6000を2枚構成にしていますが、当時のポリゴン処理に関してはそこまでのGPU性能は必須ではありませんでした。

重要なのはGPUよりもメインメモリとCPUで、大容量メモリと高性能CPUを確保しておくことが、こうした大規模ポリゴンデータを扱ううえでの前提になります。

Q4. ジェネレイティブやプロシージャルなどは新たなデザイナーの可能性を広げるが、より民主化をする手段はあるか?AIの進化による可能性はあるか?

結論として、民主化はすでにかなり進んでいて、今後はさらに加速すると思います。その大きな要因がAIです。

従来は、高度なツールを使いこなすためにプラグインを購入したり、専門的な知識を身につける必要がありましたが、現在はその前提が変わりつつあります。実際、私自身も既存のプラグインを購入するより、自分でツールを作ることが増えています。AIを使えば、ある程度のロジックやスクリプトは自動生成できるため、開発のハードルが大きく下がっています。

例えば、Claudeのような生成AIを活用することで、「こういう処理をしたい」という意図を伝えるだけで、Grasshopper用のスクリプトや設計ロジックの雛形を作ることが可能です。これによって、プログラミング経験が少ない人でも、プロシージャルな設計に踏み込めるようになります。

その結果、これまで一部の専門家に限られていたジェネレイティブデザインやコンピュテーショナルデザインが、より多くの人に開かれていきます。いわば「ツールを使う側」から「ツールを作る側」への移行が、以前よりもはるかに容易になっている状態です。

実際には、さまざまなAIサービスを試しながら、自分に合ったものを見極めていく必要があります。私の場合は複数のAIに課金し、実際に動かして検証するという方法を取っていますが、その分、どの領域で何が使えるかという感覚は確実に蓄積されます。

Q5. コンピュテーショナルデザインを独学する際に、おすすめの教材や勉強方法はありますか?

まず教材として有用なのは、『AAD: Algorithms-Aided Design』という書籍です。英語の本ですが、いわゆる技術英語なのでそれほど難解ではありません。この本の特徴は、実際のノード構成をそのまま掲載しており、いわば「写経」用の教材として使える点にあります。ザハ・ハディド・アーキテクツのコンピュテーショナル部門が実務で使用していたノード構成が紹介されており、「なぜこの構成になるのか」という思考プロセスまで解説されています。

学習方法としては、動画を活用した写経が非常に有効です。YouTube上にはGrasshopperの解説動画が多く存在し、中には解説を最小限にして淡々とノードを組んでいくものもあります。そういった動画を0.5倍速などにして操作を追いながら、同じ構成を手元で再現していく方法が効果的です。

写経を一通り行った後は、自分なりにノード構成を組み替えてみることが重要です。多くの場合エラーが発生しますが、その原因を調べる過程で理解が深まります。分からない場合はコミュニティに質問すれば回答が得られることも多く、Grasshopperのコミュニティは比較的活発で学習環境として優れています。

さらに最近では、AIを活用した学習も有効です。例えば「Raven」と呼ばれるプラグインでは、Rhino上で自然言語からGrasshopperのノード構成を生成することができます。自分で組んだものとAIが生成したものを比較することで、「なぜこの構成になるのか」という理解を深めることができます。

このように、写経・試行錯誤・比較というサイクルを回すことが、独学において最も効果的なアプローチです。

Q6. MACでの動作環境は?

Macでも基本的に問題なく動作します。むしろメモリ帯域の広さという点では有利な場合もあり、一般的なWindows環境と比べてもパフォーマンス面で不利になることは少ない印象です。

RhinoはもともとMacにネイティブ対応しており、近年はGrasshopper周りのプラグインも多くがMacに対応しています。例えばPufferfishやLunchBoxなどの主要なプラグインは問題なく利用できます。一方で、一部のラティス生成系プラグインなどは未対応のものもあり、そこは注意が必要です。

そのため、設計作業自体はMacでも十分に行えます。ただし実務面、特に製造との連携を考えると事情が変わります。工場や加工機の多くはWindows環境で運用されており、Macで作成したファイルをそのまま扱うと文字コードの違いによって文字化けが発生することがあります。

PC上での文字化けであれば対応できますが、加工機にデータを読み込ませた際に文字化けが起きると、ファイルが開けずに機械が停止してしまうことがあります。これは生産ラインにおいて致命的なトラブルになり得ます。

そのため、実務ではこうしたリスクを避ける目的で、結果的にWindows環境を選択するケースが多くなります。Macでも設計は可能ですが、製造まで含めた運用を考えるとWindowsが無難というのが実情です。

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