あにつく2022レポート | 「ダンス・ダンス・ダンスール」繊細で美しいバレエシーン制作フロー 演出・作画監督・CGディレクターがこだわりを解説!(MAPPA)

9月23日(木)から9月25日(日)で開催された「あにつく2022オンライン」で、『ダンス・ダンス・ダンスール』の制作の裏側を紹介するセミナーを実施。

繊細で美しいバレエシーンの制作フローや、演出と作画監督、CGディレクターのこだわりが語られた。


ウェビナー概要

「ダンス・ダンス・ダンスール」繊細で美しいバレエシーン制作フロー 演出・作画監督・CGディレクターがこだわりを解説!

22年4月から6月まで放映されたTVアニメ「ダンス・ダンス・ダンスール」。
作中のバレエシーンは、ジャンプ・回転・筋肉の動き・呼吸など、細かい動作を本物の動きそのままに作画に落とし込んでいる。
作品世界に引き込まれるシーンの制作において、作画や演出、3DCGとの連動はどのように組み立てられていったのか。
バレエシーンを担当した中核スタッフが、制作当時のエピソードを交えて解説する。

 主催 :株式会社Too
 協賛 :オートデスク株式会社
 講師 :株式会社MAPPA 鷲田 知子 氏
     株式会社MAPPA 桑原 剛 氏
     株式会社MAPPA 脇 優梨子 氏
               大谷 肇 氏


会社説明

作品の紹介に入る前に、「株式会社MAPPA」について説明する。株式会社MAPPAは、テレビアニメや映画、CM、Webムービーなど、アニメーション映像に関わる全てのジャンルで企画・制作をしている会社だ。

拠点には、東京にある本社オフィスの他に3つの制作スタジオがある。現在は東京スタジオと仙台スタジオのみだが、2023年からは3DCG業務をメインに扱う大阪スタジオも設立される。

部署構成は画像の通り。今回は、登壇者が所属している部署を抜粋して紹介。制作部は、アニメーション制作の全ての工程を管理している部署だ。作画部は、その名の通り主に絵を描いている部署である。

CGI部には現在99名所属しており、構成は画像右側の通りだ。CGを取り扱う以外にも、撮影や背景、仕上、編集などのさまざまな部署がある。MAPPAの強みは、それら全ての工程を会社内で完結できるところだ。

作品概要

ここからが本題。今回題材となるアニメは、2022年4月に放送された「ダンス・ダンス・ダンスール」。本作品は、ジョージ朝倉氏の少年漫画が原作で、主人公の村尾 潤平、五代 都、森 流鶯の3人の中学生が織り成す青春バレエ アニメだ。今回は、「繊細で美しいバレエ制作のフロー・演出・作画・監督・CGディレクターがこだわりを解説!」というテーマで、制作時に工夫した点などを紹介する。

ここで、本セミナーの登壇者でもある「ダンス・ダンス・ダンスール」にメインで参加したスタッフを紹介。

鷲田 知子 氏

株式会社MAPPA CGI部
大学卒業後STUDIO4℃入社。2016年からMAPPAに参加。
色彩や撮影、3DCGを主な守備範囲として都度、各作品で様々な役割を担う。
本作ではCGIディレクターとしてバレエパートを担当。

桑原 剛 氏

株式会社MAPPA 仙台スタジオ 作画課課長
大学卒業後、2017年までフリーランスとして活動し、2018年のMAPPA仙台スタジオ発足を機に入社。
「ゾンビランドサガ」などで作画監督を務める。本作ではバレエ作画監督を担当。

脇 優梨子 氏

株式会社MAPPA 制作デスク
大学卒業後、2018年MAPPA入社。
「ゾンビランドサガ」シリーズなど各作品で制作に携わり、本作品では制作デスクを担当。

大谷 肇 氏

2004年 イマジン入社 2005年より演出業を始める。
2011年から株式会社シャフトで主に活動。
2021年『美少年探偵団』で監督を務める。
本作では「バレエ演出」を務める。

カット制作メイキング

制作全体の流れ、各工程の説明

制作全体の流れは、上の画像の通りだ。

本作品をアニメ化するにあたり、バレエをアニメで表現するのは簡単なことではないという制作スタッフ内での共通認識があった。全ての型が決まっているバレエをテーマにする時点で、「手を出してはいけないところに手を出した」と思ってしまったほどだ。そんな中でも、制作スタッフの中にいたバレエ経験者の存在には助けられた。

制作に入る前、決まり事が多い「バレエ」について知るために制作スタッフ全員で勉強会を開催。画像右上の写真に写っている制作スタッフの石川さんがロシアでのバレエ留学経験者だったため、実際にさまざまな型やポーズを実演してもらった。

画像のような作画の注意事項の資料も数多く用意。数が多過ぎて全てを見せることはできないが、これはあくまでも氷山の一角だ。

バレエの知識をスタッフ全員で共有するために、画像のような資料も作成。スタッフ全員がバレエの決まり事の多さに驚きながら制作したとのこと。

CG制作

本作品は、CGをガイドにしてフィニッシュは作画で落とし込む制作工程だ。原作の絵柄とバレエの性質を考えた結果、作画の質感の方が向いているという監督判断である。また、3Dから作画にする工程が増えるため、更にブラッシュアップできるという狙いもあった。全体を通して、3Dでは表現しづらい柔らかい動きを作画で補いながら制作した。

桑原剛さんは、「タイミングが組まれた状態で素材を渡されていたため、作画側からすると下書きがあるようなイメージで楽に作業できました」と語った。3Dで背景まで組まれているシーンもあったため、キャラクターを整えることに集中できたという。

モーションアクターとモーションキャプチャー

本作品では、モーションアクターとして東京バレエ団の4名の方達が参加。登場人物に合わせて中学生を参加させる案もあったが、最終的にはプロのダンサーを呼ぶことになった。

大谷肇さんは、「アニメ制作の作業として踊りの映像を見ていても、ダンサーの方々の表現力に何度も引き込まれた。」と語った。中には、実際にバレエに魅せられて個人的に観に行っていたスタッフもいたという。

ここからは、実際のカットを使って説明する。

今回使用するのは、潤平と都が白鳥の湖の舞台を観に行った後の公園のシーン、第2話のC123。

まずは漫画からバレエシーンをピックアップ。さきほどのC123は画像右下のコマだ。漫画の切り抜きから踊りを振付師に発注して、Mocap撮影に移った。

Mocap

振付は、プロのバレエダンサーでありながら振付もしている宝満直也さんに発注。

Mocapでは、Xsens社が開発したモーションキャプチャーシステム「MVN」を使用し、さまざまな角度で実写撮影も同時に行った。

画像の左がモーションキャプチャーの様子で、右がアニメーションムービーのデータだ。Mocap撮影は3ヶ月間の合宿のようなイメージで、最低でも週に1,2回、多い時は4日連続だったこともあった。全体を通して、約40シーンほどのバレエシーンをモーションキャプチャーで撮影。

「モーションアクターの方々にとってもタフな工程だったと思います。ただ、舞台に行ったとしても見られない距離でプロダンサーの動きを見ることができたのは貴重な体験でした。」と、鷲田知子さんは語った。

CG作業

マルチアングルムービー

その後、各角度から撮影した映像の「マルチアングルムービー」を編集。このムービーの完成後、CGと演出の作業を開始した。

Mocapのアニメーションデータをキャラクターモデルに流し込む。本作品では、『MotionBuilder』と『MAYA』を使用した。

その後、マルチアングルムービーとキャラクターモデルのデータを重ねる。その際は、実写の尺とCGのデータの尺のフレームの数値を見比べられるようにしておく。画面の右上と下にある赤枠で囲っている箇所のうち、右上の「Frame」はCGのデータの尺で、下の「M20_」が実写の尺だ。

マルチアングルムービーでは、この2つが連動しているデータを作るところが最初のステップになる。

絵コンテ

次は、演出での絵コンテ作業に入る。絵コンテ作業で注意した点は「音楽」だ。

「今回のシーンのような音楽がある中でカットの尺とタイミングを決める作業は、今まで挑戦したことがありませんでした。また、このシーンでは、モーションアクターの方の動きが鮮やかで素早すぎたため、意図的にタイミングを変えることになりました。ここの都の演技にはなめらかさやゆったり感が欲しかったため、少しだけスローにしました。音楽はそのまま流れてしまうため、1コマから12コマの間のカットだけをスローにするという作業をコンテの段階で決める必要があり、本当に大変な作業でした。」と、大谷肇さんは語った。

ダンス編集

CGと演出の絵コンテの作業の次は、「ダンス編集」の作業に入る。

ダンス編集の工程で、尺を伸ばす・縮めるカットを決める。実写のダンスに対して尺の伸び縮みを入れるが、これは他のアニメにはない工程だ。また、編集を2回やるようなイメージで、本編の編集カッティングとダンスパートのカッティングを2日間に分けて作業した。

ダンス編集の後は、本格的にCG作業が始まる。

ダンス編集のデータを受け取り、上の画像のように舞台とリターゲットのモデルを合成したデータを作成。Mocapのデータをそのままセットに入れてしまうと、撮影したスタジオのサイズと舞台のサイズが異なってしまう場合がある。その場合、キャラクターが舞台の半分しか動いてない現象が起きてしまうが、それでも最初は通しで作る。その後、キャラクターの位置や軌道を修正して舞台に合わせていく。本作品では、この作業のことを「軌道修正」と呼んだ。

ここまでのダンス編集、絵コンテ、軌道修正まで終わった時点で、ようやくCGアニメーターがCG打ちをしていく。本作品では、主に「YGGDRAZIL(ユグドラシル)」というタイの会社に発注した。

「外国の会社のため打ち合わせが長くなってしまうこともありましたが、実写映像などのリファレンスが豊富な作品だったことに助けられました。この時は、苦労して大量のMocapを撮った甲斐があったと思いました。」と、鷲田知子さんは語る。

レイアウト作業

その後、実際のカット作業に入る。さきほどの軌道修正からカット単位で切り抜いていくが、ここで「レイアウト作業」を行う。

レイアウト作業とは、基本的にカメラや構図などを決めていく作業のこと。手がパーになっているところや右足がポアントになってないところなどあるが、そこまで詰めたところまではチェックしない。ここでは、画面の収まりやカメラワークだけをチェックする。

その後にレイアウトのCGチェック。レイアウトの構図をもとに、リテイクを出すなどのキャッチボールを繰り返していく。

プライマリー作業

レイアウトの後は、「プライマリー作業」。

他社では「アニメーション作業」と呼ぶこともあるが、プライマリー作業とは実際の動きを詰めていく作業のこと。さきほどの手がパーだったところや、右足がポアントになってないところなどをバレエダンサーの姿勢になるように修正する。そこから更に演出部とCGI部でチェックをしていき、「もう少し脚を上げよう」などの修正をする。この工程では画面に対して直接修正点を書き入れている。

上の画像では、スタートで手首を少し曲げるように修正。バレエにおける白鳥の踊りを表現した。

画像には、手首について「奥から手前に手を持っていくあたり、手首をもう少し曲げる&指を少し丸める」と書いてある。

CGアニメーターが手の修正をした際に、手の形をあまり変えずにそのまま動かしていたため動きの固さが気になる状態だった。腕を下ろしたときに柔らかさが欲しかったため、柔らかく見えるように力を抜くポイントを作るよう指示を出した。実際のバレエでも指先が重要なように、本作品でも多くのシーンを通して何度も指先を直した。

鷲田知子さんによると、本作品を制作する上でのテーマの1つ「指先は表情」を制作スタッフにも共有したという。「バレエの演出で絶対に手を抜かない」という想いから、指先の細かい表現にこだわったとのこと。

チェック工程

一連の作業に対するチェックでは、出来上がったもの全てを編集して、音がある状態で通しで見れるようにした。音によって着地やジャンプなどの動作が変わるため、全てを音付きでチェック。チェックをしていく中で、実写の映像と見比べないと分かりづらいという問題点が挙げられた。

そこで、実写とCGのカットワークを合わせたものを作り、システムを作って見比べられるようにした。画像のように1画面で見比べながら、脚の上がり具合や角度などの修正点を探した。

アニメは基本的に誇張していることが多く、自然な動きよりも少し派手に見せる場合が多い。しかしながら、本作品では実写の動きがCGを超えていないかチェックしていた。鷲田知子さんは、「CGよりも実写の方が脚が上がっているなど、普通のアニメとは逆の現象が起きていました。実写の方がCGよりも動きが現実離れしているという、改めてプロのバレエダンサーのポテンシャルに驚かされました。」と語った。

0.5原画

チェック後、OKが出たデータをプリントアウトして作画スタッフに持っていき、作画の工程へ。ここで「0.5原画」という作業に入るが、まずはこの「0.5原画」について説明する。

0.5原画とは、本作品で行ったオリジナル工程の造語だ。通常であれば、絵コンテから第1原画を起こし、その後に第2原画を起こすという流れである。本作品には第1原画の前に1工程あり、それを1の前ということで0.5原画と呼んだ。要するに、第1原画の前の作業ということだ。本作品ではほとんどのアニメーターがバレエのことを知らない状態だったため、素材が渡った時に困らずに作業できるように0.5原画の工程を増やすことにした。

ダンスシーンと日常芝居

3Dの素材はフルコマで1秒間に24枚だが、全てを作画にするには手間が増えすぎてしまう問題があった。ダンスシーン以外の日常芝居は1秒間3コマで8枚の絵で作ることが多いため、ダンスシーンだけを24枚で作ると変に浮いてしまうという懸念もあった。

しかし、24枚全てを書くのは現実的ではないため、全体をなじませるためにもまずは1秒間を半分の12枚に削り、1秒間12枚の絵でチェック。その後、12枚では表現できないバレエの速い回転や繊細な表現などのカットをピックアップし、一部だけを24枚のカットに戻していった。

「ある程度のデフォルメを前提とした表現であるアニメと、型があって決まり事の多いバレエという2つの間のギャップを埋めていく工程は大変でした。そのため、バレエとアニメについて理解している人が最初に介入するという本作品のやり方は、後に作業するアニメーターにとっても作業はしやすかったと思っています。」と、桑原剛さんは語った。

本編カットの実例紹介

ここからは、本編のカットをもとに思い出に残ったシーンや工夫したシーンなどを紹介。

第2話

第2話の、都が惑わすような目線を潤平に送って、潤平がハートを打ち抜かれるシーン。モーションアクターの動きが圧巻で、原画スタッフの絵や背景もハイクオリティのシーンだ。

こちらも同じく2話のシーン。

初期の潤平のシーンで難しかったところが、モーションアクターの井福さんとの実力差だ。井福さんはプロのトップダンサーのため、この段階の素人レベルの潤平の動きで井福さんの踊りをそのまま使うことはできない。それでも、潤平を才能のあるキャラクターに見せるために「何かかっこいいけど、よく見ると素人」という表現をする必要があった。

演出や監督からも、「下手だけど、センスがないようには見せないでほしい」という指示があった。演出とCG、作画監督の方でダンサーの動きを少し下手にしたり、リファレンスの井福さんに少し下手に踊るように指示を出して対応した。

第3話

第3話の流鶯が踊るシーン。

セーラー服を着ている流鶯をかっこよく見せるために、キャラクターを似せることは一度忘れて動きや表現の見せ方に注力した。ここでは、潤平がセーラー服で踊っている流鶯に感動して涙を流している。

このシーンは、第2話の潤平とは違う難しさがあった。流鶯のバレエは正しく美しく、それでいてエモーショナルに仕上げる必要があったからだ。このシーンを作業する前にスタッフを集めて打合せを繰り返し、無事完成させることができた。

第5話

第5話の最終話に並ぶくらいの山場のシーン。

流鶯の衣装のダークナイトのようなかっこよさを、バレエの踊りの正しさに付け足した。「絵コンテの段階からかっこよかったため、かっこよく見せるという1つのモチベーションを持って作業をすすめることができました。」と桑原剛さんは語った。

「第5話のダンスシーンは他の話数の2〜3倍ほどの量だったため、とても長い時間シーンチェックする必要があり大変だった。」と制作陣が口を揃えていた。

第6話

第6話の3人並んで踊るシーン。

3人並んでいて、真ん中で流鶯が踊っている。流鶯に対して、両サイドの2人を下手に見せるためのカットだ。両サイドの2人のプロムナードという動きを激しく上下動させ、足先を甘くし、脚の形を鎌足にするなど、わざと下手に見えるように工夫した。第6話と第7話のスタジオでのレッスンシーンはそういった作業を何度も行なった。

鷲田知子さん曰く、下手に見せ過ぎると違和感が出てリテイクを受けることもあったため、わざとらしくならない程度に下手にするバランスが難しかったとのこと。

第11話

最後は第11話のシーン。

第11話の最後の3カットのうちの2カットは、あえてCGを使わずに実写をそのまま下敷きにしてロトスコープにて制作。ロトスコープとは、モデルの動きをカメラで撮影し、それをトレースしてアニメーションにする手法のことだ。

このシーンでの人の精密さや感情を伝えるために、CGではなくロトスコープを選択。流鶯の創作ダンスの要素もあったため、クラシックバレエにこだわるよりも感情表現を優先したいという意図もあった。

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